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池大雅 陽光の山水:1 /出光美術館

 繁忙期真っ盛りのみなさまには申し訳ないが、新年度が近づく今の時期が、わたしはけっこうすきだ。
 それは、翌年度の各館の展覧会スケジュールが、ぽつぽつ判明していくから。まるで、毎日が合格発表である。
 訪問予定のリストが厚みを増していくたびに、あれとこれを一緒にまわろうかなとか、こいつは前期も後期も通いたいなとか、あの子は出るかなとか、さまざま浮かんできて愉快なものだ。
 ちょうど1年ほど前の時点で、とりわけ楽しみだと思われた展示が4つ。それらは、なぜか年度末に集中していた。

・五島美術館「古伊賀 破格のやきもの」:11月に訪問
・東京ステーションギャラリー「みちのく  いとしいほとけたち」:1月と2月に訪問
・根津美術館「魅惑の朝鮮陶磁」:3月に訪問

 そして、最後の1本が本展・出光美術館の「池大雅  陽光の山水」展である。
 2月の開幕当初に1度め、3月の閉幕間近に2度めの訪問を果たし、図録に掲載された出品作品43件すべてを拝見できた。
 というわけで、ようやくレビューを書く手筈が整った次第。

 江戸の文人画家・池大雅の生誕300年を記念する本展。
 先ほどサラッと出てきた「全43件」という数字は、「生誕300年」を祝する展示としては、意外なほど小さな値ともいえよう。たとえば、2018年の京都国立博物館「池大雅  天衣無縫の旅の画家」の作品リストは162番まである。
 けれども、内容がギュッと詰まった厳選のリストであること、さらに、会場では作品どうしの間隔が充分にとられ、ゆったりして鑑賞しやすくもあったから、物足りなさなどまったくなかった。

 近年開催された大規模な大雅展としては、2018年の京博展に加えて、2021〜22年の名古屋市博物館「大雅と蕪村」展が挙げられる。
 本展の出品リストを京博展、名古屋市博展と照合すると、以下のようになる。

①3展すべてに出品:12件
②本展と京博展に出品:32件
③本展と名古屋市博展に出品:12件
④本展のみに出品:9件
 ※比較対象は大雅の作品のみ
 ※本展の43件のうち2件は中国絵画

 あるひとりの画家の全貌を回顧的に取り上げようとするとき、どうしても必要な作品というのは、相当数出てくる。大雅ほどのビッグネームとなれば、代表作・基準作の多くが文化財指定を受けている。
 ①はそのようなもので、2件が国宝、5件が重要文化財の指定品。②には、さらに3件の重文指定品が含まれる。なお、本展に出ていない大雅の指定品は国宝1件、重文5件のみとなっている。
 むろん、指定の如何ですべてが決まるわけではないが、本展は全43件と少数である反面で、国宝2件・重文8件を含んだ、オーソドックスで高密度な展示内容だったとはいえよう。
 そしてまた、そういった作品の顔ぶれだけで、展示の特徴が定まるわけでもない。
 本展の真価は、名品がたくさん観られる点もさることながら、その構成のきれいさにこそあるのではと思われた。(つづく

ふきのとう、みっけ(青梅にて)



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