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近江商人の発祥地・五個荘の町並み 秋の近江路を往く:5

承前

繖山の裾を東の方へ行くと、五箇荘という村がある。近江商人発祥の地で、どっしりとした邸が並び、素通りしただけでも、恵まれた町であることがわかる

「石の寺」 『かくれ里』より

 白洲正子さんがこのように書いている、五個荘の町並み。
 平日だったこともあるが、町内を歩きまわっているあいだ、ほとんど人に会わなかった。狙わずとも、人っ子ひとり写っていない写真が撮れたのだった。

町内を水路がめぐっている。左側は作家・外村繁の生家で、記念館になっている
古いたてものには、丸ポストが映える
この道をまっすぐ進むと……
この十字路に。正面の立派な蔵屋敷は非公開。
さらに進むと
こうなる。右の長屋門はお寺の山門で、もとは大和郡山藩の金堂陣屋の門だった。五個荘金堂地区は、奈良の飛び地だったのだ
観光色は薄め。きれいに使いながら見せてくれている感じ。近江商人の誇りがなせるわざか
右側は町内で最も大きな寺院・弘誓寺の境内
弘誓寺本堂。真宗らしい巨大木造建築。宝暦5年(1755)築、重文
本堂を右手に、石橋の上から撮影。鯉が泳いでいた。映画やドラマのロケでよく使われる界隈


 旧中山道。金堂地区と駅のあいだを横切る

 五個荘金堂地区は、東海道新幹線の車窓から遠望することができる。
 もちろん、細かくは見えないものの、「近江商人のまち・五個荘」などと書かれた大きな看板は、ばっちり認識できる。
 この看板が目に入ると「もう繖山(きぬがさやま)のあたりか」「次は安土城の看板だな」「そろそろ準備しておこう」といったことを、通り過ぎる一瞬のうちに思い浮かべるのが常であった。
 このとき同時に浮かんでくるのが、繖山やその周辺にある観音正寺、桑実寺、石馬寺での美しい思い出。いずれも、白洲さんの随筆に登場する古刹だ。
 これに、五個荘の町並みの記憶が新たに加わる。
 次に上洛するとき、新幹線の席は、かならず進行方向右・窓際にしよう。
 楽しみがひとつ、増えた。

 ——秋の近江路をめぐる日帰り旅は、これにて完結。
 時間が許せば、近江鉄道で2駅先の豊郷まで行き、ヴォーリズ設計の豊郷小学校を観ていきたかったけれど……五個荘をじっくりまわった結果、1時間に1本の電車を逃してしまい、間に合わなかった(そもそも、山で遭難しなければよかった)。
 でも、きょうのところは満足。
 近江には、すばらしい場所が、まわりきれないほどたくさんある。またいつか、来ればいいさ。

夕焼け小焼けの繖山(きぬがさやま)。右方向が五個荘金堂地区



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