見出し画像

『茶味』奥田正造|鎌倉書房

絶版と復刊をくり返してきた名著なので、もし本書とご縁があるのであれば、鎌倉書房から出された昔のものが無駄がなく、たしかである。

『南坊録』の滅後が奥田正造によって編まれた一冊で、近代化によって日本人が何を失ったのかがよくわかる。一般的には茶の心を養うために書かれたとされているものの、私には躾、つまりは修身に映る。要は明治維新以降、日本人は自身を削いできたのだ。

何を云っているかわからぬ方は、とりあえず己の身体感覚を文字通り身と体に分けられては如何であろうか。身体構造に束縛されぬほうが、身である。つまりは非物質的なもので、茶道のような伝統文化はこの身を整えるべく編みだされた先人の知性、悟りへの道なのであろう。

いずれにせよ、奥田正造自身が『茶味』に凡て書いたと云い切っただけの迫力が未だ色褪せない。

私が預かっている『茶味』は或る古書店でことし五百円でもとめたのだが、まえの持ち主が元旦所感として一九五一年と五二年に歌を認めている。私も二〇二四年から傍らに続けて認めていく予定である。

次世代に渡るのは二十二世紀だろうか。

閑話休題。例えば「七、所作と言葉」では「茶杓の如き軽きものを動かしては、荘重の心を忘れない様に扱ふ」とあり、

「小は大に、大は小に」

なる戒めが紹介されている。

ここから先は

230字

わたしの本棚

¥500 / 月

私が棚に並べるのは、古風な日本人からたまたま譲りうけた古書ばかりで、元の持ち主が亡くなった方も少なくない。要は私の本棚で一時期お預かりして…

この記事が参加している募集

推薦図書

わたしの本棚

いつも心温まるサポートをまことにありがとうございます。 頂戴しましたサポートは、農福連携ならびに読書文化の普及に使わせていただいています。