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たまにはパリの話でも

私はパリにいた、確かにいた。
約20年ほど前になる。

住んでいるところはフランスで、大体はパリにいたが、実は年の3分の1はスイスのジュネーブにいて、フランス人のようなスイス人のような生活を送っていた。

今週はオペラ座でバレエ鑑賞をしたら、来週はレマン湖辺りのデザインの先生のお宅にいたり。
ニースの蒼い海岸の夕陽をながめては、ホテルに付帯したキッチンで、現地で採れた野菜や魚を使って夕食を作るというような、その土地、その土地の楽しみ方で、変化に富んだ毎日を送っていた。

おまけに、イタリアにふらりと歌の勉強に通っていたので、たまにイタリア人になり、ベルギーやドイツ、イギリス、オランダ、ノルウェー。。
ほぼ2年間は、ヨーロッパ中を旅して歩いた。
(主にダンナさんの仕事と趣味に付き合った)

楽しく、美味しく、愉快で、でも日本より遥かに生活は不便で、便利とは到底言えない感じだったが、見る物、聴くもの全てが若い私には面白く、日本ではあまり体験しないような、そんな不便な暮らしもまた新鮮で、とても刺激的な日々だった。

パリの街を歩くだけで、何だか心はいつもうきうきと足取りも軽かった。街全体が文化財のような感じだったし、芸術が大好きな私にとっては、またとない感性を磨く機会となった。

点在する美術館、オペラハウス、建物、著名なカフェ、マルシェ、レストラン。
子犬を連れて歩くマダム、お昼ご飯のサンドウィシュを食べながら、人馴れた雀と会話するムシュ。ショコラトリーのショコラを嬉しそうに見つめる子供たち。土地の風を身体で感じられたのは、とてもステキだった。

あれから帰国し、忙しい日々を送っていたら、かれこれ20年も経った。

パリの街は当時より随分治安は悪くなり、アパルトマンの値段もかなり上がってしまった様子。
きっと、今住もうと思ったら、相当の覚悟がいるに違いないと思うと、あの時のタイミングで行けて本当にラッキーだったと思う。

パリにも、行くつもりはまるでなかった。
パリに行く予定はなかった。
自分の意思とはウラハラに、突如ご褒美のごとくやってきた幸運。

毎日を丁寧に、楽しく。
自分に優しく(笑)、そして人にも優しく。
当たり前のことを、あたりまえに。

ご褒美はいつやってくるか?
自分には全く分からないもの(笑)




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