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光と闇を抱きしめて

澄みわたる空気と空高くに広がる雲のアートが
美しい季節。ひさしぶりに翼のはえたクジラに乗り、
島を飛びたった。

旅の主な目的は
次男の結婚式に参列するため。

去年の同じ頃に開催予定する予定だったが、
昨今のご時世で1年延期し、式の前日に、飲食店時短要請や酒類販売禁止が
解除されるという
ミラクルなギフトにも恵まれ、
さわやかな秋晴れの日に万事を期しての開催となった。

式1ヶ月程まえに、お嫁さんから
両家代表の挨拶をしてほしいというメッセージが届いた。

2人とも、“シングルマザー家庭”に育ち
お嫁さんのお母さんかわたしのどちらかが、挨拶をすることなる。

人前で話すことを生業としていたこともあることを理由に
必然的にわたしがうけおうことになった。

彼らへの寿きと、
祝福してくれている方々への感謝の言の葉を綴るために

彼が産まれた頃の、近いようで遠い過去に
想いを馳せる。

2人が生まれたのは(彼らは同級生。13年間の長い付き合いを経てこの日を迎えた)
神戸にゆかりがある人々には忘れ得難い、1995年、阪神淡路大震災が起きた年。
6000人もの尊き命が虹の橋を渡った、約2ヶ月後に彼は私のもとに生まれてきてくれた。

一方でお嫁さんはこの日の9日前に降誕。
小さな命を授かって間もなく、今だかつて体験したことのない災害に見舞われ、
あたりまえの生活があたりまえでなくなった困難な状況のなか、
全身全霊の
愛を注いで育ててくれたご両親やご家族に感謝の気持ちが溢れる。

彼女の笑顔はほんとうに美しい。
息子嫁というひいき目なしでみても、
外の世界から帰った時に、
家の玄関をあけてすぐにあの笑顔が出迎えてくれたなら、
頭のなかの霧を
“一旦横に置いておくか”と
やすらぎのひとときに
身を任せて、流れにゆだねることができるだろう。

笑顔がもたらす効果は、周りの人にも笑顔を伝染し、脳からオキシトシンを分泌させ
お互いの免疫力をあげ、心身ともに豊かになり、幸福度が増すという
研究結果もあるそうだ。
まさに“笑う門には福来たる”である。
奥さん(こどもができたらお母さん)の笑顔が家族円満の秘訣。

次男は子育て中の
わたしとは正反対のお嫁さんをもらったのだ。

眩いほどの光をあびせられた時、
陰の存在はいっそうに際立つものなのか。

2年ぶりの帰省。
体調もおもわしくなかったせいか、
数日しかともに過ごしていない母親との関わりで
傷ついた内側のこども心が騒ぎはじめる。

結婚式の当日の朝、次男がむかえにきてくれた
車のなかで、感情を抑えることができず、
母親と口論となった。
こんな晴れの日なのに、律せなかった自分を悔やんだ。

ひとりめの子育ては
小さな頃に満たされなかった愛を、
目の前にいる長男に全身全霊注いでいたかったのだろう。

生まれてすぐに入院したり、アレルギーがあったり、
体が弱かった長男。
わたしが必要以上に手をかけたかったから、
弱くなったのかもしれない、
はじめての子育てで、心身がいっぱいいっぱいだったわたしは
夫にも、母親にも頼ることができなかった。

自分の存在を否定している為に、
食べさせてもらっている感がずっと拭えず、
せめてもと、体を求められたなら、
応えることしかできず、

性的な欲求を拒むことができなかった。
避妊してほしいことも伝えられなかった。

次男がこの世に生を受けたことがわかった
たった数ヶ月前、

人生で1度目の堕胎を体験した。
堕胎することを選んだのはわたし自身だ。
ひとり目の堕胎の体験に意味を見出せずに
自分を責め続けた
次男の妊娠期。

そして、あの寒い冬の朝、大型テレビも
冷蔵庫も吹っ飛び、

妊娠9ヶ月のお腹にいる次男と
長男を抱き抱えて、
洋服ダンスの下敷きになった。

タンスの前に置いてあったおもちゃ箱が
わたしたち3人の命を繋いでくれた。

当時、住んでいた古いマンションは倒壊の恐れがあるからと
赤い紙をはられ、

出産予定だった産院も倒壊した。

その後は
臨月までの妊娠後期を姉宅で仮住まいさせてもらい

凍てつく氷が溶けはじめ、土の中から新しい命が芽吹きだした
春分の翌日、早朝に彼は
この世に生を受けた。

命への葛藤を胸に抱き、
震災以降、縺れた糸がさらに頑なとなった
パートナーとの関係性を解くすべも
わからずまま、
産後うつのような状態でなんとか毎日を過ごす。

よく眠り、よく笑い、
泣きはじめると、何をしても泣きやまない。
けれどひとしきり泣いたら、
優しい寝息をたてていつのまにか眠っている。
頬をつたう涙の跡がいとおしい。
笑顔や寝顔をただ眺めいるだけで、

緊張することが癖になっている
わたしの体と心を緩めてくれる。

小さな命が
放つ光の存在が

わたしの生を繋ぎとめてくれていた。

その後も内側の戦いは
あいも変わらずで、
ただ、生きているだけの存在を許せないわたしがいた。

体の尊厳を開けわたし続け、
何度も堕胎を繰り返した。


深い闇をさまよい、
こどもたちが放つ光の灯火を頼りに、

自己をとりもどす旅がはじまり、長い旅の途中、
今、わたしはここにたっている。

次男が小学校に入学前に
離婚をしてからは、
仕事をしてお金を稼ぐことで、
自己価値を見出そうとしていた。

こどものことを最優先とし
いつも笑顔を絶やさず、こどもに寄り添う
優しい母親ではなかった。

寂しい想いをたくさん、させてしまった。

参列席のほとんどを
埋め尽くした、26歳〜28歳の若者たちは
幼い頃から今日まで、共に笑い、時には言い争い、
励ましあってくれたであろう友人たち。

親が留守がちな我が家を溜まり場としていた
長男の仲間たち。

わたしの姉妹や弟、
唯一のママ友家族が
彼らの心の拠り所となった。

産まれながらに
受けとる器を兼ね備えた
彼だからこそ、
人生の土台となる家族を創ることを決意できたのだろう。 

美しく着飾り、歓びに満ち溢れた笑顔で
祝福の席に参列してくれた、懐かしい顔ぶれに
感謝の気持ちが溢れ涙する。

彼らを犠牲にしながら、
土台の基盤である、
自己への信頼を取り戻すことに
費やした時間がわたしの子育て期だった。

長い旅を経て
わたしはようやく、自己存在を認めることができはじめている。

こどもたちの犠牲と彼らを愛してくれた人々のおかげで
いまのわたしは存在する。

真新しい
ガラス張りのオーシャンビューのチャペルから
降り注ぐ、柔な光に包まれ、
人生で特別に輝く佳き日。

愛くるしい笑顔と内面の美しさまでもが際立つ美しい花嫁。
エスコートしている息子と肩を並べた姿は、親バカといわれても、
ここに書き記しておきたいほどに
晴々しく美しい新郎新婦だった。



イベント開催します!

“性”をまんなかにして対話しよう

11月22日(月) 20:00〜22:00
開催場所 オンラインzoom
参加費用  500円+ドネーション 
参加人数 8名(内2名主宰者)
このイベントはオープンダイアローグ形式で行います。オープンダイアローグとはフィンランド発、精神科などでいま注目されている手法です。参加者全員が平等な立場で、ひとつのテーマに沿いただ、湧きあがるままに対話します。それぞれの個性を尊重するために、何も湧きあがらずに沈黙になることもあります。同じ人が何度も話すこともすべて、流れにまかせます。どのような性別、年代の方も参加いただけます。

“性”とは誰にとっても普遍的であり、それぞれの体験こそが真実であるからこそ、対話のテーマとすることで、命に衝動を与えます。性がもたらす、光も闇も抱きしめて、自らの命を全うしましょう。

お申し込みはイベントページの参加ボタンを押していただき、主催者まで個人メッセージしてください。ボタンを押すことに躊躇がある方も個人メッセージでおしらせください。お支払い方法、当日のzoom参加URLをお知らせします。 

イベントページ

https://fb.me/e/SY9lLbEw

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