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【教える技術】#06 記憶するには精緻化、体制化、二重符号化

火曜日は「教えること/学ぶこと」のトピックで書いています。早稲田大学エクステンションセンター中野校での「教える技術」講座に並行してその内容を連載しています。定期購読者が増えるたびに、感謝を込めてその日の記事を全文公開にしています。

前回から、認知技能の教え方に入りました。認知技能はコトバやイメージを道具として使って、知識を整理して覚えたり、新しいアイデアを出したり、問題を発見したり、解決したりすることです。認知技能の範囲は広く、小学校から大人になり、死ぬ直前まで、私たちは認知技能を鍛え、使い続けることになります。

認知技能の基礎になるのは言語情報を使うことです。私たちは小さいときから使える語彙を増やし、文法を獲得することによって、文章から意味を読み取ったり、会話ができるようになります。またその言語を内言化することによって、ひとりで考えることができるようになります。語彙を増やすことで、思考力を柔軟にしていくことができます。

言語情報を教えるには3つのコツがあります。それが、上に挙げた、精緻化(せいちか)、体制化、二重符号化です。

私たちの記憶は辞書のように五十音順に並んではいません。そうではなく単語と単語、概念と概念がネットワーク構造を作っています。1つの単語や概念にはそれに関係の深い単語や情報が紐づいています。ですので、1つの話をしていると、それに関連した話が思い出されて、次々と脱線していくのです。

これを逆手に取れば、何か1つの概念を覚えたいときは、それに関連したものをたくさん覚えればいいということになります。反対の概念、似た概念、上位概念、下位概念、具体例、ケースなどを考えることです。それらは全て覚えることはできなくても、記憶に何らかの手がかりを残します。したがってど忘れしたときにも時間をかければ思い出すことができます。

体制化は、単語を分類し、整理することです。分類してカテゴリーに分けることと、上位・下位のツリー構造にまとめることが中心です。こうすることで、抽象度の高い概念なのか、低い概念なのかを意識することができます。その結果として、記憶の中にある内容を整理することができます。

二重符号化とは、目に入ってくる視覚的情報と耳に入ってくる聴覚的情報のことです。この2種類の情報は脳の中で統合されますので、両方の情報を同時に処理することによって、記憶に強く残ります。たとえば英単語を覚えるときにスペルを目で見ながら、声に出して発音してみると、ただ目で見て覚えるよりも記憶に残ります。

言語情報を学ぶことは思考の基礎となります。そのときに、ただ丸暗記をするのではなく、上のような方法を応用しながら勉強していくと、効率よく、しかも強固な記憶のネットワークができます。

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