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発信を仕組み化すると個人とチームがどんどん強くなっていくかも、という挑戦【INSP.02】

最近は曖昧さのある中間色がスキな小池です。さて、newh inspirationの第2回はNEWhのビジネスデザインチームではじめている「Business Design Magazine(以下、BDMag)」という発信活動を通じて僕が感じていることを書いていきます。といっても、はじめてから1ヶ月程度なので所感レベル、もしくは所信表明に近い内容になるかもしれません。ただ、組織・プロジェクトチームのリーダーをしているが、利益創出のための業務が優先となりなかなかナレッジが蓄積していかない、組織やチームが成長している実感がなくなんとなく停滞感がある、みたいな課題がある方にはヒントになると思います。「まだ、はやくない?」という声がどこかから聞こえてきそうですが、はじめていきましょう。

立ち上げ1ヶ月で1万PV超え

まず、9月末のリリースから1ヶ月が経過した現在の状況を共有します。当初BDMagはバリューデザイン・シンタックス(以下VDS、NEWh独自のフレームワーク)のケーススタディを中心に投稿しようと考えていました(経緯など後述)。現在は、それだけではなく様々なバリエーションの記事が投稿されています。投稿数も目標である週1回程度(月間3〜4記事)を大きく超えて9記事(300%達成)となっています。BDMagの全体PVも、な、なんと1万PVを超えています。さらに、合計で175いいねされていたり、いろいろなマガジンに加えてもらったり反響がすごくうれしいです。ありがとうございます!!

2023年10月30日現在のBDMagにはさまざまな記事が投稿されている

投稿数
 9記事(目標3〜4記事、目標比300%)※1

バリエーション
 ‐VDSケーススタディ( 4記事、59いいね)
 ‐新事業開発のメソッド(1記事、42いいね)
 ‐新事業開発とAI(1記事、41いいね)
 ‐未来をつくる会社のビジョン(2記事、23いいね)
 ‐newh inspiration(1記事、10いいね)※1
※1:本記事をカウントすると投稿数:10記事、new inspiration:2記事

noteダッシュボードより集計

なんとなく、ではうまくいかない

では、ここからリリースまでの過程を振り返ります。BDMagの原点はチーム内の共有活動です。毎週、ビジネスデザイナーが持ち回りでVDSによって世の中の事業・サービスを分析・共有していました。狙いは3点。1.チームのビジネスを見る視点を強化すること、2.事業構想を言語化するスキルを向上させること、3.VDSそのものの改善点を考えていくことです。ただ、やはり狙い通りにはいきません。クライアント業務が優先となり共有会がスキップされたり、分析の品質があまり高くなかったり、適切なフィードバックが得られなかったり、ただやっているという状態が続いていました。一言で表現すると本気度が足りない。もちろん、デザイナーもなんとかしたいという気持ちはあるけど、それぞれ仕事が忙しいし、優先順位が上げられずになんとなくやっている。利益に直結しない活動としてはよくあるパターンに陥っていました。まあ、僕も含めてみんなそんなに強くないということです。

どうしても利益/顧客が優先されてしまう

そんなつれづれなる日々、あるデザイナーから「VDSのケーススタディを外部に向けて発信してみませんか?」という提案がありました。負のスパイラル状態を脱するため、であるかは確認していないですが、おそらく感じるものがあったのだと思います。というわけで、BDMagの検討がスタートし、なんとかリリースまで辿り着きました。その後の結果は上記の通りです。

発信の仕組み化で個人とチームは強くなる

ここからはBDMagが現状うまくいっている要因について、設計・実行・戦略の3フェーズにおけるポイントを考えていきます。それにより収益に直結しない活動を軌道に乗せるための再現性があるノウハウに昇華していきたいと思います。

1.設計フェーズ:最低限のルールが可能性を無限に
2.実行フェーズ:気軽にやると本気になる
3.戦略フェーズ:後付けだからちょうどいい

1.設計のポイント:最低限のルールが可能性を無限に

まず、設計フェーズのポイントを考えていきましょう。BDMagのリリースまでにチームでやったことはこんな感じです。

・まずは、外部に発信する前提で各自VDSと記事を書いてみる
→オモシロイと思ってもらえる記事が書けるか?(提供価値と実現性)

・その結果、喧々諤々、あーだこーだのまとまりのない議論をする
→各自が思いつくことを発散させる。論点の洗い出し(問題の定義)

・最後に、発信目的と想定読者テンプレート化と自由度を決める。
→ある程度の枠組みを決め気軽に取り組めるようにする(目的手段の定義)

小池のメモリーからの引用

最も意見が分かれたのは、最後のテンプレート化と自由度の設定です。タイトルのルール、文章の構成、ピックアップする企業・サービス、チーム校正の有無、、、などなど。きちんとルールをつくった上で進める派、ルールはやりながら考えていけばいい派の議論です。ただ、この議論はほとんど意味がない。ルール派でもパーフェクト・ルールなどありえないですし、やりながら派でもゼロ・ルールはないはずです。つまり、レベル=程度の差の議論になります。どのさじ加減がよいのかなど、やってみなければわからないはず。そのため僕らはルールの結論を先送りして最低限で進めることにしました。リアル・オプションな考え方です。ちなみに、こういった「ほとんど意味のない」議論はさまざまなプロジェクトで行われていると思います。そういった場合は、結論を先送りしてとにかく進めることを強くおすすめします。

最低限のルールとして決めたことは、大目的・目的(外・内)・想定読者・内容更新頻度です。この中で更新頻度をKPIとして設定しました。振り返ってみるとかなりゆるくて「方向性だけは間違わないようにね」レベルの設定です。

★大目的:
コンテンツの発信頻度を向上することで、NEWhのブランディング(仕事を頼みたい/働きたい)につなげる

目的:
外/
NEWhの独自フレームワークであるVDSの認知向上
内/VDSで世の中のビジネスの分析をすることでナレッジを蓄積する

想定読者:
新事業担当者(もしくはリーダー)、およびビジネスデザイナー

内容:
VDSケーススタディほか、各自が記事で発信したいこと

更新頻度=KPI:
全体で週1回は必ず更新する。個人としては3週間に1回更新する

★=特に効果的だったルール

小池のメモリーからの引用2

今ではこの「ゆるさ」が設計のポイントであったと考えています。きっちりとルールを決めていたら、BDMag=VDSケーススタディとなり現在のようにバリエーションが拡がることはなかったと思います。デザイナーが大目的とKPIに向き合った結果、新事業開発メソッド・新事業とAI・未来をつくる会社のビジョン・new inspirationといった新しいシリーズ=可能性がつくられました(バリエーションが拡がったことによるメリットは、次フェーズで詳述します)。「ルールが何もない」ではなく「方向性だけは間違わないようにね」と大目的とKPIが明確に設定されていたのが可能性を拡げる意味でも効果的でした。なぜならデザイナーとは、適切な枠組みがあると探究心が刺激されて、よいパフォーマンスを発揮するからです。みなさんもチームメンバーの特性を考えて、最低限ルール=枠組みを考えてみるといいと思います。


2.実行のポイント:気軽にやると本気になる

次に実行のポイントです。BDMagは継続を前提とした活動なので、デザイナーが気軽に書ける・続けられることが大切です。一方、NEWhのブランディングも目的としているため品質=デザイナーの本気度も大切。この矛盾する気軽と本気を両立させる仕組みをつくることが重要になります。

気軽のデザインと本気のデザイン/赤が意識的に変えたポイント

まず、本気のデザインです(画像の右側のフレーム)。僕らにはチーム内の共有活動で「なんとなく」になってしまった苦い経験があります。けれど、これは結構シンプルです。デザイナーは対外的に発信するだけで本気になるだろうと考えていたし、実際にその通りになりました。発信してみるといいね・PVなど、一定量のリアクションがあり本気度はさらに高まっていきます。また、積極的に仕掛けていったのはチーム内で閉じていた活動を全社に共有することです。身近な同僚からのリアクションでリアリティが一気に高まっていきました。これも効果あり。本気度を高め、活動を継続していくためには、リアクションの量とリアリティがすごく大切みたいです。

次に、気軽のデザインです。本気のデザインを含めても、この仕組みで最も大切な要素は「書きたいことを簡単に決めてとにかく書きはじめる」であると考えています。書きはじめれば、いろいろ考えるし本気になるだろう、ということです。最もシンプルな方法は、テーマの自由度をなくし「VDSケーススタディだけ書き続ける」です。ただ、それではモチベーションが高まらないのは前の社内活動で経験しています。一方「自由に何でも書いていいよ」ではなかなか書くことが決められない。そのため、VDSケーススタディ以外にもシリーズをつくり、そのタイミングで書きたいことを選択して簡単に決められるようにしてみました。この効果ははじめたばかりなので実感はありませんが、これからをお楽しみに。ちなみに、仕組みやシステムを考えるときに、どの要素が最もレバレッジが高いのかを見極めるのがめちゃめちゃ大切なので常に意識しているとよいと思います。


3.戦略のポイント:後付けだからちょうどいい

最後に戦略のポイントです。記事を書きながら、思いのままにバリエーションをつくりながら、僕は思いました。これだとどんどんテーマが分散化してしまい長期的には記事以外には何も蓄積されないのではないか。シリーズの目的を明確にすることで、個人にとってはより気軽な選択肢と探究のネタ元となり、会社にとっては、知の深化と探索ができる両利きの仕組みにできるのではないかと。これは、、、というわけで、戦略を後付けで考えてみました。1ヶ月やってみたからこそ、ちょうどいいルール=戦略の決め方がわかってきたということ。つまり、後付けだからこそ、ちょうどいいさじ加減の戦略が描けるということです。

戦略のデザイン/3つの価値を意識して設計

僕は『良い戦略 悪い戦略』に書かれている”狙いを定めて、一貫性のある構造を組織し、既にある強みを活かすだけでなく、新たな強みを生み出すもの”という戦略の定義がスキです。よりシンプルにいうと、一貫性のある狙いと仕組みによって、強みを活かし活動することで、現在の提供価値と新たな強みを生み出すということ。戦略は、現在の価値だけではなく新たな強みを生み出す仕組みであるという点がしっくりきています。

では、その定義に触発されながらBDMagに適用すると、デザイナーという強みを活かし活動することが、NEWhのブランディングと新たな強みの源泉となる知の探索と深化につながる仕組みとなること、そして、そのテーマを明確にすることです。当然、それは読者にとってもおもしろい・役に立つテーマでなければなりません。ちょっと概念が長くなりましたが、BDMagでは以下のように言語化してみました。

BDMag全体
TA:新事業担当者(もしくはリーダー)、およびビジネスデザイナー
ST:コンテンツの発信頻度を向上することで、NEWh(BD)のブランディング(仕事を頼みたい/働きたい)につなげる。
TM:上質感、品質が高い、軽やか、身近な存在、スタンダード、原型

・VDSケーススタディ
外:NEWhの独自フレームワークであるVDSの認知向上
内:VDSで世の中のビジネスの分析をすることでナレッジを蓄積する

・新事業開発メソッド 
外:NEWhメソッドを共有し、新事業担当者、外部BDに魅力を感じてもらう/自分でやってみたいと思う
内:メソッドを改めて言語化して新しい「視点」を獲得する。

・新事業とAI 
外:新しいやり方、取り組みを常に考えている会社のイメージ醸成
内:新しいメソッドの開発、チャレンジ、ヒント

・未来をつくる会社のビジョン
外:未来、社会を考えていく会社というイメージ醸成/Tech、DX、SXなど
内:単一テーマ(=ビジョン)の蓄積とザクッとした業界研究で知識を獲得する

・new inspiration
スキなテーマを書いていく。気づき、ブックレビューなど何でもOK

大切にしたのは、シリーズごとに対外的・内部的な目的を設定するでことです。短期的・長期的と読み替えてもいいもしれません。そして、その総体が会社の上位目的を達成する戦略となっています。また、忘れてはならないのは、この戦略は完全に後付けです。大目的である「コンテンツの発信頻度を向上することで、NEWhのブランディング(仕事を頼みたい/働きたい)につなげる」に対して、デザイナーが書きたいことを拡げていったバリエーションに対して「意味」をつけることで、会社・デザイナー・読者の3方の価値を成立させるちょうどいい戦略がつくれたということになります。はじめからこのさじ加減を設計することは不可能です。やってみることの重要性をここでも身に沁みて感じます。


終わりに

かなり長文になってしまいました。つらつらと我々がやってきたことを書いてみましたが、みなさんの活動のヒントにはなったでしょうか?
僕は記事をまとめながら、この戦略・仕組みでBDMagを継続していければ、知の深化と探索が両立でき、会社も個人もどんどん強くなっていきそうだなーって可能性を感じています。さて、どうなるか。結果はいつでるのやら。

この1ヶ月の活動を経て、発信する・書くということの可能性と、とりあえずやってみることの大切さを再認識しました。やってみることで本気になり、本気でやることで反響と発見があり、更にやってみたいことが増えていく。NEWhのBDMagは大切な第一歩である「本気でやってみる」はうまく踏み出せました。ここからは継続あるのみです。デザイナーとしての探究心とみなさんのリアクション、そして適切な仕組み/戦略があれば、この挑戦は続けられると思っています。あと、BDチームのみんな。チームのパワーってやっぱりすごいね。これからもがんばっていきましょう。

あらためて、BDMagを読んでくれている方、読んでないかもしれないけれどリアクションされている方、いろいろとありがとうございます。これからもよろしくお願いします。

最後に、強引に新事業開発の学びにつなげるならば、机上で白か黒なんて延々と議論はせずに中間色のままいる勇気を持ってまずはやってみましょう、ということですかね。では、また。

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