見出し画像

DX時代の新事業を発想するための4つの方向性と21のデジタル視点

「新事業開発メソッド06」は、DX時代に新事業を発想するための4つの方向性と21のデジタル視点として、NEWh独自のフレームワークである「デジタル・トランスフォーメーション・レンズ(以下、DXレンズ)」を紹介します。

DXレンズとは

DXレンズ

DXレンズは、世の中にあって「デジタル」をうまく活用している事業/サービスから抽象的な視点を抽出・収集した視点=レンズ集です。
例えば、スマートフォンを抽象化してみると「無価値を価値化する」という視点が抽出できます。スマートフォンは電車の中で何もできなかった時間をエンターテイメントやコミュニケーションなどを楽しめるように変えているからです。では、Airbnbはどうでしょうか? Airbnbは空室を「ネットワーク化」し「可視化する」ことで「無価値を価値」に変えています。いろいろなデジタル視点を抽出できますね。

このようにデジタルを活用したサービスに共通している特長や強みを視点集にして、誰でも使えるようにしたのがDXレンズです。この4つの方向性と21のデジタル視点を活用することで、テクノロジーの知識があまりない方も、デジタルをうまく活用したアイデアが発想できるようになります。NEWhのプロジェクトでは、新事業の初期段階におけるアイデア発想の際によく活用しています。

新事業のアイデア発想とDXレンズ

では簡単に、どのようにアイデアを発想していくのかを紹介していきます。顧客の課題・ニーズから発想していく方法は非常に一般的なので、この記事では紹介しません。ここでは市場や競合からアイデアを考える2つの方程式について紹介していきます。シンプルな方程式で考えることで、初期段階のラフな事業/サービスアイデアが創出しやすくなるのでオススメです。また、顧客から考えるよりも産業/市場レイヤーから考えていくのでインパクトのある新事業につながっていく可能性がある考え方になります。では、まず方程式の1つめです。

方程式1:提供価値を圧倒的に強化する

方程式1:提供価値の強化

1つめは、提供価値を圧倒的に強化していく方程式です。新事業を考えている市場でターゲットから受容されている価値を、デジタルの手段によって「圧倒的に」強化する方法を考えます。つまり、すでに提供価値は検証されているので、それを圧倒的に強化することで競争優位性のある新事業をつくるという考え方です。特にデジタル化が遅れている市場においては有効な方程式です。

例えば、タイムズのカーシェアである「Times CAR」は(所有しなくても車で移動できる)というレンタカーの提供価値を(スマートロック技術などにより即時化すること)により(店舗に行かずに近所で借りられる)ことで圧倒的に強化しています。圧倒的に強化したことにより、旅行などのハレの日需要から、日常的な移動手段としての価値を拡げることに成功しています。このように、既存の価値を圧倒的に強化することで、新たな市場の創出につながることはよくあります。

また、既存企業の提供レベルが低い未充足な価値を圧倒的に強化することも戦略のひとつです。例えば「NewsPicks」は大手経済新聞が満たしきれていない(ニュースに対するプロの解釈)を(専門家/Pickerをネットワーク化すること)により(様々な専門家の意見を価値)にすることで圧倒的に強化し、デジタルサービスでは非常に困難なコンテンツの有料化を実現しています。

方程式2:競争優位と利用ハードルを圧倒的に削除する

方程式2:競争優位とハードルの削除

2つめは、競争優位と利用ハードルを圧倒的に削除していく方程式です。新事業を考えている市場における競争優位性、利用におけるハードルを徹底的に排除していく方法を考えます。特に、リーディングカンパニーの競争優位性を破壊するができれば、産業構造が大きく変わるきっかけをつくれる、インパクトの大きい新事業につながりやすくなります。

例えば、Airbnbは(ホテルが保有する建物という競争優位性)を(空き部屋をネットワーク化すること)により(一般の人々が利用可能にする)ことで圧倒的に削除しています。Uberとタクシー業界の関係性もほぼ同様ですが、Uberはタクシー業界の利用ハードルも同時に解決しています。例えば、行き先を告げる(外国では非常にハードルが高い)ことや、料金に対する不安などを提供するUXにおいて圧倒的に削除しています。

方程式を解く、つまりアイデア発想をしていく際には、DXレンズをヒントにしながら(デジタルな手段)(具体的な解決方法)を考えていきます。例えば、「即時化する」「非物質化する」などのレンズをヒントに、(所有しなくても車で移動できる)というレンタカーの提供価値を圧倒的に強化する具体的な解決方法を考えていくとTimes CARのようなサービスが発想できるようになります。UBERであれば「シェアリングする」「無価値を価値化する」「リアル情報のデータ化」が発想の起点となって考えられるでしょう。DXレンズはあえて抽象的に言語化しており1種類のレンズでも様々な解釈が成立するようにしているため、どんどん自由に発想を拡げてみてください。

4つの方向性と21のデジタルレンズ

DXレンズは4つの大きな方向性(サービス化、ソーシャル化、オープン化、スマート化)と21のデジタルレンズで構成されています。ここからは、それぞれの説明を書いていきますので、ぜひ参考にしながらDXレンズを活用してみてください。

再掲/DXレンズ

4つの方向性

まず、デジタルを活用したサービスの特長は大きく4つの方向性に分けられます。もちろん、サービスの特長は1つの方向性とは限りません。多く場合は複合的に備えていることが多いです。

・サービス化(非物質化)
サービス化とは、従来の製品中心のビジネスモデルから、顧客に対して継続的な価値を提供するサービス中心のモデルへの転換のことです。これにより、一回限りの取引ではなく、長期的な顧客関係と収益の流れを生み出します。例えば、ソフトウェア(モノ)を売る代わりに、サブスクリプションベースでアクセスを提供するなどです。サービス化は、顧客のニーズに応じて柔軟に対応し、継続的な顧客サポートやアップデートを通じて価値を提供することを可能にします。

・ソーシャル化(ネットワーク化)
ソーシャル化とは、つながりをつくることで、ユーザーエンゲージメントを高め、コミュニティを形成し、ユーザー間の対話や協力を通じて価値を創出します。サービスにソーシャルメディアの原理やプラットフォームを組み込むことにより、ユーザーのつながり、参加、協力を促進されます。

・オープン化(API化する)
オープン化とは、サービスの柔軟性と拡張性を高めるための重要な概念です。API(アプリケーションプログラミングインターフェース)を公開することによって、外部のサービスやアプリケーションと接続を可能にし、サービスの機能を拡大します。また、オープンAPIを通じて、開発者は既存のデジタルサービスを再利用し、新たな価値を創造することができます。

・スマート化(認知化する)
スマート化とは、人工知能(AI)や機械学習などの技術を用いて、サービスをより知的で自己学習能力を持たせることを指します。認知化はこのプロセスの核であり、サービスがユーザーの行動を認識し、理解することで、よりパーソナライズされた体験を提供します。これにより、デジタルサービスはユーザーのニーズを予測し、リアルタイムで適切な情報、サービス、サポートを提供するなど、従来は実現できなかったサービス、機能を実現できるようになります。

21のデジタルレンズ

次に、21のデジタルレンズについて紹介していきます。レンズの簡単な説明と代表的なサービスを書いていきます。例えば、自動化する、即時化するなど、関係性があるレンズも存在しています。あくまでアイデア発想のための視点集としての位置づけなので、その点はご了承くださいませ。
また、順不同なので、順番は気にしないでください。そして、、、長いです。時間にあるときにどうぞ。

1)オンデマンドにする
ユーザーがほしいタイミング/場所で提供する


2)コミュニケーションにする

ユーザーやAIとコミュニケーションできることが価値になる


3)コミュニティにする

特定の嗜好や思想、目的を持つユーザーを束ねて価値をつくる


4)シェアリングする

個人や企業が保有する資産を他人に貸して活用してもらう。デジタルにより従来は分割できなかった権利なども対象になる


5)ヒトを価値にする

専門性や影響力があるヒトをサービスの価値にする。デジタルによりレバレッジを効かせる


6)ヒトを定量化する
ヒトに関する状態/行動をデータ化することでサービスに活用する


7)リアル情報のデータ化する
リアル空間にある物/事象をデータ化することで価値をつくる


8)クラウド化する
データをクラウド上で管理し、どこでも/どのデバイスでも/誰でもアクセスできるする


9)自動化する
ヒトが担当していた行動/思考をAI/機械が代替し自動的に行う


10)プロセスを入れ替える/なくす
従来のプロセスの一部をデジタル化することで体験/業務/行動の順番を変える、もしくはなくす


11)モジュール化する
プロダクト/サービスを第三者が提供する部品/サービスでカスタマイズする


12)分割する/(再)結合する
デジタル化によってこれまで結合されていたモノの一部だけ切り出す、分断されていたモノをひとつにする


13)即時化する

プロセスをデジタル化し、瞬時に処理することが価値になる


14)価値を2面化する

同一のサービス/プロダクトで対象によって提供する価値を変える


15)AIで代替する
人間が行う行動/業務をAI/機械によって代行してもらう


16)無価値を価値化する
従来は価値がなかったモノをデジタルによって価値を与える


17)パーソナライズする

データを活用して個人に最適なサービス/体験/機能を提供する


18)キュレーションする

大量の情報やコンテンツからユーザーにとって有益なものを選りすぐり、提供する


19)カスタマイズできる

ユーザーが、プロダクト/サービスの仕様を変更したり作り替えたりできる


20)お金以外の価値をつくる
お金以外の価値(時間、スキル、モノ、知識)でサービス/体験の需給を行う


21)エンタメにする

従来はネガティブなこと/まじめなことをエンターテイメント化し目的をすり替える


以上が、新事業を発想するための4つの方向性と21のデジタル視点=DXレンズの説明となります。長文、失礼しました。 

みなさんも新しいサービスを知ったらまずは価値を抽象化してみると、アイデア発想のきっかけに使えるようになるかもしれません。ぜひチャレンジしてくださいね。また、最近は生成AIのプロジェクトが多くなっているので、AIレンズなども考えてみたいな、と思いながら。。。では、また。

「スキ」「フォロー」をいただけると励みになります。「ビジネスデザインマガジン」の他の記事も興味があればぜひ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?