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【エッセイ】The Roland Showは面白い

 たまたまお世話になっている整体の先生がめちゃくちゃローランドのファンで、手帳も財布もローランド仕様のやつを使っているぐらいで、施術中にも彼の魅力を延々と語るので、なんだかとっても気になって『俺か、俺以外か。』と『君か、君以外か。』の2冊を読み、はまってしまった。
 「君が朝に弱いんじゃない。朝が強すぎるんだよ」みたいな彼の言葉は、ただのトンチのようで、よく考えると深い意味がある。こうに決まっている、という僕らの硬い見方を一回ほぐして、別の角度を見せてくれるのだ。
 そうすると、ふっと頭の緊張と言うか、体の緊張がユルむ気がして、なんだか楽になる。ローランドって言葉の整体師みたいなものなのかな、と思うと、もっと知りたくなって、気づいたら YouTube で THE Roland Show を見まくっていた。
 最初に撮られたものから順々に見ていると、一貫して強気な語録にはないローランドの一面が見えてくる。自分は弱いからこそ強気発言をして自分を追い込んでいるのだ、とか、長年サッカーに打ち込んできて、それでもプロになれなくて、このままだったら負けたままの人生になってしまうと思ってホストを目指したとか。オラオラキャラの発言の裏側にある繊細さや悲しみが伝わってきて、YouTube ってあらためてすごいメディアだなと思った。
 この動画で僕がいちばん好きなところって、ディレクターのソンさんとローランドの絡みなんじゃないかなと思う。八王子の富士森公園で夜、二人は語り合う。この階段に座り込んで、入学直後の大学を辞め、ホストになることを決めた。もうここまで来たら友達以上の関係として、一生付き合ってもらいますからね。そうローランドに言われて、ソンさんはその言葉をきちんと受け止める。
 余談だけど、僕は10年ほどまえ、富士森公園のすぐ近くに住んでいて、よく散歩していた。2人が座っていた階段も知っている。だから動画にあまりに見慣れた光景が出てきてびっくりしてた。まさかあの公園でそんな人生の転機があったとは。自分は全然関係ないはずなのに、何か深い縁を勝手に感じる。
 あるいは別の動画では、目立ちすぎて売店に行けないローランドの代わりにソンさんが駅弁を買ってきて、新幹線の中で仲良く2人で食べる。この感じ、どっかで見たことあるなぁと思ったら『水曜どうでしょう』だ。
 単なる大学生の大泉洋にミスターやディレクター陣が絡む。出演者も製作者も特に境界なく、旅をしたりふざけたりして、でもその感じが中校の部活みたいで、見ててホッとする。10年ほど前『水曜どうでしょう』にはまって、当時はNetflixなんかでは見られなかったので、わざわざ北海道テレビのサイトでDVDを直接、買っていたころを思い出した。
 The Roland Showには当時の『水曜どうでしょう』にあった、友情と言うか青春と言うか、人生において大切だということはみんな知っているのに、大人になったらいつのまにか消えてしまう何かがしっかりと現れている。あらためて自分はこういうのが好きなんだなぁ、と思わされた。
 The Roland Showに戻ろう。ローランドとの対談イベントにソンさんも出ることになる。そこで、ローランドがたとえ刑務所に行くことになっても自分は会いに行く、と彼が宣言するシーンがあった。なんだかソンさんはすごく深い愛情があるなあ、と思った。こうしたシーンを見ると、こちらもとても勇気づけられる。そして生きていることには十分意味があるんだなと思う。

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