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おもてなしを科学する

とうとう「おもてなし」も科学出来る時代になりそうです。

こんなプレスリリースが発表されています。

ようは、
女将が接客をするときには相手の感情を冷静に読み取って対応していることが脳波の測定で分かった、
という話です。

何となく、直感的には想像通りですがそれを脳波で計測したのは恐れ入りました。

ちなみに、「冷静に」を補足すると、相手の顔が不快な時はより敏感に、そしてたとえ笑った表情をしていても、その評価を相対的に低めに受けとめたそうです。

これは一般的なコミュニケーション能力にも生かせそうなTipsかもしれませんね。
ただ、そこまで気を使っているとストレスを相当溜まってないか、同時にちょっと不安にもなりましたが・・・。

それで、科学的に興味深いと感じたのは、今回の測定で評価した脳波の箇所です。

よく他の研究でも見かけるのは、顔を見てから約170ミリ秒後に左右側頭部でみられる「N170成分」といわれる脳波です。
今回はその成分にあまり女将と一般とで有意な差は認められず、その代わりに画像提示から約100ミリ秒後に左右後頭部でみられる「P100成分」といわれるものが有意な結果を生みました。

この「100ミリ秒」というのがポイントです。まだ仮説の段階ですが、我々が意識的に何かを意思決定するのは、数百ミリ秒後といわれています。

歴史的に有名な実験に「リベットの自由意志」と呼ばれるものがあります。
ここでは、自由意志をするまでに数百ミリ秒時間差があり、それまでにすでに脳内で発火現象、つまり神経細胞が活動していたというものです。

どう解釈するかはまだ議論の余地はありそうですが、少なくとも我々が意識的に判断をする前に脳が活動をしていることは事実です。

今回の実験から言えることもそれに近いことが言えます。

つまり、女将は「意識的に」相手の表情を冷静に評価しているのではなく、無意識のうちに行っているというものです。

これは生来的なものか後天的に会得したのかはとても興味深いですが、おそらく後者の可能性が高いと思います。

実は、過去にプロ棋士とアマの脳波を比較した実験が2008年に行われて、面白い事実が分かりました。

ようは、
修練を積んだプロ棋士は、直感回路が発達していることが分かった、
という話です。

ちょっとだけ補足すると、アマ棋士は、新皮質という計算や思考を司る領域が活発になります。
ところが、プロ棋士は小脳付近にある直観を司る領域が活発に活動していることが分かったというわけです。

今回の女将の脳波でも発生タイミングから、意識的に思考したのではなく直観に近いことを脳で行った結果だと推測されます。

つまり、好意的に解釈すると、誰でも修練を積めば「おもてなし」は鍛えられるというわけです。

例えば今回のような脳波測定が簡単にできると、トレーニング用途に使えそうですね。

ぜひ皆で「おもてなし」を科学的に鍛えましょう☺

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