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素粒子標準模型の見直しへさらに一歩近づく

重力を除く3つの力(強い力・弱い力・電磁気力)を束ねる「素粒子標準模型」、普段は物理好きの方以外は目にしませんが、久しぶりに話題になりました。

タイトルがすべてですが、何が起こっているかをもう少しかみ砕いて補足してみます。

ちなみに、呼び名不一致を気にする方のために。

上記日経記事では「理論」と書いてますが、どちらかというと「模型(またはモデル)」を採用することが多い印象です。特に規律はありませんが、理論の一歩手前が「模型」という習わし(?)のようです。
多くの天才が何十年にもわたって演繹的に予測を積み上げて形作られたものです。こう書くと過小評価されそうですが、驚くほどの精度でその確からしさが今でも信仰されています。

3つの力を構成する素粒子群はきれいに整理整頓されており、一番よくみかけるのが下記の表です。

出所:上記Wiki記事内の図

余談ながら、最後に見つかったパーツが「ヒッグス粒子」で、2012年にその証拠が発表されたときは、今回同様マスメディアでも報道されました。

上記のうち、「ミュー粒子」の測定結果が標準模型が導く値と大きく異なり、未知の素粒子が作用している、というのが今起こっていることです。

ミュー粒子は、電子と同様に負の電荷を持ち、スピンと呼ばれる量子的な性質を持っているため、磁場の中に置かれると、小さなコマのように歳差運動(首振り運動)をします。その磁場が強くなるほど、ミューオンの歳差運動は速くなります。

その速さがどうも標準模型よりも実測値が速いという話は、実は2001年から声が上がっており、2018年から今回の実験が開始されています。(偶然発見したのでなく、満を持しての検証)

2021年にも今回と同じような報道があり、過去投稿もしました。

2021年は、偶然そうなった確率は4万分の1(=0.0025%)、今回の記事では当時の4倍の観測データを用いて誤差を半分以下に抑え、それでもやはり結果は揺るがないようです。

こんな数値を聞くともう認めていいのでは?と感じますが、一応ルール上統計用語でいう5σ(シグマ)、割合にすると350万分の1までその偶然性を排除する必要があるとのこと。

こういう姿勢が自然科学の発展を支えているのだろうと思います。

今のペースでは2025年に最終報告が行われ、その後は日本のミュー粒子研究施設でさらに検証します!

その名もKEK(高エネルギー加速器研究機構)。

知る人ぞ知る世界が誇る日本の高エネルギー研究機関です。ぜひこれを機会にKEKにも注目してみてください。

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