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「アト秒」計測の応用例:分子指紋法

今年のノーベル物理学賞は「アト秒の世界への光明を照らした」研究に贈られました。

「アト」とは10の-18乗を指します。原子でさえ10の-9乗(ナノ)スケールなのでいかに小さな単位なのかが分かります。
下記サイトが分かりやすく図示していたので紹介しておきます。

上記記事内の図

で、気になるのは「アト秒」単位で光を細かく作って何がうれしいの?
という点だと思います。

光を作る、と書くと分かりにくいですが、カメラに例えると光の周期(波長)がシャッターだと思ってください。
シャッターの間隔が狭いとそれだけ被写体の動きを細かく見れますよね。
とすると、今まで動きが速すぎて追えなかった現象をつかむことができるわけです。

そう考えたら、無限の可能性を秘めた研究成果であることが分かると思います。

ノーベル賞公式サイトでのテキスト説明(こちら)でもその応用例が言及されているものを1つ紹介します。

https://www.annalsofoncology.org/article/S0923-7534(22)01973-1/fulltext

ようは、この技術を応用することで、血液中の特定分子のふるまいを精細に追うことで病気の兆しを予測することができる、
という研究成果です。

"molecular fingerprinting(直訳すると、分子指紋法?)"と呼ばれており、今後普及するとこの和訳も定着するかもしれませんね。

上記の実験成果で検知しようとしたのは「がん」です。(こまかくは乳がん、膀胱がん、前立腺がん、肺がん)
被験者から血液を採取し、上記ガンの兆しとなる分子の挙動を今回開発した分子指紋法を使って解析しました。
しかも、その挙動をデータ化した後の解析にはAI(機械学習)も使っており、まさに最新科学研究の宝庫です。

1つの解析で、上記4種類のがん(の腫瘍となる可能性のある分子)を同時に調べることができるとあり、何よりも血液分析のため患者への負担が相当減らせられるのが大きいですね。

ノーベル賞と聞くと、どうしてもそれが何の役に立つの?というお決まりの批判を聞きます。(悪意がないのはわかってますが)

生理学・医学のmRNAワクチンは分かり安すぎますし、前回書いた「量子ドット」技術もすでにディスプレイとして日常で体感することができます。

今回の物理学賞の「アト秒」という非日常的な言葉でも、上記で紹介した研究成果にまですでにつながっているというのは、よりその意義を感じることができるのではないでしょうか?

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