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チンパンジーとヒトの近くて遠い関係

「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てする」
これは「セルフメディケーション」と呼ばれていますが、なんと人間だけの行為ではないことが分かりました。

野生のチンパンジーが、捕獲した虫を自身または子供の傷口に塗るしぐさを発見したとのことです。

元ネタからたどると、実際に塗る動画も公開されています。

チンパンジーは元々知的で人間に近いというイメージがあるので、個人的にはそこまで驚きはしませんでした。

逆に、何が言語や道具を発明する能力など両者の知性(ややいい加減な定義)を分けたのかが素朴に気になります。

地球の生物を還元していくと、ゲノム情報、特にAGCTという4種類の塩基配列に到達します。そしてチンパンジーと人間とは、その配列の違いがたったの「1.2%」しかないことも過去の研究で明らかになっています。

チンパンジーの研究者では、人間を特別視しないことが重要、という方もいらっしゃいます。

ただ、「塩基配列の1%強だけが違う」との表現はもう少し慎重にうけとめたほうがいいかもしれません。そんな警告を唱えているのが下記の動画です。

ざっくりいうと、下記2つがあいまいということを指摘しています。

1.意味がありそうな領域だけを切り取って比較をしていること
2.1文字の違いだとしても、そのインパクトが不明

1つについてもう少し補足すると、人のDNAの大半がタンパク質を作ることに貢献しておらず、不明とされており「ジャンクDNA」と呼ばれることもあります。

ただ、近年の研究では、実はジャンクではないのでは?との研究が進んでいるようです。
一般向けだと下記の本はその探求もあり、非常に興味をそそられます。

要は、ジャンクDNAには、遺伝子を発動させる制御機能があるとのことで、塩基配列がハードウェアだと仮定すると、さながらそれを動かすソフトウェアプログラムに例えられると思います。

2021年にも、そのジャンクDNAこそが違いの重要なパーツという説を唱える論文も発表されており、今後新しい発見があるかもしれませんね。


次に2のインパクトについてですが、わずかの違いが大きな違いを生む可能性もありえます。

まず、知性といえばやはり「脳の性能」をイメージすると思います。
実際人間の脳はチンパンジーより数倍も大きいのは事実です。ただ、ならば人間より大きな脳を持つ生物(実際います)は、なぜ人間以上に言語や道具をつかえないのでしょうか?

実は今、脳の大きさでなく「質」に影響を与える遺伝子の研究もおこなわれており、その実験効果もこの数年で明らかになっています。

要は、人の脳成長をつかさどるMCPH1と呼ばれる遺伝子をサルに注入すると、大きさは変わらなかったが知的テストの成績が良くなったということです。
このMCPH1(以降も続々と発見されて番号で増えています)は、細胞周期の制御を担う機能を持っており、細胞分裂の回数を決めるのでサイズに影響があるといわれています。
ただ、上記実験のように知能は「大きさ」だけではなさそうです。他にもMCPH1はDNA修復機能も有しているので、まだ我々が知らないインパクトがありそうです。

こういった研究が、人間の「知性」解明に到達するかもしれませんね。
ただ、それをどうするのかは人間の「理性」が問われるところです。

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