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Psy-borg3〜邂逅〜

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Psy-borg 3〜邂逅(かいこう)〜 「私サイボーグなんです」 謎の言葉を呟いた依頼者。生き別れた兄の捜索を依頼され、その記憶の道程を辿るうちに、江戸末期の人形師の記憶が交錯… もっと読む
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Psy-Borg3~邂逅㉛最終回

Psy-Borg3~邂逅㉛最終回

視界がぼやけ、彼女と人形の影が重なり合う。

今、良介の目の前にいる女性が、華音なのか人形の夢千代なのか判断がつかなくなっていた。

―この前世があるかどうかは知りません。その時代の時の経過の中で繋がれた記憶、感情。そこから生まれた私という人格が生きた時間を思い出すことはできません。 私にあるのは人が残した記録、断片化された記憶だけ。そして今あなたは、私の中にある時間の場面を、あなたの中にある鏡に

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Psy-Borg3~邂逅㉚

Psy-Borg3~邂逅㉚

「左衛門です、伝馬町、人形師の左衛門と申します。火急の事、失礼ながら門を開けてくだせえ」

彼はできる限りの力で門を叩いた。

「どうした、ひでえ傷だ。おめえも夢千代にやられたってのかい」

勝手門から先日の門衛が出てくると、うずくまる左衛門を見て驚いた様子で、駆け寄ってきた。

「そんなこたぁどうでもいい、蔵、蔵を見せてくれ」

その騒ぎを聞いて、数人が勝手口から顔を出した。その中に新門辰五郎も

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Psy-Borg3~邂逅㉙

Psy-Borg3~邂逅㉙

浅草奥山「てめえ…何を」

ゆっくりと短刀を抜くと、見る間に着物が赤く染まる。

「毎日あいつの顔をみながら、俺はいつも問うていたよ。俺はまだ大丈夫か、抜け出せるか、立ち上がることができるか、真っ当に生きていけるかってな」

左衛門は傷口を抑えてうずくまり、男の顔を見上げた。

「でも人形は何も返しちゃくれねえ、ただ優しく見つめるだけだ。でも、人形に魂なんざ入らねえ。あいつの心が鏡だったんだからな

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Psy-Borg3~邂逅㉘

Psy-Borg3~邂逅㉘

そして優しい笑顔のまま良介を見つめながら話し始めた。

「心配してくれてありがとう。月島華音にそんな事はさせないわ、安心してほしい。ただ…」

「ただ…何ですか?」

「なんでこの時間のよどみにあなたがいるのか、あなた自身が理解できないと思うの。でも、どうしてもこの顛末を最後まで見届けてほしいの、あなたに…」

良介を、何か抗えないような大きな意識が包み込む。彼は覚悟したようにコクリとうなづいた、

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Psy-Borg3~邂逅㉗

Psy-Borg3~邂逅㉗

「見にいく?」

彼女はうなずき、川沿いを歩き出した。人は生まれ、必ず死んでいく。その先になにがあるのかわからない。だからこそ人は何かにすがり、今を生きようとする。

「私の中にある記憶。それが今の時間に流れているものではないのは、わかっています」

彼はあわてたように後を追うと、

「私はあなたの妄想に付き合っているというのか?月島さん、不躾で失礼な言い方かもしれないが、それならば、あなたが頼る

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Psy-Borg3~邂逅㉖

Psy-Borg3~邂逅㉖

「どんなに抵抗したくても、自分の力では抗えない時の流れが、飢えという暴力が容赦なく私たちを襲ってくる。それも何年も何年も…。雑草や木の根を食い、時には牛馬の腐肉をあさり、時には…」

そう言って、彼女は自分の腹部を見つめ、まるでそこに自分の赤子を宿しているように、ゆっくりと撫でた。

その様子を見て、良介はゾッと背筋の凍る思いがした。

今は屋内で餓死をする者もいるという。しかし、金銭不足の購買力

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Psy-Borg3~邂逅㉕

Psy-Borg3~邂逅㉕

「わかってたよ、そんなこと。わかってたから許せなかったんだ。俺自身をよ」

そういってゆっくりと近づいてきた。左衛門は身構えを解いて、その様子を眺めていた。

「いつまでもあいつの影を追ってる俺をよ。真っ当に生きてくれと、そう言って離れたあいつの心を、何も受け取っていなかったのはおいら自身だ。こんなに近いのに。近いから目が眩んでたのか。あいつはいつでも俺の鏡だった。性根を映す鏡だった」

左右に力

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Psy-Borg3~邂逅㉔

Psy-Borg3~邂逅㉔

夢千代は顔も、体つきも、声もどこもお千代と似ているところがなかったが、なぜか彼女の姿を重ね合わせていた。

それでも長く時間を共にすれば、情も移ってくる。何度も夢千代を抱きたい誘惑に駆られた。しかし、肌を合わせたら、お千代を汚してしまいそうで、ひたすら自分に言い聞かせて人形作りに没頭した。

そんな左衛門の気持ちを知ってか知らずか、ある日夢千代は彼にしなだれかかり、彼もたまらず彼女を抱きしめた。

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Psy-Borg3~邂逅㉓

Psy-Borg3~邂逅㉓

「私はそんな菩薩に近づきたかった。暗く淀んだ想いの奥にあるその人の良心を映し出す。そんなことって不可能かしら。人の心に感応して、それを映し出す鏡。満たされない半身を鏡に変えて、人の持っている仏心を導くような。そんなことができないかって」

日にどのくらい他人のことを思ったりするのだろう。自分の利益を考えずに、純粋にその人の幸せのためだけに気持ちを寄せる事なんてできるのだろうか?

親として、子とし

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Psy-Borg3~邂逅㉒

Psy-Borg3~邂逅㉒

人と人型との決定的な違いは時間の経過を泳ぐのか、それともただそこに漂うだけなのかの違いだ。

モノにも経年劣化はあるが、完成された人形に、一つ一つの生きた細胞の衰えや生死は関係ない。

「さっき言ったように、わたし、仏像は人が求める優しさを、いたわりを、気高さを、こうありたいという望みを形にした、その時の人の心の状態を映す鏡のような存在だと思っているの」

仏像は動かないし、心と肉体がリンクするよ

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Psy-Borg3~邂逅㉑

Psy-Borg3~邂逅㉑

「確かに、仏像や人形に魂が入るってよく聞きますよね。でも人形は完成された形以上には動くこともできませんし、心を映してくれません。もし魂が入ったとしても、その時々で移り変わる人の情…悲しみや喜び、願い、恨みや、妬み。そんなものを見える姿以上のことでは表現してくれない。そんな窮屈なところに魂がいつまでも留まることなんてできないんじゃないかしらって」

彼女の声が頭の奥のほうから聞こえるような錯覚に陥る

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Psy-Borg3~邂逅⑳

Psy-Borg3~邂逅⑳

「南方の上座部や中国の道教などと融合した仏像も、もっと人らしいんですよ。もっとも、釈迦牟尼仏や達磨大師などの実在の人物を祀る場合が多からかもしれませんけど。日本の仏像みたいに、こんなにも異形で美しいものって他に無いって、わたしは思っているんです」

彼女は今きた参道を戻りながら、話を続けた。

「異形のものって普通、どう扱われますか?」

また突然話が変わったかとちょっと身構える。

「翼を持った

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Psy-Borg3~邂逅⑲

Psy-Borg3~邂逅⑲

橋場不動尊商店街をしばらく歩き、途切れた頃に道の先にマンションが立ち並んでいる。

「ここから河岸が見えたのに」

彼女はそう呟いて先を進み、また一件の寺院の前で立ち止まった。

細い路地を入り、本堂に向かう。小さいが雰囲気のある御堂だ。

境内には大きな銀杏の木が立っていて、この街を何百年と見守っているようだった。

「兄さん」

彼女が吐息交じりに呟いた。良介は彼女の顔を覗き込むと「何か、思い

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Psy-Borg3~邂逅⑱

Psy-Borg3~邂逅⑱

「あいつがいなくなってからよ、俺はもう俺じゃねえ気がしちまってな」

そういうと、力を抜いて腕を垂らし肩を落とした。

「行くあてもなくなって、ここの頭に拾われたのさ」

そう言って裏手の塀の外を顎で指した。左衛門はそちらのほうに視線を向ける。その意味を探ろうと頭を巡らせたが、一向にわからない。

「わからねえのか?」

男は諦めたような、それでいてこちらを蔑むような表情を見せた。

「俺たちはな

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