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日記小説 第8話 雨の中

僕の名前はココロ。
今日は朝から雨が降っている。
雨粒が薪小屋の屋根に当たり、
リズムを奏でている。
僕は妹に雨の中、散歩に行こうと誘った。
妹は母ちゃんにカッパを着せてもらい、
僕は水色の傘をさして外に出た。
二人とも足元は長靴を履いている。
外に出てみると、いつもの景色とは違い
少しだけ空が暗く、
でも気持ちがいい気温。
ここ最近はずっと暑い晴天だったので
違う世界に来たみたいだ。
いつもの散歩コースを歩いていると、
花や雑草が雨に打たれながら
生き生きと踊っている。
久しぶりの雨だから
きっと、気持ちがいいんだろうな。
妹は水たまりにジャンプしながら
バシャバシャとはしゃいでいる。
妹は遊ぶのに夢中で頭に被っていた
カッパのフードがとれて、
髪の毛や顔が濡れていた。
僕は妹に
「濡れるから、ちゃんと被りな。」
っと伝えた。
すると妹が、
「大丈夫!すごく気持ちいいよ!」
「花たちもこんなに気持ち良さそうじゃん!」
っと笑いながら答えた。
たしかに花たちはシャワーを浴びているかのように
気持ち良さそうに雨に打たれていた。
今この場所で雨を避けているのは僕だけだった。
僕は手に持っていた傘をたたみ、
自然に生きるみんなと同じように
雨に打たれてみた。
…ほんとだ。
…すごく気持ちがいい。
僕は目を閉じて上を向いて花たちと一緒に
雨を感じた。
自然のシャワーをみんなと感じた。
いつもは傘やカッパで
濡れないようにしているけど
何も考えず雨に打たれると
こんなに気持ちがいいんだと気づいた。
すると、顔に当たっていた雨粒が急に
当たらなくなり、
ゆっくり、目を開けてみると
雲の隙間から太陽の光がスポットライトのように
山を照らし、横には大きな虹ができていた。
「うわぁ。きれいー!」
妹が大きな声で指をさして
僕に教えてくれている。
本当に大きくて、山と山を繋ぐ
橋のような虹だ。
そして、今まで空を覆っていた雲が
あっという間になくなり、
花や草たちの雨粒が太陽に照らされて
キラキラ輝いている。
まるで、光の海に虹の橋が架かったような
別世界が広がった。
ずぶ濡れになった僕と妹は、雑草の絨毯に座り
少しの間、静かに眺め続けた。

輝く世界は意外と近くにあるもの。
それに、気づくかどうかは自分次第…。

僕の名前はココロ。
この日記は未来の僕に送る手紙…。

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