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ある日の支援日記 あんな母親と同じになんか絶対になりたくない

みなさまこんばんは。
ましこと言います。

わたしはパラレルワーカーでいくつかの仕事をしているのですが、今は大きく2つ、1つはベビーマッサージ教室の運営、そしてもう1つ今一番注力しているのが、自治体が運営している地域子育て支援拠点の専任職員の仕事です。フルタイムで平日は毎日地域子育て支援センターに勤務しています。

今日のテーマは「ある日の支援日記 あんな母親と同じになんか絶対になりたくない」です。

とても若くきれいなママさんが、生まれて間もない赤ちゃんを連れて来所してくれました。あまりにもきれいだったので、当初はモデルか地下アイドル、バーレスクダンサーかと思っていました。その見た目と育児へのお考えが対極的で、丁寧に赤ちゃんと関わり、大切にいとおしそうに育てています。センターの中でも「〇〇ちゃん大好き」と肯定の言葉を赤ちゃんに伝え、スキンシップも他の親子様にも参考にしてもらいたいほど上手にしています。

表面から見えるその様子は本当にほほえましく、見守る支援員としても確かに心が温かくなります。ほぼ毎日来所するその親子に、他の職員は優しくていいお母さんですねと言います。それは職員の主観と感想であることやジャッジをしないことを忠告しました。経験年数の長い子育て支援に関わる人ならきっとわかると思いますが、そう、見えておらず、気づけていないのです。このママさんの「何か」を。

わたしは自分で言うのもハズカシイのですが、仕事のスイッチが入っているときのアンテナの感度はけっこう鋭く、経験則で感じ取るものもあるのかもしれませんが、なんとなくママさん自身の親子関係の歪を感じ取りました。いつか必要があれば自ら話し始めるだろうと思って、しばらく様子を見ることにしました。

子育て支援センターの仕事は、利用者の悩みをあぶりだすことではないし、そっと見守る優しさも必要だと思っています。

そんなこんなで、流行り病が5類になって初めての規制のないお盆がやってきました。

わたしの勤務する支援センターは自治体運営なので、年末年始と日曜祝日以外は開所で、お盆も通常通り開所しています。なので、この時期は毎年ご家族のお盆休みのない人、近隣にご両親がお住いまたは同居の人、そして帰る場所がない人がセンターに集まります。

市内は故郷に帰省しているご家庭が多く、街全体も電車も上り下りともに閑散としているのですが、センターは賑やかという光景が毎年見られます。
わたしが運営しているベビーマッサージ教室も同様です。

とても若くきれいなママさんも、そんなお盆に来所頂いていました。

午後の支援センターは比較的利用者が少なく、職員とゆっくり話せる時間帯で、聞き流してほしい胸の内を置いていく利用者さんが中心に訪れます。午前中のにぎやかさとは雰囲気が一気に変容します。

これは入職から1週間後、センターの時系列の人の動きを把握した際にある仕掛けをした結果なのですが、わたしの所属しているセンターは、午後の利用時間が狭く、利用者も特定されて少ないのです。これは利用者さんにとってはボーナスタイム。自分は見逃すことなく、赤ちゃんが昼寝しなかったり、困ったことがあったら午後の時間はゆっくり聞けるのでどうそと積極的にご案内していたのです。

そんなお盆で同僚の職員は夏休み中の一人運営の午後のある日、そのとても若くてきれいなママさんが来所しました。

いつものようにお子さんと室内のおもちゃで楽しみ、いい時間を過ごしていました。

すると、思わぬ質問が投げかけられたのです。

「ましこ先生はお盆でもいてくれるのですね」

うん、だって帰る場所のない人がいることも知ってるし、わたしはそういう人とこういう時間を過ごしたくて前の会社辞めて給料半分になってでもここに来たし、自身は帰る場所があっても帰ることを渋る一人なんですよ。

そう一言伝えると、泣いちゃったんです、その若くてきれいなママさんが。

堰を切ったようにあふれる思いを話してくれました。


お母さんは、結婚離婚を繰り返し、いわゆる機能不全家族で育ちあがったそうです。本人はその認識があり、自分はアダルトチルドレンであり、絶対に子どもに自分と同じ思いをさせないと言う覚悟があると言います。そのために子が生まれても隠せばまだまだ需要ある飲食店の現場から身を離し、専業主婦になり、現在に至ると教えてくれました。

聞くと、相談者のお母さんは驚くことにわたしと同世代。
相談者であるママさんは娘と4歳差。

そうなのですね、そうなのね、とお話をお伺いしていくと、徐々に実母である母親への思いが溢れてきました。

切なく、悲しい内容に涙を止めて淡々と説明するママさんの様子を見て、育児への並々ならぬ覚悟を感じました。

若いお母さんであり利用者さんなので、思いを吐露させたほうが良いと思ったので。率直に今どうしたいのかと聞いてみました。

すると

「あんな母親と同じになんか絶対になりたくない」

瞬きせず、真剣な表情でわたしに覚悟を宣言していました。

受け取る側も本気で伝える時だと思いましたので、こんな話をしてみました。

子育ての負の連鎖は必ず断ち切れるから自分を信じてね。
答えは少し先を行くわたしの子育てが全てです。

たくさん泣いていました。

お伺いした境遇は、なかなか関係性の修復が難しいケースでしたが、もしかすると万が一にも時間薬が効くかもしれないので、距離を置いてその機会を待つのもいいし、もう関わらないという気持ちで過ごすのもいいと思うと伝えました。

「あんな母親に絶対になりたくない」
その言葉の裏にある本当の思い。

子育て支援の奥深さと実感する出来事でした。

※原文はノンフィクションですが個人が特定されないようフィクションも含まれます

ましこ


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