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確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力【読書記録#4】

割とガチめな本でした。厚みもすごい。

著:森岡毅、今西聖貴2016年5月刊行。

概要

P&Gを経て、経営不振に陥っていたUSJをV字回復させた、森岡毅さん。
マーケターです。

最近巷で聞くようになった「マーケティング」。
すごそうだけど、一体何なんだろう?
テレビに出演されていた森岡毅さんにも興味が湧いて、この本を読んでみることにしました。

この本は横書きで、長く難しい数式も、ところどころ出てきます。
(ガリレオの湯川先生がリアルに書きそうな数式でした…!)

物を売るためには、戦略が必要。
では、有効な戦略をどう立てるのか。

そこで出てくるのがマーケティングです。

マーケティングは、数学の力を借りれば、より確実なものとなる。
そんな印象を受けた本でした。

数学の「赤玉白玉問題」

私は根っからの文系です。
すべてに目は通したものの、理解できたところはほんのわずか。(ごめんなさい…)

それでも、「ここで数学が役に立つのね!!」と感動した部分があります。

数学の確率問題が出てきたところです。

袋の中に赤玉が3つ、白玉が2つ入っていて、取り出す問題。
あれです。

これがマーケティングに繋がるんですって。
もっと早く知りたかったなぁ。

理解できた範囲で、書いてみます。

消費者の頭の中には、これまでの経験から「買ってもいいかな」と思う、いくつかのブランドの候補が決まっています。

その候補たちを、「Evoked Set」(エボークト・セット)というそうです。

例えば、「アイスを買うなら、ハーゲンダッツか、チョコモナカジャンボか、雪見大福がいいな。」ってこと。

そして、それぞれを購入する確率は均等ではありません。
購入頻度は異なっているんです。

そのあたりがどう決まるのかというと、その人の経験に基づいた好み(プレファレンス)です。

たとえば。
アイスの例でいくと、プレファレンス(好み)に基づいて、以下のような購入確率になります。

ハーゲンダッツ…50%
チョコモナカジャンボ…30%
雪見大福…20%

この人の場合、ハーゲンダッツが特に好みのようですね。

つまり、その人のプレファレンス(好み)によって、どのアイスを選ぶのか、確率が変わってきます。

そして、これは「赤玉白玉問題」と同じ仕組みになっています。

袋の中にハーゲンダッツの玉が5個、チョコモナカジャンボの玉が3個、雪見大福の玉が2個入っていて、袋の中身をかき混ぜて、中を見ないでその中から1つ取り出す確率の計算と同じ。

2回目以降も、同じ計算。
取り出した玉を戻して混ぜ、またその中から1つを取り出す確率の計算。

年に10回アイスを買うとしたら、この行動を10回繰り返すのと同じということ。

自分の生活を振り返ってみても、あぁ、確かにそうかも、と思いました。
お菓子でも日用品でも、だいたい好みは決まっています。
日ごろのお買い物が、確率の計算で説明できてしまうなんて。

マーケティングの肝

「プレファレンス」(好み)という言葉に、この本で初めて出会いました。

マーケティングをする上で、特に重要なことなんだそうです。

森岡さんいわく、市場構造を支配しているのは、「プレファレンス」。

プレファレンスとは、消費者の、ブランドに対する相対的な好感度です。(好み。)
ブランド・エクイティー、価格、製品パフォーマンスの3つによって決まっていて、どんなカテゴリーにも当てはまるそうです。

要するに、好みのものはよく買うということ。

企業が経営資源を集中させるべきは、プレファレンスの向上。

なぜなら、売り上げは消費者のプレファレンスによって最大のポテンシャルが決まるから。
そこから、認知度と配荷(どのお店にどのくらい売られているか)による制限を受けながら、結果につながっていくそうです。

USJの起爆剤、ハリーポッターを成功させるための作戦

USJ、V字回復の要となった「ハリーポッター」。

巨額の費用をかけて起こしたプロジェクト。
成功と言うためには、200万人の追加集客が必要だったそうです。

そのために導き出された数字は、90%の「認知」。

日本国民の10人中9人が、「USJにハリーポッターができる!」と知っておく必要があったのです。

では、どうやって認知度を上げたのか。

TVCMなどの広告で75%。
残りの15%は森岡さん自ら本を執筆。ベストセラー本にすることで話題を集め、メディアにアピールすることができたそうです。
(この時の本が、「USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?」なんだそうです。読んでみたい…。

緻密な計算によって、あらゆる作戦が功を奏す。
計算だけではなくて、「本を書く」というキレッキレの作戦にも驚きました。

学生時代に出会いたかった

この本を読んで、マーケティングの端っこはかじれたかな、どうかな?と思います。

何より思ったのは、学生時代にこのお話を知っていれば、もう少し数学を楽しめたのかもしないな、ということです。笑


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