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アラフィフが初めて保育士として勤めて丸1年をふりかえった話

令和4年1月に保育士資格の合格通知が届いた。
早速、ハローワークで条件の合う保育士資格を活かせる仕事を、
いくつか探して面接をお願いした。

最初に受けた保育園に内定し、春から働くことに決まった。

けっこうスムーズに決まったので世間がいうように、
保育士不足なんだな……と思った。
ニュースの影響もあり、世間の保育士の仕事はネガティブなイメージがある。
が、当然のことだが、
私の経歴と面接をきちんと考慮した上で採用になったわけで、
頭数そろえればいいというわけではないことを、
働いているうちにわかった。

春になり勤め始めた。
保育士と言ってもパート勤務だ。
そんなに大変ではないだろう。

しかしどの仕事でもそうだが、
いざやってみるとそれほど甘くはなかった。

初めて会う子どもたちはとても可愛らしかったが、
子どもたちの顔と名前を覚えるのに必死だった。
呼びかけする時、一瞬言葉に詰まることがあった。
若い時ほど記憶力がないことを痛感した。

保育園勤務の経験がないので、
何もかも分からないことだらけだった。

仕事に就いて一番とまどったのは子ども対応だった。
子どもの食事の介助につくのだが、
栄養士さんが毎日作ってくれる美味しそうな献立でも子どもには苦手なものが多い。

好き嫌いに対してどう対応するかはそれぞれの考えがあると思うが、
保育士としてはなるべく偏食せずに食べてもらいたい。

なので、「いやっ!」と拒否する子どもの口元にスプーンでご飯を運ぶのだが、
こちらの必死の声掛けなど知らんぷりで、口を固く結んで横を向いてしまう。

(どうやっても食べない……ムリだ……)と諦めそうになっていると、
ベテラン保育士が「はい、食べるよ! あーんして」とスプーンを口元に運ぶ。
すると、今まで頑として口を開かなかった子がぱっと口を大きく開いて、
ご飯をもぐもぐと完食したのだ。

……え? すごい! 
これには驚いた。 
毎回食べさせようとして挫折して、ベテラン保育士に代わってもらう。
どうして私だと食べないんだろう……。
これには悩まされた。
たとえ1歳の子でもこちらの保育士としての未熟さを見抜いていた。

この時期にコーチングを受けコーチから、
「あなたはどんな先生だったら信頼しますか?」と聞かれた。
自分の中でぐるぐるしてまとまらない気持ちを言語化したことで、
自分の足りないところに気付いた。

「食べさせなきゃ」という焦りから、
その子の個性や気持ちやタイミング、ペースなど全然分かっていなかった。
そして、日頃から子どもとの信頼関係を大切にしているベテラン保育士の対応に尊敬を感じた。

このように子ども対応にも一苦労していたが、
想定外だったのが、先輩保育士からの風当たりの強さだった。

私は受験資格が短大卒業程度に引き上げられたことによる経過措置にあたる年のため、
高卒の保育経験なしでも受験することができた。

一方、専門学校や大学へ通い、時間とお金をかけて保育士資格を取得した人にとっては、
私のような受験組でも「保育士」として勤めることができることに抵抗を感じるのかもしれない。
私が逆の立場だったら「試験に受かっただけの人に何が出来るの?」ときっと思う。

保育士試験は9科目の筆記試験と2科目の実技試験があり、
それらを合格すると資格を取得できる。 

筆記のほうは合格率20パーセント前後であるが、
実技は合格率80パーセントと言われており、
ポイントを押さえて対策しておけば実技試験はほぼ合格できるような内容だ。

最初は先輩の風当たりの強さの理由が分からなかったが、
だんだんとこれは受験組への不信感なのでは……と思い始めた。

責任感が強く一所懸命に子どものことを考えている保育士ほど、
こちらの適性を慎重に見ていたのだと思う。

自分の子を二人育て、
福祉施設で人に接する仕事をして、
知り合いから頼まれて一年間、
親御さんが帰宅するまでの間、小学生の子をお世話してきたこともある。

なので保育士としてはビギナーでも、
それなりの経験やいろんな人たちに接してきた。

だが新しい職場では、信頼関係ゼロのところから築き上げていかなくてはならないことに気付いた。
私より年上のベテラン保育士から中堅の保育士、
そして学校を卒業して数年の自分の子どもでもおかしくない年齢の保育士の中で
それまでの経験や知識をリセットするつもりで、一から学ぶ姿勢で勤めようと決めた。、
私のような年齢の新人に、教えるほうも気を遣っただろう。

私の年代で受験して保育士として勤め始めた人は周囲では珍しく、
知り合いからそのことで結構話しかけられることもあった。

私が1年も経たないうちに退職すれば、
「あぁ、やっぱり保育士って大変なんだ」と思われるかもしれない。
それもあって、辞めるわけにはいかないという気持ちもあった。

確かに大変なこともあるけれど、
これまでになく充実感もある。

せっかく保育士資格を持って子どもの養育を行うのだから、
いろんなことを学んでいきたいと思った。

自分の子どもを育てるのと保育士として子どもに関わるのは異なるので、
先輩保育士の子ども対応の仕方や保育に関する本を読んだりして、
参考にするようにした。

少しでも保育力をあげようと、読み聞かせ、手遊びや折り紙など覚えるようにした。

努力しても空回りすることが多かったが、
半年過ぎた頃には数人の先輩保育士から
「よく頑張っていますね」と声をかけられるようになった。

保育士は子どもの命を守り、育ちを支え、
保護者のサポートでできることはないかと模索しながら、
誇りと愛情を持って業務にあたっている。

昨年の春に初めて会った子どもたちは、もうすぐ上のクラスに進級になる。
よちよち歩きの泣き虫だった子どもたちも、
いつの間にかしっかりした足取りで自分で水筒を持って散歩に行くようになった。
来年の今頃はまたどんな風に成長していることだろう。

新米保育士の私も少しでも力になれるよう、
子どもたちとともに、未来へ一歩一歩歩んでいけたらと願っている。

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