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【ライターの裏側】 インタビューでは、目的とダーゲットを伝えてからがスタート

(株)ドロキアオラシイタに入社したときは「パティスリーブラザーズ」という洋菓子ブランド一つだけだった。そもそも広報として採用されたわけではなかったが、なぜか広報担当者になり、パティスリーブラザーズの新商品のPRや取材対応、ブログやSNSでの発信など広報活動全般を担当した。「焼きたてチーズタルトPABLO」を立ち上げに際しては当初から広報として関わり、当時まだ企業がSNSアカウントを持つことも珍しかった時代、さらに“中の人”という概念がほぼなかった時代に、私がまさに“中の人”をやっていた。その後、パティスリーブラザーズの飲食事業としてパンケーキを売りとした「ブラザーズカフェ」の立ち上げに関わり、広報活動はもちろん、皿やカトラリーや割り箸やおしぼり、エントランスに敷くロゴ入りのマットなどの発注、コーヒーの業者を選んだりメニューの試作をしたりといったことも行った。
ベンチャーらしいといえばベンチャーらしい、と今は懐かしく微笑ましく思う。

前職では、広報担当者として取材を受ける側の立場を何度か経験した。「PABLO」では圧倒的に商品に関する取材が多かったけれど、「ブラザーズカフェ」では開発秘話や素材のこだわりなどを話すことも多かったし、「パティスリーブラザーズ」や会社(当時はMKSコーポレーションだった)自体の取材では、経営者である3兄弟の幼少期の話や会社立ち上げの話、それぞれの役割、三男のJリーグ時代の話などが中心となることもあった。

取材では、大概ライターとカメラマン、もしくはライター、ディレクター、カメラマンがセットでやってくる。
取材を受ける経験を通してはじめて「ライター」や「ディレクター」という仕事があることを初めて知ったので、彼らの仕事ぶりがどうこうというのは当時はまだよくわかっていなかったけれど、取材中の質問が形式的だったり、以前もnoteに書いたがライターと話が通じなかったり、話した内容と出来上がった記事や番組の内容がなんか違う、ということが何度かあったので、アポの電話やメール、企画書で何となくそんな予感がしたら、こちらから取材の企画意図や読まれるのはどのような層なのかという部分を事前に聞くようにした。
自分から聞かないと言ってくれないライターやディレクターは多かったし、企画意図やターゲットによってこちらも話す内容が変わってくるのでね。

目的とターゲットを理解してもらってから、インタビューをスタートする

ここからが本題なのだけど(いつも前置きが長くてすみません)、インタビューでは必ず目的とターゲットとなる人が誰なのかを伝えてからスタートしている。私たちプロからすると「何言ってんだよ当たり前だろ」ってなことなんだけど、意外とこれができていない人もいるよう。
事前に質問項目を送って当日はその質問項目に沿ってインタビューを進めていくだけのライターさんもいるみたいだけど、それではインタビューを受ける側が「何のためのインタビューか」を理解していないままインタビューが始まってしまう恐れがあるのだ。

私の仕事で最も多いのが採用ページの先輩インタビュー。採用ページのインタビューでは、上司から「ホームページを新しくするから社員インタビューに出ろ」「採用ページ作るからインタビューに答えろ」と言われて、あまりよく分からないまま当日を迎える人がたくさんいる。
実際に、「今日なんて聞いてきました?」って聞くと、
「なんか、ホームページ作るんですよね」
「写真撮影があるって聞いてきましたけど、インタビューもあるんですね」
「インタビューって聞いたんですけど、なんなんですか忙しいんすよ(恥ずかしくてキレてる)」

ということもあれば、
「上司が、9時にこの部屋に来いって言ったから」
ということも多々ある。
多々あるのよ。
そこで、「採用ページの先輩社員の声としてインタビューさせてもらった内容を掲載します」と説明すると、
「あーはいはい、なるほどね」
と合点がいった顔をする人も。

社員さんが「採用ページに先輩社員の声を載せる」と聞いてきているからって安心してはいけない。新卒向けの話なのか、中途採用向けの話なのかでも、インタビューの内容は変わってくる。
これから新卒を強化して採用していきたいと思っているのか、中途採用の即戦力を求めているのか、社員の多くは会社の意向を知らない。幹部や経営陣なら当然なことも、インタビューを受ける末端の社員さんまでは伝わっていないことも多いのだ。
中途採用向けのインタビューで「新人向けの丁寧な研修制度があります。研修制度のおかげで同期と交流ができました」なんてと答えられても困るし、新卒向けのインタビューで業界の専門用語を並べまくったり「介護や子育て中の方でも無理なく働けます」なんて書いたりするのもまた違う。

社員さんに「新卒か中途かどちらをターゲットにしたインタビューか」が伝わっていたとしても、まだ安心できない。
会社の働き方・働きやすさについてアピールしたいのか、業界や職種の特徴をアピールしたいのか、会社や人事部の意向によっても違う。これも、トップは知っていても末端までは伝わっていないことも多いので、どの部分にフォーカスを当ててインタビューするかはだいぶ重要だなと思う。
それに、社員さんによっては業務を兼任している場合もある。どの立場からどの職種の応募者に対しての話をしてもらうのか、というところも重要かなと思う。

「インタビュー受けてこい」と部下に指示した上司は、当然WEB制作のプロでもインタビューのプロでもないので、インタビューの目的やターゲットを事前に部下に伝えられるわけがない。制作側のディレクターもピンからキリまでいるので、企業側の担当者にうまく意図を伝えられていないこともあるし、聞いていたのと違う人数がやってきたり、聞いていた役職と違う役職の人がきたりして当日アワアワしていることもある。
インタビューは、ほぼ一発勝負のやり直しなし。あとから「聞いた話がページの趣旨とズレていたのでやり直させてください」なんてのは絶対にできないので、インタビュー当日、制限時間内に、確実に聞き出したいことを聞き出さないといけない。
だからこそ、インタビュー前に、インタビューの目的と誰に向けて書くものなのかというターゲットを明確にしておく必要があるのだ。こちらと相手との認識を一致させておくために。
(本当はディレクターがやってくれたらいいのにと思うけどね)

採用インタビューに限らず、パンフレットでも読み物でも、企業や商品の広報活動のためなのか、採用活動のためなのか、インタビューするからには必ず「目的」があるはず。そして誰に読んでもほしいのか、どんな印象を持ってほしいのかというターゲットや意図があるはずなので、インタビュー前にはまずそれを伝えて、インタビューする側とされる側が同じ心持ちでスタートすると良いと思う。

それだと、インタビュー中も話はスムーズ。聞きたい話が引き出せなくて何度も同じことを聞いて変な空気になることも少ないし、余計な気を遣わなくていいのでワイワイ楽しい雰囲気になりやすく、インタビューをする側もされる側も「いい時間だったな」と思っていい気分で終わることができる。
私の仕事は毎回笑いが多く「楽しかったですね〜」と終わることも多い。
先ほどの、「何なんすか、忙しいんすよ。話すことないっすよ」とキレる社員さんのような人でも、だんだんとノってきて持ちネタや鉄板エピソードなんかも披露してくれたりして、最後は気持ちよく終わってくれる。
インタビューって楽しいよね。

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