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企業がウェルビーイング(well-being)という概念を無視できない理由

本日は弊社で発行している「販促プラス」の原稿をお届けします。


ウェルビーイングが意味することとは


 とくに2020年以降、日常生活からビジネスに至るさまざまなシーンにおいて、「ウェルビーイング(well-being)」という言葉が頻繁に使用されるようになってきました。もともと世界保健機構(WHO)が提唱したことで知られるこの言葉は「個人や集団が健康で幸福な状態にある」ことを意味しますが、これは単なる無病息災だけでなく、肉体的、精神的、社会的に満たされた状態を指しています。
 このウェルビーイングという概念が社会へ浸透することにより、企業活動においては、顧客のウェルビーイングを実現するための新しいサービスの創出、従業員のウェルビーイングを実現するための労働環境の改善など、大きな変化が起こっています。

SDGsの文脈におけるウェルビーイング


 ウェルビーイングは1946年発効のWHO憲章のなかですでに言及されており、決して新しい言葉・概念ではありません。ではなぜ近年になって、国際社会で急速に注目されるようになったのでしょうか。このウェルビーイングの普及や浸透についてはさまざまな要因があると考えられていますが、2015年9月に国連サミットで採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」に盛り込まれたことが大きなきっかけであることは疑う余地がありません。
 ところでSDGsは、2000年に制定された「ミレニアム開発目標(MDGs)」をよりブラッシュアップしたものとして位置づけられています。MDGsが開発途上国の発展をおもな目的とするのに対し、SDGsの目的は、先進国も含めたすべての国における持続可能な発展を実現すること。MDGsでは8つだった目標がSDGsでは17と大幅に増え、「Good Health and well-being(ゴール③)」という、健康でウェルビーイングな状態を目指す目標も加えられました。
 SDGsではそのほか、公正で安全な労働環境と経済成長を目指す「Decent Work and Economic Growth(ゴール⑧)」、持続可能な都市とコミュニティの創出を目指す「Sustainable Cities and Communities(ゴール⑪)」など、個人や社会のウェルビーイングを前提とした目標が新たに定められています。

ウェルビーイングが国内へ広がる契機となった「働き方改革」


 SDGsの制定を皮切りにその重要性が強調され始めたウェルビーイングですが、日本国内での普及や浸透に大きな影響を及ぼしたのは、2019年に厚生労働省によって行われた「働き方改革」と言えるでしょう。
 日本には、とくに戦後の高度経済成長期以降、長時間労働をも厭わない勤勉さを“美徳”とする価値観がありました。この勤勉な労働の賜物により奇跡的な戦後復興を遂げ、1968年以降の約40年もの間、GDP世界第2位の経済大国であり続けてきたわけです。しかしながら手に入れた経済的な豊かさの代償として、精神疾患や過労に追い込まれる労働者が増加するという側面も。加えて少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少、労働者のニーズの多様化などの課題も浮上し、いよいよ国内の中小企業や小規模事業者に向けて導入されたのが、厚生労働省による働き改革でした。
 働き方改革の大きなポイントのひとつは、「労働時間法制の見直し」です。労働時間法制の見直しは、働き過ぎを防ぎながら「ワーク・ライフ・バランス」や「多様で柔軟な働き方」を実現することを目的に設計されました。具体的な施策のひとつに残業時間の上限規制がありますが、これは1947年に制定された労働基準法において初めての大改革となっています。 
 改革のもうひとつのポイントは、「雇用形態に関わらない公正な待遇の確保」です。これは、正社員と非正規社員の間の不合理な待遇の差を無くし、働き手がどのような雇用形態を選択しても待遇に納得して働き続けられ、多様で柔軟な働き方を選択できるようにすることを目的に定められています。
コロナ禍を経てリモートワークも一般化し、働き方改革が行われた頃よりもさらに多様な働き方が可能になった現代。労働環境にウェルビーイングの概念を取り入れることは、もはや時代の要請であると言っても過言ではありません。

ウェルビーイングに共感するZ世代と今後の企業の在り方


 企業が経営にウェルビーイングを取り入れることで、生産性の向上、人材の確保、企業価値の向上が期待されます。世界各国の大手企業はすでにウェルビーイング経営に着手しており、たとえばアメリカの検索エンジン大手「Google」は、「心理安全性」がチームの生産性向上につながるという調査結果のもと、リーダーとメンバーとの面談を定期的に設けるなどの取り組み行っています。
 とくに人材の確保という観点において、ウェルビーイングの積極的な導入は大きな効果を発揮すると考えられます。なぜならばウェルビーイングへの共感度や理解度は、若い世代であればあるほど高いからです。とくに1990年半ばから2010年初頭生まれの「Z世代」と呼ばれる世代は自分らしい生き方へのこだわりが強く、消費より体験をから得られる精神的な充足感を重視する傾向にあります。このZ世代が企業活動の中心世代へと移行するにつれて、ウェルビーイングな企業が増加していくことは間違いないでしょう。


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