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田舎の公立小中学校からケンブリッジに行った話 - 番外編その2

また田舎ネタで、田舎出身の私がその後の人生で色々と困ったこと、文化的な格差を感じたことなど紹介します。今回は文化的な格差についてです。

文化的な格差

私の育った町には博物館、美術館、コンサートホールがありませんでした。また、家族も休日に美術館に行くといった習慣は一切ありませんでした。そもそも親は自営業だったので、日曜日ぐらいしか出掛けられず、長期の休みも取れないので、お盆と正月に1泊か2泊の旅行ができるぐらいでした。

というわけで、博物館や美術館に行くという習慣が一切身につきませんでした。クラシック音楽にも触れる機会がありませんでした。加えて周りの友達もみんなそうなので、美術品などへの興味も湧きませんでした。

これで驚いたのは、友達と一緒にヨーロッパ旅行に出かけた時でした。ちょうどアメリカに留学していた知人がヨーロッパ旅行をしたいということで、イギリスにいるなら一緒に行こう、という話になりました。パリで待ち合わせをして、それからオランダ、オーストリア、チェコ、ハンガリー、ドイツなどと回ったのですが、その友人が行く先々で、この博物館に行きたい、この美術館にあるなんとかの作品が見たい、などと言うのです。私は特に行きたいところもなかったので、言われるがままについて行ったのですが、こいつは一体なんでそんなものに興味があるのだろうか、と旅行中ずっと不思議に思っていました。

また、建築にも興味があると言っていろいろな建物を見に行ったのですが、私はでかい建物、派手な建物を見てふーん、と言うぐらいにしか思わず、この建築はこう言うところが面白い、などと建築物を目的に移動する理由も理解できませんでした。

大人になってから気づいたこと

美術館やら建築に興味があるのは、アートに興味があるような、一部の特殊な人だけだと20代後半ぐらいまで思っていました。

ところが案外普通の人でも美術館などに行く習慣があるということを知ったのは、大人になってからです。妻と話していて、田舎では美術館もなかったから子供の時からそういうところに行く習慣がないんだよね、と何かポロッと話したことがあって、「あー、だから旅行行っても美術館とか行かないんだ」と指摘されました。あれ、そうなの、本当は行きたかったの?とキョトンとしたのを覚えています。そんなところに行きたい人は滅多にいないだろうから、別に行こうとも聞かなかったし、自分が行きたいとも思わないので行かなかったのですが、そういう考え方はむしろ特殊なのだと初めて気がつきました。

そういう教養がないのはちょっと大人として恥ずかしいよな、と思い始めて、30代半ばぐらいから年に1、2回ずつ美術館や博物館に行くようにしています。でも全然良さが理解できないです。昔大阪の知人に、美術館の品を大阪人に分からせるには作品に値札をつけたらいい、という冗談を聞いたのですが、自分もそうしてほしい、と思ったぐらいであまり笑うことができませんでした。

誤解のないように言っておくと、田舎出身者は美術への教養がない、と言いたいわけではありません。私が個人的に知らないだけで、同級生の中にもアートに関心のある人もいたと思います。紹介したかったのは、例えば東京や大阪にいる人ほど簡単には美術品を鑑賞できる機会がなかった、ということです。日本の国宝展みたいなものは東京か大阪で行われるのがほとんどですし、海外の作品も東京ぐらいにしか来ないです。よっぽど好きな人が周りにいないと、新幹線代を払ってまで東京に美術品を見に行く、ということにはならないです。

まとめ

今回は個人的な文化的経験について紹介しました。都心部に住んでいる人たちに伝わるかどうか分かりませんが、とにかく日本全国の人がゴッホ展とかムンク展とか行けるわけではないんですよ、というのを伝えたかったです。

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