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小説「エ・アロール それがどうしたの」 著・渡辺淳一 読書感想文

かつて銀座にあった料理屋の息子で医師の来栖は、亡き父に対して後悔の念があった。
妻を亡くした2年後、父は交際相手である女性を来栖に紹介した。
かなり年の離れた若い女性との結婚を匂わせる父に対し、来栖は「そんなの、変だよ」と答える。
父はそれからしばらくして亡くなった。
来栖は父の結婚に反対してしまったことに悩み、やがて、人々が晩年を自由に過ごせる高級老人ホーム「エ・アロール」の建設を考える。
完成した「エ・アロール」には、生活レベルの高い上流階級の人々が集まるが、そこで来栖は複雑で明るい人間関係に巻き込まれていく。

マスコミから隠し子がいることを言及されたかつてのフランス大統領ミッテランの返答として名高い「エ・アロール(それがどうしたの)」に触発された渡辺淳一先生が作り上げた小説。

老人ホームに風俗嬢を連れこみ事の最中に亡くなる男性。
若い男性理学療法士に恋する老婦人。
絡み合う老人の三角関係。
若い娘を妊娠させて右往左往する元・名誉教授…と、「エ・アロール」はいつもスキャンダルで賑やか。

もちろん、元気な人ばかりでなく病に苦しんだり、不安定だったりする人も。
病める人、健やかなる人の殆どに共通するのは、みんな性格が粘っこいということだ。

とにかく、年を取って心身ともに元気なのは、精神的に自立している人か、ヤリマンばあさんか。

たぶん、私は精神的に自立しているタイプ。
以前にも少し触れたが、私は早くおばさんになりたかった。
今、おばさんになってとても嬉しいし楽しい。
ただ、困ったことにおばあさんにはなりたくない。

うっかり長生きしてしまったらどうしよう。
この本を読んでさらにその不安が募るのであった。

かつてドラマ化された時のオープニングテーマ。主演は豊川悦司。ドラマはハッピーエンド。小説は、ほろ苦く。

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