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「襲う」という言葉が表す、性教育の課題。

※本記事には、性暴力に関わる表現が含まれます。

とある”男”友達 Rが話してくれた、
もう何年も前のことだ、という恋バナ。

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男女数人、大学生が集まる飲み会。

だれかのお家でまったり飲む、通称「宅飲み」で、
当時Rが気になっていた女の子は、先に酔っ払って寝ていた。

それを見つけた周囲の友人たちは「寝てるし、襲っちゃえよ〜!」とRをそそのかし、Rはキスをした、という話。

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へえ、おもしろいね
よくある話だね

こう思う人もいるだろうか。

そもそもこの話は、「お酒で失敗したことある?」という私の質問に対するRの回答だった。

「これは俺にとって”成功”かもしれないけど…」という前置きで話してくれた。というのも、その飲み会ののち、Rはその子と付き合うことになったらしい。確かに、Rにとっては「成功」事例かもしれない。

しかし私には恐怖だった。

「望まない、合意していない性的な行為」に関わる話を明るく、面白い話としてされたことが恐ろしかった。

「襲う」という表現を、なんの前触れもなく笑顔で伝える、そのまっすぐな目が怖かった。

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内閣府の「男女間における暴力に関する調査」(平成29年度調査)によれば、女性の7.8%が無理やり性交などをされた経験があると答えている(※男性は1.5%)。単純計算で「女性の13人に1人」が性的被害の経験がある。

(参考:https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/e-vaw/chousa/pdf/h29danjokan-7.pdf )

私自身も思い出すだけで涙が出てくる、悔しい経験がある。

多くの人、特に多くの女性が、合意のない「受け身の状態」でキスやセックスを強要されている。

日々「襲われるのではないか」、こうした恐怖と戦い続けている人がいる。

一方で、この現実になんの疑問も抱いていない人もいる。「襲う」話を「笑い」に変える人がいる。

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この背景には性教育の不足があるだろう。

私が生まれた1998年、性教育に「はどめ規定」が加わった。
学習指導要領改訂で、中学校の保健体育では「妊娠の経過は取り扱わないものとする」というもの。
(参考:https://dot.asahi.com/aera/2023012600015.html?page=1 )

学校教育で「性交」に関わることを学ばずして、「性的同意」のこと、「性被害」のこと、どこで学べというのだろうか。

こうした性教育の不足が、Rの話に出てきたように、「襲っちゃえよ〜」という人権を無視した発言や、同意ないキスをしても「成功」と本人が語れてしまうといった現実に繋がっているのだと私は思う。

※性教育のほかにも、「恋愛・性愛に対して女性は”受け身”である」といった、ジェンダー的価値観も大きく影響しているだろう。王子のキスで目覚める「白雪姫」なんかを「理想のロマンス」として幼少期から見ていたら、私が抱くモヤモヤは生まれないのかもしれない。

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今回、勇気を出して記したのは、もちろんRを攻めるためじゃない。
日々生きていれば「男性が女性を襲う」話なんて、様々な恋バナでも聞くし、メディアでも目にする。(嫌だ)

面白くないよ、その話。

お願いだから、もう再生産し続けないでほしい。
そのためにも、国にはきちんと性教育をおこなってほしい、そう願って、言葉にしてみた。

書きながら涙が出た。なんて無力なんだろうか、なんて小さな抵抗なんだろうかと感じた。

それでも私は言い続ける、「望まない、合意していない性的な行為」にはNOを。

※本記事は事前にRにお読みいただいています。Rからは「伝えてくれて、書いてくれてありがとう」と。こちらこそ読んでくれて本当にありがとう。

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【うすやまこむぎ プロフィール】
東京都立大学卒。社会人類学専攻。
セクシュアリティ研究へ打ち込んだ学生時代の経験を活かし、LGBTQ+関連イベントの企画/運営、講演会登壇など。LGBTQ+当事者との対話実績は100名以上。毎月「SOGI対談」を実施中。地方に暮らす、フェミニスト。

これからも時々、
セクシュアリティのこと、ジェンダーのこと、記していきます。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

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