なぜ”理解ある彼くん”はいなくなってしまうのか

僕の妻は社会不安障害です。

SNSで度々、発達障害やうつ病と上手く付き合っていく、という内容の漫画が話題になります。
多くは、今まで大変だったけど良き理解者が現れて前向きになった、というものです。
いわゆる”理解ある彼くん”の登場で人生変わった、ってやつですね。

しかし、そのような漫画とセットで話題になったのが、漫画の作者がその後離婚や破局してる、ということです。
もちろん、みんながみんなそうなっているというわけではないでしょうが、そういう傾向があるようで、「理解ある彼くんいなくなってるじゃんw」と揶揄するように拡散しています。

なぜ”理解ある彼くん”はいなくなってしまうのでしょうか。

ここからは僕自身の見解です。それぞれに事情があり、外からは知ることはできません。

言うなれば、僕はその”理解ある彼くん”にあたります。

おそらくですが、彼くんがいなくなった理由は、理解あるかと思いきや無かった、好きではなくなった、耐えられなくなった、これらではないと思います。

現実的に共同生活が不可能だった

という理由なのではないかと思います。

僕が今、不安障害の妻といっしょに暮らしていけているのは、たまたま運がよかったからかもしれません。
僕の仕事(収入源)は、100%リモートで時間も融通がききます。
突発的な症状が出てもその場にいるので対処ができます。

これがもし9時‐5時で会社に行く仕事だったらどうでしょう。

突然仕事を切り上げて帰ることもできないし、会社に一緒にいるわけにもいきません。
お金は必要だから働かないわけにはいかないし、都合の良い仕事はそうそう見つかりません。
むしろ、会社に出勤する仕事の方が一般的なので、障害を抱えた配偶者と一緒に暮らすのは「普通は無理」ということになります。

いくら彼くんに理解があろうとも、愛していようとも、例えば障害年金や生活保護だけで2人が生活するのはかなり無理があります。
逆に、1人は健常者で働けるということでそういう給付を受けられなくなったりします。

共倒れになるか、離れるか、気持ちでどうにかなる問題ではありません。

今の諸々の仕組みではどうしようもないことなのです。

もしかすると、SNS上で”理解ある彼くん”側からの発信が少ないのは、彼くんが抱える現実的な歪みや「見捨ててしまった」といううしろめたさがあるからかもしれません。

理解ある(寛容である)のが彼くんだけではなく社会全体であれば、誰もが生きられるようになるかもしれません。

これを読んだ方だけでも、「大変なんだなあ」と思っていただければ幸いです。

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