療養中なのに元気そうな人を見かけたら思い出してほしい話

僕の妻は社会不安障害です。


うつ病などの精神疾患を抱えていて、かつ病気であるということを知られている人は、「体調どう?」とか「元気そう」とか言われることが多いのではないかと思います。
夫である僕も「奥さんの体調はどう?」と聞かれることが多いです。

この辺でも周りの認識と実情とに乖離があると感じています。

これは妻の場合になりますが、精神疾患であっても、四六時中うつうつとしているわけではありません。
むしろ9割がたは普通(元気)です。
ただ、ほんのささいなきっかけでどん底に落ちてしまうのです。
その”ささいなきっかけ”を避けなければならないので、いわゆる「普通の生活」が難しいのです。

例えるならば、ゲームでHPが1しかない状態です。
HPが1であっても、動きが鈍くなったり攻撃力が下がったりはしません。
もしHPのゲージが見えなかったら、HPが100でも1でも同じに見えます。
しかしHP1なので、わずかなミスや弱い攻撃をくらっただけでもゲームオーバーとなってしまいます。
なので、危ない橋は絶対に渡れないし、敵からも逃げるしかないので、おそらくクリアするのは難しいでしょう。

疾患の無い人でも、HP1のような状態になることもあると思います。
しかし、同じHP1でも、疾患の無い人のHPは1/100であるのに対し、疾患のある人のHPは1/1なのです。
最大HPが1なのです。
HPが1/100であれば、割と容易に手に入る回復アイテムを使ったり、宿屋に入れば回復しますが、最大HPを上げるには、たくさん闘ってレベルを上げたり、レアアイテムを使う必要があったりと、そう簡単にはいかないでしょう。

「療養中」ということはつまり、この最大HPをなんとかして上げようとしている状態です。
HP1なのでもちろんゲームオーバーもたくさんします。
ゲームオーバーになったらまたやり直しです。

それほどに、通常に復帰するということは難しいのです。

ゲームオーバーにならないために、”一歩も町から出ない”という選択もあり得ます。
それなのに外に出て、レベル(最大HP)を上げようとしているということは、相当がんばっているということです。

あんまり病人に見えないな、と思うこともあるかもしれません。
しかし本人にとっては、他人から見えるところに出てきている時点で大きなリスクを背負っているのです。だってHPが1だから。

見た目が普通だからといって、「さぼっている」「甘えだ」と言うのは本当にやめてほしいです。
言う方にとっては弱パンチかもしれませんが、それだけでゲームオーバーになってしまうのです。

「休んでる」のではなく「闘っている」んだということを多くの人に知ってもらいたいと思っています。

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