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1. Yurika - Prologue -|読む人の運命を加速させる恋愛小説

冬の空。息が白い。

今から私は、ある人に会いに行く。そこで私は、告白される。

東京の夜は明るい。ビルと、車の灯。

今私は、分岐点に立っている。目の前には二つの分かれ道。標識はない。地図もない。誰もどちらが私の幸せなのか、教えてくれない。

あれは10ヶ月前。春だった。私は結婚も考えていた大好きだった彼氏に、浮気をされた。

目の前で土下座をする彼。何回謝られただろう・・・

だけど私の心は動かなかった。

「友利花が仕事ばっかりで相手してくれないし、LINEもどんどん減っていって・・・寂しかったんだ」彼はそう言った。

原因は、私にあった。

でも私は、どうすればよかったの?

彼は私とLINEをたくさんしたがった。付き合っているのだからそれは当然かもしれない。特に看護師という不規則な仕事をしている私との大切な時間だったから。

もちろんそれはわかってた。

だけど世間ではコロナウイルス感染症が大流行中で、私の働く病院も例外ではなかった。その影響を受ける中、私は感染リスクを考え、彼とは思うように会えない日が続いた。

彼ならこの状況も分かって支えてくれると思っていた。実際に支えてくれていたし、優しい彼と会って過ごす時間に私は癒されていた。

だけど自分が思い描くような看護ができず、忙しい毎日に心はどんどんすり減っていく。

いつしか余裕がなくなっていた。

「明日の休み、そっち行っていい?お家デートならいいでしょ?」

彼からの電話。すぐに返事ができなくなっていた。

部屋は荒れ放題。あんなに綺麗好きだったはずの自分を疑うレベルの汚さだった。

誰かと会うより1人でゆっくり寝て過ごしたい・・・
これが私の本音だった。

「ごめん、今ちょっと余裕ないかも・・・」
「ちょっとも会えない?」
「うん、正直今は無理かもしれない」
「そっか・・・わかった。だけど連絡はちゃんとして。最近仕事終わりの連絡もくれないじゃん」
「うん・・・ごめん。ちゃんとするね」

———ちゃんとするね

ちゃんと、って何だろう?

私は何をちゃんとしないといけないの?余裕がない状況でもちゃんと掃除してちゃんと彼女もやるってこと?

でもそれって・・・

この気持ちが彼に伝わったのかもしれない。

私は「浮気された女」。
その烙印が押された瞬間、私の心は死んだ。

それからは彼の残り香を消すように、私は仕事に没頭した。何も考えずにただ生きた。何かを考えると壊れてしまいそうだった。

彼氏なんていらない。そんなこと、考える余裕もない。

けど、夏が過ぎ、人肌恋しくさせる風が吹き始め、私の世界は少しずつ、動き始めた。

そんな中、私の世界に現れた2人の男性。

1人は私に、幸せを約束してくれる。

けどもう1人は・・・

今私は、分岐点に立っている。目の前には二つの分かれ道。標識はない。地図もない。誰もどちらが私の幸せなのか、教えてくれない。

付き合って、結婚して、子どもを産む。皆に、祝福してもらう。紛れもない、幸せ。

幸せでしょ?私は何に悩んでいるの?

私はゆっくりと、白い息を吐く。

今から私は、告白される。

その人は、私をきっと、幸せに連れて行ってくれる。誰もが祝福してくれる幸せへ。

私は夜空を見上げ、星を数える。


今この瞬間、たった一つ、たった一つでいいから、もし星が流れたら、私はその奇跡を信じて、迷わず選べる。そんな気がする。私が進むべき道を。私の幸せを。

でも———

運命は残酷だ。そんな星、流してくれない。運命は私自身の決断を、求めている。

ポケットの中で、スマホが振動する。画面を見て、私は夜の空気を大きく吸い込む。

運命は、残酷だ。

星ではなく、人生を変えてしまう一通の電話を、私によこしたんだから。



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