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【試し読み2】生きていて申し訳ない(『うつには祖母がよく効きます』より)

こちらのエッセイは、こうの みさと著『うつには祖母がよく効きます』に収録されています。

生きていて申し訳ない


 不思議なのですが、夜になるとそれとなく準備をはじめるんです。宿題はやっていないし、完璧ではないんだけれど、日課表通りに教科書を揃えて、授業を受けられるような状態にしておく。

 でも、朝になるとお腹が痛くなったり、不安が大きくなったりして、どうしても学校へ行けない。気持ちとしては、半分くらい行くつもりなんだけど、でも行きたくない気持ちも、めちゃくちゃある。そのせめぎ合いでした。

 たとえ学校へ行かなくなって一年経とうが、私の中には「学校は行かなくちゃいけない場所」だという認識がずっとあったので、それが苦しかった。

 「一年も通っていないんだから、もういいや」とは、なれなかったんです。

 学校へ行けなくて、先生方に申し訳ない。友だちにも申し訳ない。もちろん母にも申し訳ない。

 ずっと、懺悔の気持ちが渦巻いていました。

それまで名前を呼び捨てで「おい! 何してるんだ!」という雑な接し方だった先生までもが、不登校になった途端「みさとちゃん、次はいつ学校に来れそう?」と猫なで声で話しかけてくれる。気をつかってくれる。申し訳ない(そして、気持ち悪い)。

 友だちへの申し訳なさは2種類あって、まずは仲のいい友だちに「月曜日になったら行くわ」と約束するのに、毎回登校できないという、申し訳なさ。

 もう一つは、別に仲良くなかった子が、私が不登校であるがために、目の笑っていないウソの笑顔で「みさとちゃん、一緒に行こうよ~」と保健室まで迎えにきてくれた時、「先生に言わされているんだろうな」という悲しさに似た申し訳なさがこみ上げてきました。

 母に対する申し訳なさは、言わずもがな。「こんな娘でごめんなさい」と感じていました。自分が学校へ行かないがために、かかわってくれる人に気をつかわせてしまっている。「生きていて申し訳ないな」、常にそう感じていました。

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『うつには祖母がよく効きます』

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