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【ヨガの呼吸法】プラーナヤーマ、クンバカ、バンダ、ムドラーの簡単な整理。やり方や効果、注意

ヨガのプラーナヤーマ(クンバカ、バンダ、ムドラー)について簡単な整理です。

「一般的なプラーナヤーマはリラックスや健康効果が目的で、ムドラーは神経生理への強めの刺激、作用が目的」というのがこの記事の内容です。

一般的なプラーナヤーマ(片鼻呼吸法など)

 一般的にはプラーナヤーマとしてなされるのは、リラックスやリフレッシュなど健康効果を目的としたヨガの呼吸法です。

片鼻呼吸法ナディショーダナアヌローマヴィローマ)は最も有名な呼吸法の一つです。

 片鼻呼吸法のやり方、説明のYouTube動画です。

このプラーナヤーマは自律神経を調整し、適度なリラックス、リフレッシュ効果があり、瞑想前や睡眠前にも良いとされています。

吸う時も吐く時も、余計な力、力みはいれないようにします。
特に呼気は丁寧にゆっくりにすると副交感神経の働きが高まり、リラックスに良いとされています。

無理はせずに実践の積み重ねによって徐々に、呼気の長さは吸気の2倍くらいにゆっくりになると良いとされます。


 深い呼吸は横隔膜や呼吸に関係する筋肉や筋膜を刺激し運動させ、内臓のマッサージになったり、リンパや血液の流れを促進したりします。

ヨガの体操(アーサナ)の後の調整として行えば、相乗的な健康効果もあると思います。

瞑想の前にも適してます。深く落ち着いたプラーナヤーマは心や呼吸を整えるだけでなく、姿勢を安定させる効果もあります。
スムーズに瞑想状態へ移行するのにたすけとなるでしょう。

 中国の気功でよく言われるのですが「三調」というのがあります。
調身、調息、調心です。姿勢、呼吸、心を整えて気功しましょうという言葉です。

ヨガのプラーナヤーマはこの三調に役立つものです。


 片鼻呼吸は、ひょっとするとネイザルサイクルnasal cycle)と呼ばれる生理現象と何か関連があるのかもしれません。
このネイザルサイクルは交代性鼻閉などともいわれています。

右左の鼻の穴の通り具合が交互に、何時間かの間隔で変化する生理現象です。
諸説ありますが、これは鼻(粘膜、神経、線毛、血管、、など)の機能の維持のためとされます。

このサイクルには脳の視床下部が関わっていて自律神経支配とされます。(副交感神経支配?)


 あと、右鼻穴の気道がピンガラ管(太陽、陽、熱、交感神経)で左鼻穴の気道がイダ管(月、陰、冷、副交感神経)などとヨガの情報にあります。

それで右鼻だけで呼吸すると体が温まり、左鼻だけで呼吸すると冷えるという人もいます。
ホントにそうなのか、科学的に実験して確かめられているのかは知りません。

 神や魂の存在、非存在を科学的に証明するの難しいでしょう。
しかし片鼻だけの呼吸で体温が変化するかどうかは簡単です。科学的な体裁をしっかりと整えれば、あとは片鼻だけの呼吸で、ヨガで言われているように、ホントに体温変化が生じるかどうかを確認するだけでよいのですから。

こんな簡単なことなのに、科学的に確認され証明されたという話を聞かないです。
まぁ、しょせんその程度の話なのでしょう、と私には思われます。

呼吸法であれなんであれ、懐疑する精神は必要だと思います。


 片鼻呼吸法のほかにはカパーラバーティバストリカブラーマリーといったプラーナヤーマが有名です。


クンバカやバンダ

 プラーナヤーマでクンバカ(保息、止息)をすることもあります。
クンバカの効果としては、神経の調整、心の落ち着きや集中、深い呼吸などとされます。

クンバカは力まず10秒以下が良いと思われます。


クンバカの時にバンダ、特にムーラバンダをすることもあります。これも自律神経の調整や姿勢の安定、呼吸を深めることなどに良いとされます。

関連note:【Mula Bandha】ヨガのバンダ、ムーラバンダについて

バンダにはお腹やノドのバンダもあります(ウディヤナバンダ、ジャランダラバンダ)。
健康目的のヨガや呼吸法では、ムーラバンダのみでも十分だと思われます。

片鼻が詰まって通りづらい時の対処法

 片鼻が詰まって通りづらい時の対処法がヨガにはあります。

詰まっている鼻とは反対側の脇の下に、こぶし大よりも少し小さめのものを挟み刺激し、その状態でスムーズに通っている方の片鼻を押さえ、詰まって通りづらい方の鼻だけでしばらく呼吸するようにします。

もしくは、通りづらい方の鼻が上になるように横向きに寝て、その状態で同様に通りづらい方の鼻だけで呼吸します。

こういった方法が良いと伝わっているのですが、しかし、その効果に関して科学的なエビデンスがあるかどうかはわかりません。


アロマテラピー(ユーカリなど)

 プラーナヤーマにはアロマテラピーの活用もよいと思います。
好みの精油を選ぶとよいですが、呼吸法におすすめなのは森林浴(フィトンチッド)系の精油です。

シネオール系の精油(ローズマリーやユーカリなど)、α-ピネン系の精油(ヒノキ、サイプレス、ジュニパーなど)、ティートリー、リモネン系(柑橘系、フランキンセンス、エレミ)などや、それらのブレンドがおすすめです。

関連note:【瞑想と精油】 瞑想に役立つ精油、アロマテラピー 【瞑想ブレンド紹介】


特殊な呼吸法  ムドラー

ヨガにはムドラーと呼ばれる呼吸法があります。

手の印、ハンドジェスチャーもムドラーと呼ばれて、ひょっとするとこの手印の方が有名なのかもしれませんが、この記事で触れているのはバンダとクンバカのともなったプラーナヤーマのことです。


ハタ・ヨーガの有名な古典『ハタ・ヨーガ・プラディーピカ』『ゲーランダ・サンヒター』『シヴァ・サンヒター』にはいくつかのムドラーが記述されています。

代表的なのはマハー・バンダ・ムドラーなどです。
これはクンバカと3つのバンダ(ムーラ、ウディヤナ、ジャランダラ)をするものです。

関連note:【Mudra】ムドラーについて

このムドラーは霊的な実践、スピリチュアルな実践と言われることがあります。
これに関してチャクラとか生命エネルギーとかクンダリーニなどといったスピ系の単語をあわせてよく目にします。


身体に負担がかかり、健康上のリスクもある

 このムドラーは健康目的のものではないと考えます。
リラックスやリフレッシュ目的のものではないです。


何か特別な意図が無い限りは、これは実践する必要がないと考えます。
バンダとクンバカによって身体に負担が強くかかることがあります。
血圧・眼圧が上昇したり、心臓・血管系、循環器系などに負担がかかり、健康上のリスクがあり得ます。

無理に行うと危険です。気を付けましょう。


これは体内のプラーナ、アパーナ気、クンダリーニなど生命エネルギーに関するマニアックな実践です。


ヨガのムドラーに該当する呼吸法はチベット密教(後期密教、無上ヨーガタントラ)にもあります。
例えばツンモ(チャンダーリーの火、ナーローの六ヨーガの実践で用いられる呼吸法がそうです。

また中国の気功で奥深いものである内丹(仙道)にもあります。
高藤聡一郎氏の仙道本で触れられている『武息』もムドラーに該当します。

神経生理への刺激

ムドラーという呼吸法は、リラクゼーション目的というよりかは、神経生理への刺激といった要素が強いです。
具体的にはどのような刺激になるのかは、専門的な知識が必要で、私は述べることはできません。

ただ、刺激の主体となっているのが、クンバカとバンダであるのは明白だと思われます。


ムドラーでは、リラクゼーション目的での腹式呼吸よりも、もっと明確で強めな呼吸が用いられます。
これにクンバカやバンダが加わります。

呼吸クンバカバンダによってムドラーは構成され、実践ではこれが何回も繰り返されることになります。

 簡単に考えても、このような呼吸法では、もちろんながら腹・胸腔内圧の大きめの変化があるでしょう。
腹・胸腔内圧の変化が迷走神経や自律神経他への明確な刺激になるかもしれません。


ムドラーでは、クンバカ(息止め状態)が長めのことがあり、これ自体が強めの刺激になると考えられます。
バンダも、迷走神経や自律神経他を刺激しそうなものばかりです。


さらにこのムドラーにカパーラバーティやバストリカのような頻呼吸、もしくは、ヴィム・ホフ・メソッドの呼吸法にあるような深い頻呼吸が、あわせて用いられることがあります。

バストリカのような頻呼吸は鎮静作用よりも興奮作用だと思われます。
さらにヴィム・ホフ・メソッドにあるような深い頻呼吸では、明確に呼吸性アルカローシスも加わります。


以上述べたことから、ムドラーは総合的な神経生理への刺激法だと考えられます。


ムドラーでのバンダの役割ついて

 ムドラーにおけるバンダの効果は、ヨーガ的な表現で説明すると、生命エネルギーの制御です。


ムーラ バンダは、下降しがちなアパーナ気をせき止め、逆流、上昇させるために行われるなどと説明されます。
このムーラバンダでは、肛門を引き締めたり緩めたりを繰り返すアシュヴィニー ムドラーという動作をあわせて行うことがあります。

ウディヤナ バンダ(ウディヤーナバンダ)とジャランダラ バンダ(ジャーランダラバンダ)は、生命エネルギーの上昇のためとか、アパーナ気とプラーナ気(とサマーナ気)を混ぜ合わせるため、心臓のチャクラに生命エネルギーを集めるため、などいろいろと説明があります。

ウディヤナバンダについては、今日では、吸気後(プーラカ)のクンバカ(アンタラ・クンバカ)の時には、すべきではないとされることが多いです。
吸気後のウディヤナは心臓や目、血圧に強い負担となるなど、健康上のリスクが指摘されているようです。

他には舌を口の奥、ノドの方にしまい込むようにするケチャリ(ケーチャリ、ケーチャリー)ムドラーもあります。
このケチャリ ムドラーのために、舌を長くする作業みたいなマニアックなものがありますが、そこまでは必要ないと思われます。


 私個人的な意見では、ヨーガの火(下丹田の火、内丹・仙道の陽気、チベット密教のツンモ、霊的な火、臍輪火、拙火)を起こす段階(内丹でいう起火)では、ムーラバンダのみでも良いと思ってます。

高藤聡一郎氏の仙道で、陽気を生じさせるために行われる武息は、ムーラバンダのみのムドラーです。

クンバカも無理する必要はないと思われます。

 ウディヤナとジャランダラは、生命エネルギーが中央気道を上昇する段階に深く関わると思います。

関連note:ヨガのスシュムナー(中央気道)について。バルド、空性大楽


ジャランダラ バンダ(ノドのバンダ)

 ジャランダラバンダについて調べると、これはクンバカの最中の血圧、脳圧、眼圧の上昇を抑制したり、目や心臓を保護する効果があるという見解が散見されます。

ジャランダラは頸動脈洞に作用して、血圧上昇を抑える(頸動脈洞反射。舌咽神経ー迷走神経反射)というものです。

このネットでも散見される見解については、はたして仮説なのか、それともエビデンスがとれているのかについては知りません。

実際にこのバンダが、血圧上昇を抑えることが確認されているのかは知りません。
ひょっとすると、そういう効果もあるのかもしれません。

もし実際に血圧上昇を抑えて、身体を保護する効果があるのなら、長めのクンバカをするのなら必要とされるでしょう。


他には、クンバカの最中の姿勢と意識、精神集中を安定させる効果もあるかもしれません。
ムドラーでは、クンバカが長めになることがありますが、ジャランダラをした方がクンバカの最中の心身が安定するのかもしれません。


また神経生理への作用もあると思われます。

ウディヤナは、各臓器があり、神経、神経叢が複雑に張り巡らされている腹部に作用する身体操作です。これは分かりやすいです。ムーラバンダも同様です。

ジャランダラ(及びケチャリ)に関しては、ノド、舌、口蓋付近に関係する脳神経、迷走神経などに作用することが考えられます。


関連note:ヨガ、気功、呼吸法について。瞑想との関係