■第77打～sideM
《77/108：無色界滅締癡 （むしきかいめったいち））＝真理に対する無知》

自分の方がすごいってマウント取りたがるのは男と男みたいな考え方する女だけよ。わたしはそんなのどうでもいい。人と比べなくてもわたしが一番可愛いことなんて知ってるし。
嫌いな人や親しい人にまで勝ちたいなんて、めんどくさくない？わたし、めんどくさいことが一番嫌い。ミスターH、あなたはめんどくさいことが好きそうだけど、それってそんなに大事なこと？　

■第78打～sideH
《78/108：無色界滅締慢（むしきかいめったいまん）＝己の凄さを誇りたがる》

勝負が面倒だなんて思ったことはないね。そもそもマウントとりたいわけじゃないんだ、マダムM。僕は褒められたいとか評価されたくて「勝ちに行く」んじゃない。
勝つべき試合をセッティングされたら、逃げるわけにはいかないだろう？逃げたら負けだ。美しさは嗜好の問題だから僕にはよくわからない。でもいずれにしろ、僕が勝つなら試合に出るべきだろう？引き分けはありえないってことには、同意してもらえるかな？

▪️第79打～sideM
《79/108：無色界滅締疑（むしきかいめったいぎ）＝正しい教えに疑問を持つ》

相変わらずすっごい自信家ね、ミスターH！褒められなくていい単に『勝ちたい』って欲望だけがあるのは正直よくわからないけど。
まあ悪人相手に引き分けはないっていうのは確かにそうでしょうね。でも、人生に絶対の勝ち試合なんてあるのかしら？正しい人間が必ず勝つ、報われるとは限らないんだし、あなたも気をつけないと足元をすくわれるかもよ？　

▪️第80打～sideH
《80/108：無色界滅締邪見（むしきかいめったいじゃけん）＝罪・公徳による果報を信じない》

正しい人間が勝てるなんて思っちゃいないさ、マダムM。この世界は理不尽だらけ。正直に神に従ったものが報われることなんて実に少ない
神は、不公平をまざまざと見せつけてくれる。信じたとて犬死することもあるし、神を踏みにじって安らかな眠りにつく者もいる。神の平等な愛だなんて嘘だ。正しくたって勝ちに行かなくちゃ、負けて人生を終えることになる。惨めな終わり方は僕は嫌いなんだ。

▪️第81打～sideM
《81/108：無色界滅締見取見（むしきかいめったいけんしゅけん）＝間違いを正しいと信じ込む》

神様も信じられないなんて生きてるの大変じゃない？なんだかあなたが気の毒になってきちゃった。惨めな最期を迎えないために勝ち続けなくちゃならないなんて！
わたしは勝ち負けはどうでもいいけど、神様に愛し愛されてると確信できるもの。そんなわたしを神様は絶対裏切らない。だからきっと最期の時だって安らかなはずよ。まあそんなのはもっとずっと先の話だけど。

▪️第82打～sideH
《82/108：無色界道締貪（むしきかいどうたいとん）＝欲求》

そもそも生まれながらに勝っている人間なんているのかな？マダムM、あなたはきっと血筋も家柄身分も見た目も全てにおいて「持ってる」ひとなんだろうね。そして他者と比べて劣っているところがないのだろう。それでいて退屈し、夫に不満があるのに負けてないと言う。僕は聞きたいんだけど、生きてて怖いと思ったことはないのかな？ 僕は、勝ちを取りに行く、勝つべき試合がなかったら…生きたい欲望なんて吹き飛んでしまうかも知れない。

▪️第83打～sideM
《83/108：無色界道締癡（むしきかいどうたいち）＝悪行》

何かを怖いと思ったこと？そんなのあるわけないじゃない……って今までのわたしなら言ったかも。でも、今はそう言い切れないの。ミスターH、ここだけの話だけど聞いてくれる？　
秘密を持つのは楽しいけど、もしそれがバレたらって考えるのは怖いし疲れるのね。わたし、初めて知ったわ。わたしは確かに全てを持って生まれてきた。でも、持っていれば失うこともある。あ～あ、こんなこと気づきたくなかったのに。