【煩悩ピンポン】02/21→02/27
◎プロローグ〜sideM
なんだか知らないけど、これから毎日Hとかいう人と文通しなくちゃいけないんですって。わたし、お手紙書くの苦手なのに。しかも毎回テーマが決められてるなんて超めんどい。だいたいボンノーって何?ボンボンなら知ってるけど。
あーあ、毎日お菓子だけ食べて暮らしたいなあ。
なんて言うとママにまた怒られちゃうけど。
もっとママの娘としての自覚を持ちなさい!って、もう耳タコ。
あー好きな事だけやって生きていきたーい!
◎プロローグ〜sideH
ボンノウについて考えるのは得意だよ。
それが仕事だと言ってもいい。
僕の仕事はボンノウが荒らした現場を調べ、分析し、ボンノウの巣をあきらかにすることだからね。
何言ってるがわからない? それが普通だ。
僕の言ってることを即座に理解できる人間は兄くらいのものだ。
ではボンノウとは何か…について手紙で語り合えって?
いったい誰と? マダムM…ほう。
108回の往復書簡か。おもしろいことになりそうだ。
◎第1打〜sideM 《1/108:苦諦貧(くたいとん)=執着心》わたしの好きなもの? うーんやっぱり綺麗なものと美味しいもの?
きゃーこれカワイイ!欲しい‼︎って思ったら止められないの。
えっ、これがボンノー?
ならボンノーって素敵じゃない。
好きなら手に入れたいと思うのは当然でしょ、ものでも人でもね。
なんで我慢する必要があるの?
お金はあるし、わたしが着飾った方がみんな喜ぶし。もちろん夫もよ。
そうそう、わたしったらこう見えて人妻なの。驚いた? ミスターH?
◎第2打〜sideH 《2/108:苦締瞋(くたいしん)=怒り》
驚いたね。人の妻という立場にありながら煩悩が素敵だと言うとはね。
欲しい気持ちを野放しに、とめどなくさせたらどうなると思う?
人は人を陥れ、騙し、あげく殺しもする。
そうだ、マダムM、あなたのような人間が僕を煩わせるんだ!
欲しい気持ちを留められない人間がしでかす罪には怒りしかわいてこない。
あぁ、腹がたってきた…ん?怒りもまた煩悩だと!
◎第3打~sideM 《3/108:苦諦癡(くたいち)=道理が分からず愚痴を言う》
えっなんでいきなり怒ってるの? 変な人!
わたし、すぐ怒る人って超苦手なんですけどー。ママも先生もそうよ。
わたしがちょっと勉強したくないとかイヤな人と話したくないとか言っただけで悪魔みたいにめっちゃ怒るの。
ワガママ言うんじゃありませんあなたは特別なのですよって。
特別じゃなくていいから、わたしもっと遊びたーい!
◎第4打〜sideH 《4/108:苦締慢(くたいまん)おごり、高ぶり》
特別な人間が、特別じゃなくありたいと駄々をこねるなぞ、
葉巻に生まれて紙煙草になりたいとごねるようなものだと思わないか、マダムM。
恵まれてることに無自覚な人間は「普通がいい」と言う。
まぁわからんでもない。
僕だって普通の頭脳に生まれていれば…が、
普通じゃない頭脳を持って生まれたがために凡庸なる愚か者たちを救う日々だ。
まあしかし…僕のような非凡庸であれば退屈はしない。
◎第5打~sideM 《5/108:苦諦疑(くたいち)=正しい事を疑う》
わたしが恵まれてる?
確かに夫は鈍いけど優しいしお金にも困らない暮らしだけど。
でも、本当にこれが幸せってこと?
言っておくけどミスターH、わたしは望んで結婚したわけじゃないの。
言葉も食事もファッションも何もかも違う外国に連れてこられて、ママのイチオシのメンズと夫婦になっただけ。
それでも私は恵まれてると思うべきなの?
あなたは退屈してないらしいけど、もう私は毎日退屈で死にそう!
(続く)
読みものサイト オカシナスキイ
取材、執筆のためにつかわせていただきます。