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#Web小説の感想とご紹介『第5回、瀬戸晴海さまの長編時代劇小説「太輪」(3部作)を読んで』

初めてのかたは初めまして!ビフといいます。
間が空いてしまいましたが、Web小説の5回目の読書感想を書きました(読み応えのある長編小説の概要をさらりとだけお伝えしています)。

今回は、瀬戸晴海さまのブログから、時代劇小説『太輪』をご紹介させて頂きます。

こちらは、3部作に渡って古代日本の王権の移り変わり(2〜3世紀の約1800年ほど前の女王、卑弥呼[ひみこ]がいた弥生時代から、第3部の5世紀後半から6世紀のヤマト政権ができた古墳時代ごろまでを描いた、時代の幅が広い物語です)を、登場人物らの目線で描かれる大作となっております。

第一部の「太輪」から、第二部の「台燐」、第三部の「泰臨」、と3部作構成で、60万文字超の文章が当時の人たちの生活や、そこから生じるディプリン(試練)、それを乗り越えた先に訪れるひとときの憩いの物語を演じています。

第一部と第二部は、歴史の起こり。そこから第三部へと受け継がれていく血の宿命が、前編で暮らしてきた人たちを想い起こさせますね。

先にも書きましたが、3部は、1部と2部からだいぶ時間の流れが経っていています。

冒頭では、貧しい生口(せいこう、国際的な奴隷身分)のハテヒが、母と別れて大人(たいじん。邪馬台国[やまたいこく]が管轄する、邑[ゆう]と呼ばれる集落で暮らす、貴族身分)の女主人スヒリの元を訪れるところから始まります。

スヒリの家で、カジカと共に、スヒリに仕えることになったハテヒ。やがてスヒリには、壱与(イヨ。壱とはすべてという意味。全てを与えられた子という意味だそうです)が生まれるのですが、赤子には女王の血が受け継がれていました。

母、スヒリが産褥で亡くなったあと、ハテヒはイヨに仕えることに。やがて狗奴国(くなこく)との動乱で女王、卑弥呼は命を落とし、イヨが13歳で成人して女王に即位するところが、第1部のメーンイベントとなっております(イヨが邪馬台国の女王に即位する、月食から日輪が再出現するシーンは、天孫降臨を象徴するような、雅やかかつ厳かな神々しい演出となっています)。

この後、狗奴国の王となったヒミココは、自分が攻め落とした邪馬台国の女王イヨを妻とするのですが、邪馬台国と狗奴国の血の対立は、彼らの子、カサヒヨとヌテを通しても因縁めいた争いとなって紡がれていきます(第2部の主人公はカサヒヨとヌテに加えて、カサヒヨの異母兄弟のチクハとツムハです)。

そして、さらに地方豪族であった大和に敗れた狗奴国は、ヤマト政権にとって代わられます(ここまでが2部)。3部では、ハツセ大王に仕える剣客のオワケと文官ムリテ、弱体化した前玉の邑を救うために彼らの元を訪ねたコノミとヒノミの物語が描かれています。

ざっと振り返ると、このような内容となっております。

この物語は、銅鏡や銅鐸が祭りごとのために造られていた時代のお話です。
聞くところによれば、作者の瀬戸さまは、博物館へおもむかれ、古代の地層から出土した土器や銅剣、生活や祭りごとのために使われていた展示品を拝見されながら、その背景にある、古代に生きた人たちの生活に想いを馳せられたとか(「魏志」倭人伝や稲荷山古墳出土剣銘に関する資料も読み解かれたそうです)。

資料が乏しい中で、よくぞ、ここまでの大作を練り上げられたと、驚くほかありません。

ハテヒとイヨにヒミココ、カサヒヨとヌテにチクハとツムハ、オワケとムリテにコノミとヒノミ、、、

彼らが生きた証が記されたこの作品は、歴史好きのかたのみならず、全年齢対象で、オススメできる名作です。

ぜひ、60万超の大作を読み終えたあとに来る、この感慨、、、。どこか懐かしいような郷愁感と、また彼らと出会ってみたいと想える感情を、より多くの読者さまに知って頂きたくて、ご紹介させて頂きました。

作品のリンクも貼らせて頂きますので、ぜひご一読くださいませ。
https://sthrm126nv.blog.fc2.com/blog-category-2.html


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