キャッシュレスが進むオランダで現金を持たずに旅をしたら・・・
今回、オランダへ渡航するにあたり両替は一切しなかった。
近頃は先進国はもとより東南アジアでもキャッシュレスが進んでいて、一部の国においては、現金お断り、という地域や店舗も見かけるようになった。
日本でもキャッシュレス化はこの数年で格段に進んだけど、現金が使えない店というのはほとんどない。
ほんと、この国の持つ現金信仰の強さというか、現金への信用力の高さには驚かされる。
そんなわけで、キャッシュレスが進むオランダへの旅は、クレジットカード3枚だけを携えて飛び立った。
現金が必要になればATM(クレジットのキャッシング機能)で引き出せばいいしな。という軽い気持ちで。
マネーストーリーは突然に
アムステルダム到着3日目にヒルフェルサムという都市へ移動した私たち。
途中スーツケースのキャスターの車輪のゴムが全部擦り切れてホイールが剥き出しになった状態で駅から15分の石畳の道のりをコロコロではなくザリザリと引きずって歩かねばならず、それもそれで修行だったけどそれ以上の試練が待ち受けているとはこの時は知る由もなかった。
無事目的のAirbnbにも辿り着き、時計を見れば19時前。これから始まる欧州旅の拠点に巣作りをとばかりに買い出しに行き食料品やら日用品を揃えることに。
検索して一番近そうだったのがAlbert Heijn(アルバートハイン)。そう、言わずと知れたオランダ随一のスーパーマーケットだ。
初めてのオランダ現地のスーパー(私の趣味は海外のスーパーマーケット巡り)にテンション爆上げであれもこれもと買い込みいざレジへ・・・!
最近はセルフスキャナーを持って買い回ってる人も多くて、私も次からあれ使いたいな〜なんてぼんやりしながらクレジットカードを渡すと・・・
"We do not accept credit cards here. "
(クレジットカードはここでは使えません)
"NOOOOOOOOOOOOOO!"
(うそ〜〜〜〜〜〜〜ん)
じゃ、じゃあ現金で・・・。と思ったのも束の間、現金が手元にない・・・。困り顔のアジア人に店員さんが「あそこにATMがあるよ」とレジの先にある機械を指差した。
おおぉ、助かった・・・!
ポツンと一台だけ佇むどこか頼りなさげなATMにクレジットを咥えさせ、待つこと数十秒・・・。
金額を選択したところで、”次へ”ボタンを押すと、エラー表示されてカードが戻ってきてしまった。
何度か繰り返すも度重なるエラー。焦る二人のジャパニーズ。
3度目のエラーあたりで、突然黄色のアイツはまさかのリブートを始めてしまい、ついにはWindowsの画面まで出てきた。
しかもWindows7
そこからはうんともすんとも言わなくなり、私たちは仕方なく事情を告げるべく、再びレジに向かい、文字通り棚上げされたカゴの返品をお願いした。
スーパーにある唯一のATMが作動しなかったことで、私たちは生命線を絶たれた気持ちになり、まさかのヨーロッパ現金さがしの旅の幕開けとなった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
打ちひしがれた私たち。
一縷の望みをかけて、道すがら見つけたホテルに飛び込んだ。昔観光都市で見たことのある、”両替所を併設しているレセプション”を強めにイメージをしながら。
バーカウンターを兼ねた受付には、ピアスが似合う坊主のイケメンすぎるお兄ちゃんが陽気に迎えてくれた。
エミネムやん。
私はエミネムに尋ねた。
「ハーイ!ここって為替の両替できる?」
・・・・
「あぁ〜〜やってないYO」(意訳)
・・・
"NOOOOOOOOOOOOOO!"(本日2度目)
頭がクラクラしてきた。
easyにdizzyを感じてる。
うなだれながらエミネムにこれまでのスーパーでのあらましを説明した。
エミネムは言った。
「それは最悪だったね〜〜!確かに郊外のスーパーはクレジット使えないところもあるんかも」
そうなのか。やっぱ旅行者だと現金が必要なシチュエーションもあるんだな・・。
エミネムは続けた。
「あ、でもここから10分歩いたところに大きめのATMがあるよ。そこの機械なら引き出せるんじゃないかな」
えっ、ほんと!!?
このホテルがダメなら翌日に大きな駅まで行って両替所を探そうと思ってi
た私たちとしては、わらをもつかむ思いでそのATMの名前と場所をメモした。
彼は他にも、使えそうなサービスなども教えてくれ、仕事の合間に現れたホテルの客でもない旅行者である私たちにたいそう親切にしてくれた。
そんなエミネムに別れを告げ、googleに案内された場所へ向かった。
一日中移動して何も食べていない胃袋がグゥグゥと鳴り出した。
私はお腹が空くと極端に機嫌が悪くなってしまう。
やばい。このままでは夫に当たり散らしてしまう。
喧嘩を売り始める前にATMを見つけなければ・・・・!!
10分の道のりが倍ほどに感じられるぐらい歩いた頃、黄色い看板が見えた。
まばゆいばかりに輝くATM(ただの黄色い機械)から後光が差している気がした。間違いない、救世主だ。
この辺が海外あるあるだが、数台あるATMのうち1台は既にout of order(故障中)。残る機械のうち、キャッシングができるのは奥にある1台だけのようだった。いつout of orderするか分からない気がしてくる。油断はできない。慎重にいこう。
私は息をひそめ、クレジットカードをそろりそろりと吸い込ませた。気分は和泉元彌だ。いや、どっちかいうと長田だ。いや、どっちでもいい。
ゆっくり間違えないように画面をタッチし、先ほどエラー表示された金額の画面まで辿り着いた。
そして、金額50ユーロを押すと・・・・
ウィ〜〜〜〜〜〜〜ん
出た〜〜〜〜〜〜〜!!!
エミネム〜〜〜〜〜!!!ありがと〜〜〜!!!
50ユーロ札を前に私たちは狂喜乱舞した。
これでしばらくは安泰だし、なくなればまたここに戻ってくればいい。一気に肩の荷が降りた。
小さな町でクレジットカードは使えない。ATMも使えない。改めて備えておくことの大切さを知ったし、何より自分のことを旅慣れていると買い被っていたと反省した。
ちなみにキャッシュレス化が進むオランダのスーパーでクレジットが使えない理由は、こんな感じだそう。
確かに、アムステルダムのような都市以外は欧州域外からの観光客は圧倒的に少なかった。
いわゆる観光地以外を目指す奇特な旅人の皆様には、例えそれがキャッシュレス社会が進む国であったとしても、少額でもいいから現金を携えるか、ATMを見つけ次第早めにゲットしておかれることをおすすめします。
最後までお読みいただきありがとうございました。
おまけ(後日談)
エミネムにこの喜びと興奮を伝えたくなり、数日後夫と一緒に再び件のホテルを訪れた。
彼は私たちのことを覚えていてくれ、
ハーイ!また会えたね!
と爽やかボーイの挨拶をしてくれた。
私はあの日の顛末を身振り手振りを交えて彼に話した。
しかも、彼が教えてくれたATMのそばには、初日訪れたスーパーとは別の店があり、なんとそこではクレジットカードも受け付けてくれたんである。
彼のおかげで現金も手に入ったし、現金が必要ない暮らしも手に入った。疲労困憊していた私たちにとって、彼が教えてくれた情報は、彼が思っている以上に価値があったこと、サービスとしてではなく、人としてとても親切にしてもらったことに感謝していること、などをつらつら伝えた。
彼はそんなふうに自分の行いを褒められるとは予想だにしていなかったらしく、白い肌を赤らめて、そんなふうに言ってくれるなんて優しいね。と返した。
そして、ここからが思い出すと若干恥ずかしいのだが、旅先での思いがけない優しさと心温まる交流に若干酔っていた私は、財布から千円札を取り出し、
「これは日本の現金。あなたがもし日本に来ることがあったら何かのお守りになるから渡しておくね」
と柄にもないことを言ってチップを渡した。
ちなみに、彼の本名がエミネムではなく、”バレンタイン”だったことも私が尻から火を吹きそうなセリフを吐いた一因だと思われる。
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