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「スポーツ×教育」のプロダクトデザイン その①補足

1.初めに

私はこれまで、教育やスポーツ系の事業企画・経営企画を担当してきたのですが、自分のこれまでの経験や事例の調査をする中で感じたこととして、スポーツや教育分野では「プロダクトデザインが出来ているかどうか」が明暗を分けていることが多いのではないか、ということがあります。

自分の思考の整理も含めて、教育分野や教育系のスポーツ事業を「スポーツ×教育」とまとめ、そのプロダクトデザインについて何回かに分けて書きたいと思います。

その①ではそもそものところですが、「スポーツ×教育」のプロダクトとは何か、について書きました。

今回は「スポーツ×教育」のプロダクトデザインをマーケティング視点で考えようと思いましたが、プロダクトについて詳細に考える必要があると思い、マーケティングはまた次回にして、プロダクトが生み出す将来の「差」について深く考えてみます。

2.収入軸 or レアキャリア軸 or 趣味・生活軸

前回は、下図を用いて「スポーツ×教育」のプロダクトについて説明しました。

プロダクト

「プログラムを経験しなかった場合の将来」と「プログラムを経験した場合の将来」の「差」

がプロダクトであると書きました。

この「差」について詳細に考えてみたいと思います。

「スポーツ×教育」事業では、人が(もしくは保護者が)お金を払ってまでつくりたい「差」を提供します。

すなわち顧客からは、提供している「差」がお金を払う価値があるかどうか、という視点で判断されます。

それでは、お金を払ってまで作りたい将来の「差」ってどんなものがあるでしょうか?

私は大きく3つあるのではないか、と感じています。

①将来の収入の「差」
②将来レアなキャリアを過ごしているという「差」
③将来の生活に彩りが加わるという「差」

3.将来の収入の「差」

まず、①の収入の「差」を生む出す事業の例ですが、

(1)平均年収が高い資格の取得(医師等の医療系国家資格、公認会計士、一級建築士、等)

(2)年収が高い職業への就職・転職(高学歴とされる大学への入学支援、公務員試験対策、就職活動対策、転職ノウハウ、起業支援、等)

(3)社会人基礎力の養成(※後述)

(4)副業ノウハウ(セミナー、情報商材、オンラインコミュニティ)

などの内容が考えられます。
(3)の社会人基礎力というのは経済産業省が、

○前に踏み出す力(Action)
○考え抜く力(Thinking)
○チームで働く力(Teamwork)

と定めています。

画像2

画像3

画像4

さらに、この3つの能力をリフレクションしながら目的、学び、統合のバランスをとっていくことが必要と提言されています。

100年時代

話を戻しますが、将来の収入の「差」を生み出す教育プログラムとして挙げた3つについて、具体的にどのようなところが展開しているか、に着目すると以下になります。

(1)平均年収が高い資格の取得・・・専門学校、大学、資格スクール、等

(2)年収が高い職業への就職・転職・・・学習塾、高校(進学校やグローバル教育などの特色のある学校)、大学、留学、部活動、就活・転職関連情報産業、起業関連情報産業、等

(3)社会人基礎力の養成・・・高校、大学、部活動、留学、研修、オンラインコミュニティ、本、スポーツスクール、等

(4)副業ノウハウ・・・セミナー、本、Youtube、オンラインコミュニティ、情報商材、等

4.将来レアなキャリアを過ごしているという「差」

次にレアなキャリアを過ごしているという「差」について考えたいと思います。

レアなキャリアには

成功すれば大きな収入が得られるが、成功しなければあまり収入が得られない

という特徴があるかと思います。

例としては

スポーツ選手
俳優
ミュージシャン
芸術家
漫画家
お笑い芸人
Youtuber
宗教家

などが考えられるでしょう。

実際にこの種類の教育プログラムを展開している事例としては以下のようなところがあるでしょう。

スポーツ系・・・プロクラブユース、高校・大学部活動、等
音楽系・・・音大、専門学校、等
芸術系・・・美大、専門学校、等
演劇系・・・タレント養成スクール、等
お笑い系・・・芸人養成スクール、等
Youtuber・・・セミナー、情報商材、等

個人的にはこのレアキャリアに関する教育プログラムを成功させるために必要なことは、2つあると思います。

まず1つ目は、ホンモノ(できれば世界トップクラス)に触れる機会をどれだけ多くプログラムに盛り込めるか、です。

すでにそのキャリアで歩んでいる人がどれだけ飛びぬけているか、を実感することでプログラム受講生は「トップクラスと比べて自分には何が足りないのか」「自分はどうしたらよいのか」「自分の特徴はなにか」を真剣に考える機会となります。

将来レアなキャリアでやっていくためには、この自己分析を行い、自分のキャリアに対するイメージを解像度高くイメージできるようになることが必須です。

この機会がないプログラムの場合、お金を払う価値があると思われにくくなります。


そして2つ目は、プログラムを受けた者全員が目指したキャリアを歩んでいけるわけではないので、目指したキャリアに進めなかった時でも今後の人生にとって役に立つ内容を担保しているか、です。

例えば大学の部活動強豪校を取り上げましょう。

チーム全員がプロになれるわけではありません。実業団に進める学生がいたとしても、比率としてはそれほど多くないはずです。
また、プロになれたとしても、プロとして長くやっていける保証もありません。

だからこそ、プロになれなかった時でも、プロになってもすぐに引退した時でも、部活動の経験が今後の人生で生きるように、部活動をデザインすることが必要です。

一例として、部活動の中で前述で取り上げた、「社会人基礎力の養成」を全員が得られるような部活動に作り上げる、ということが考えられます。「社会人基礎力の養成」を行おうとした場合に、スポーツは非常に有効なツールだと思いますので相性も良いでしょう。

言い換えれば、強豪の大学の部活動は
①将来レアなキャリアを過ごしているという「差」
②将来の収入の「差」(社会人基礎力の養成)

の両方を組み込んだスポーツ×教育のプロダクトとしてデザインする必要がある、ということです。

他の場合でも目指したキャリアに進めなかった時でも今後の人生にとって役に立つ内容を担保しているか、は非常に重要になってくるかと思います。


5.将来の生活に彩りが加わるという「差」

最後の生活の彩りの「差」ですが、言葉にするとわかりにくくなるのですが、基本的には趣味に関することです。例えば以下のものです。

○料理
○歌
○楽器
○裁縫
○ハンドメイド
○スポーツ
○将棋
○外国語

これらは○○教室という形で開催されたり、ブログ、Youtubeなどでもプログラムがありますね。

この種の事業においてプログラムを考える上で、個人的に大事だと思うポイントは以下です。

①しっかりとした理論の説明があるか。
②①の説明がわかりやすいか。
③実践する場があるか。
④③の実践に対して受講者のレベルにあったフィードバックを迅速に受けることができるか。
⑤④のフィードバックは正確でポジティブか。
⑥成果発表の場があるか。
⑦受講者同士の交流を促進する仕掛けがあるか。
⑧受講者の意見を反映する仕組みがあるか。

順に説明します。
①・②についてまず、プログラム受講者は「上手く出来ている人がなぜ上手いのか」を知りたいと思っています。
そして「なるほど、自分も練習すれば出来るかも」という期待を持たせてあげることが大事ですし、そもそもしっかりとした理論が無ければ質高く教えてあげることはできませんよね。

③・④・⑤について。教えてもらったことを試してみて、出来たか、出来なければどこが悪かったかをチェックしてもらうことによって受講者は上達していきます。講師が受講者にどのようなフィードバックを与えるかが講師の腕の見せ所です。ポジティブで正確なフィードバックを受講者が多く受ければ上達を実感できて動機付けになるとともに、さらに上手くなってやろうという上達意欲が生まれます。

⑥について。やはり上手くなってきた受講者は自分の腕前を披露したくなります。良い結果となれば嬉しいですし、悪い結果となれば悔しいので、日々の練習に磨きがかかります。そこでの結果を目指していくことによって継続しようという動機が高まります。趣味としては非常に良い状態ですね。

⑦について。同じ趣味を持った仲間との交流は、趣味自体の向上と同じくらい重要です。このプログラムの目的は「将来の生活の彩りの向上」と最初に書きました。「趣味の腕前の向上」だけではないのです。趣味を通じて受講者の生活の彩りを向上させる、ということを意識して腕前の向上と仲間との交流の両輪を回していくイメージです。

⑧について。プログラムを発展させていくには講師と受講者という一方向の関係ではなく、ともにプログラムを良くしていこう、という関係になっていくことが重要です。そのためには受講者の意見が日々のプログラムに反映されるような仕掛けが必要です。定期的なアンケートや、交流会での意見の吸い上げ、受講者が企画するイベントなど、受講者に合わせて工夫していくことが大事かと思います。


6.次回こそマーケティング視点

マーケティング視点で書くまでにプロダクトが生み出す将来の「差」の補足をしました。

次回はマーケティング視点で書きたいと思います。

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