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別れの後に消えていく痕跡

誰かとお付き合いをして別れる。
すると、互いの中にあった相手の痕跡が時間と共に薄れていく。

いろんなところで少しずつ、人によっては一気に消えていく。
SNSのアイコンや投稿、スマートフォンに入ってる写真、プレゼントでもらったものとあげたもの、一緒に出かけた先で買ったものなど。

共に時間を過ごしてきた証がそこらかしこにある。
意図的に消えていくこともあれば、自然と次第に消えていくこともある。


なぜこんな話をするかというと、直近で私自信が別れたからだ。
と言っても、私から別れ話を切り出したのだけれどもね。

20代も半ばになり、周りは結婚だの出産だので他の誰から見ても分かりやすい人生の転換期を迎えている。
日々SNSでそんな光景を目にし、友人とのやりとりでもトピックとして扱うことが増えた。
そういう時期なのだろう。

2年とちょっと付き合った以前の恋人と別れるまでは強い結婚願望があったものの、その人と別れてからは縁があればそのうち結婚という流れにもいずれあるだろう。そう思うようになり、特にこれといって考えていなかった。考えないようにしてたところもある。
だけど、頻繁に連絡を取り合う友人と時々結婚の話になる(互いに未婚)。その友人がよく結婚したいと言うものだから、私も結婚ってどんなだろう?と興味が膨らんできて、結婚するなら30歳までにしたいなと、なんとなく漠然と思った。
30歳までに…今私は20代後半。タイムリミットは5年以下。それまでに結婚したいな、結婚できるなと思える人と出会って付き合い、結婚に至る。逆算的に考えたら時間がない。
そして、先日まで付き合っていた人とは新幹線でないと会いに行けないくらいの物理的距離。物理的距離が縮まりそうにない人と結婚を見据えることは難しい気がした。
あと、1年と少しいても中々縮まりきらない心理的距離間にモヤモヤもしていた。このまま一緒にいていいのだろうかと段々と不安と不満が募っていった。
そして別れを切り出すことを決めた。
いろんなことを沢山考えて考えて考えて考えた末に結論が出たことを伝えると納得してもらえた。
泣くまいと堪えてくれていたけど、最後の最後には泣いてしまった。無理もない。寧ろ、すぐ泣くと思っていたから、最後まで堪えてくれていただけでも有難い。『花束みたいな恋をした』の最後のように、楽しかった1日を過ごした日にお別れをしたかった。最後は楽しく後味スッキリ終わりたかった。その方が互いに前に進みやすいだろうと思った。
自分の為にも相手の為にも。

そんなこんなで別れたわけだが、別れたからといってすぐに連絡先を断ち切るわけではない。私の家に置きっぱなしの相手のモノがあるし、それをどうするのかを聞く必要があるが、相手としてもすぐにいろんな答えを出せるわけでもないからじっくり考えて決めたら連絡してと言ってある。
私から連絡を断ち切ることはしない。別れたからといって嫌いになるわけでもないし、別れた相手に不幸のどん底に落ちてほしいとも思わない。私ができなかったことをしてくれる誰かの下で幸せを手にしてほしいと心の底から願う。これは過去にお付き合いしてきた相手全員に思うことだ(何人いるんだっけな)。

そんなこんなでまだSNS等全部つながったまま。だけど、相手のアイコンが私のとった写真ではなくなっていたり、Instagramの私と出かけた投稿が既に消えていたりした。私と過ごした時間の痕跡がみるみる消えていく。まるでなかったかのようになっていく。
自分自身もそうだし、友人のInstagramを見ていても別れた途端に全部消えている様は心が痛くなる。過ごしてきた時間は消えないのにSNSからは消えていく。どうにもこうにも耐えられなくて私の場合は消さずにそのまま、もしくはアーカイブに入っている。私は今回の相手と過ごした時の投稿も消さないだろう。楽しかった気持ちに嘘はないし、その時の気持ちは残しておきたい。
きっと私からも目に見えた痕跡やオーラは消えてしまうのかもしれないけれど、私の記憶装置とは別の外部記憶装置という名のSNSには残り続ける。残しておく。
今後、もし消すことがあるとすれば、次に付き合う相手が余程私の過去に嫌悪感を示し、その嫌悪感を尊重するくらいに好きだと思える相手に出会えたら消すだろう。まあ、そもそも過去あっての今なので過去を強烈に否定してくるような人と一緒に居たいと思うことがきっと私にはない。どんな過去でも1ピース違っていたら今の私ではないかもしれない。そう思うと、これまでの全てに対して良かったと思える。

別れたことが本当に良かったのか、別れた後で不安になり、後悔をするのではないかという恐れもあるが、今は喪失感や空白感によるものだろう。だからこれでいいのだ。私のような不誠実な人に思いを馳せ続けるよりもきっと相手にとっては違う相手との方がいいはずだ。
そう言い聞かせながら、失われていく痕跡を噛みしめて私は今日もウイスキーを飲む。


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