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名前を付けた日

10年前。僕たちADXがまだ、「ライフスタイル工房」という名前だったころ。
当時の社員5人でノルウェーへ旅した。

目的は、野生のトナカイ観測所「Reindeer Pavilion」の建築を見ること。
オスロの街でレンタカーを借りて、向かった。
道中にはたくさんの湖に、岩肌が剥き出しの山々。
ノルウェーの雄大な自然が迎えてくれた。

直方体のReindeer Pavilionの外観は、土地に馴染むコールテン鋼というサビ材と、4面のうち1面はトナカイを見るための大きなガラス窓。
内部には、木舟を加工するためのNCルーターで加工した有機的でアイコニックなベンチが、松の角材をベースにつくられている。

周囲の自然と共生する、美しい建築の姿だった。
「こんな建築をつくりたい」と強く思った。

建築を手がけたのは「Snøhetta(スノーヘッタ)」。
ノルウェー国内やヨーロッパに留まらず、世界中でプロジェクトを推進している建築チームだ。

別々に設計されることが多かった建築とランドスケープを一緒に考えること。
そして、異なる専門領域・文化・背景を持つメンバーが集うチームであることが特徴だ。
さらに調べていると、Snøhettaという名前は、メンバーの地元、ノルウェーある山の名前にちなんで付けられていることが分かった。

自然に溶け込むような、普遍的な建築をつくりたい。その思いを名前で表現する。
帰国してすぐ、会社の名前を、「ADX」に改めた。
僕らが常にオフィスからその姿を仰ぎ、大切にしている故郷の山、「安達太良山(ADATARA-YAMA)」にちなんで。

10年経って、今週のこと。
僕はSnøhettaとミーティングをするべくノルウェーを再訪した。
最初のプレゼンテーションで、ADXの名前の由来を話した。
拙い英語だったが、Snøhettaのメンバーは、「NICE!」と笑顔で言ってくれた。

会社名もプロダクトの名前も、名前は誰かの願いそのもの。
悩んだり迷った時、自分たちが進むべき道を見失いそうな時、原点を思い出させてくれる。

僕は今日、誕生したばかりの新しい命に、名前を付けた。
彼が生きる未来が、美しい自然に彩られたものでありますように。

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