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【セルフヒーリング】グリーフケア〜バタフライハグとハグの癒し効果

在宅介護のゴールとは?

それは死と寄り添うこと。

死に寄り添い、無事に介護を終えたあとに残されるのは喪失感です。

喪失とは死別以外にも恋人との別れや、離婚、ペットの死、そして大事にしていたものが壊れたりと様々なシーンで現れる現象ですが、とりわけ死別に関しての喪失はとてつもないダメージを受ける場合もあり、グリーフケアと呼ばれる喪失感を援助するためのケアが存在しています。

是非、悲観の12プロセスを是非覚えておいてください。

実体験

筆者はヤングケアラーとして20代から在宅介護に関わっていますが、30代に入り、人生で初めての身内の死に寄り添いました。

2021年の10月に長年在宅介護をしていた祖母を看取り、喪失感との戦いをしていましたが、翌年の2022年4月には本当に数える程の親友と言える調律師の友達が癌で早すぎる旅立ちとなりました。

この短期間で二人も大切な人を亡くした筆者は喪失感を埋められずにいました。

Butterfly Hug(バタフライハグ)

そんな埋められない喪失感をどうにかしたいともがき苦しむ中で、様々なグリーフケアに関する本や研究を探しました。

その中でも実体験としてとても即効性があると感じたバタフライハグというものをシェアしたいと思います。

1998年にルキナ・アルティガス(Lucina Artigas)博士とイグナシオ・ジャレーロ(Ignacio Jarero)博士によって考案されたバタフライハグ。

元々は心的外傷後ストレス障害(PTSD)をケアするために考案されました。

EMDRから派生した手法

EMDR(Eye Movement Desensitization and Reprocessing)は、トラウマやストレスを引き起こす出来事の影響を和らげるために開発された心理療法の一種。
1980年代にアメリカの臨床心理士であるフランシーン・シャピロ氏によって開発されました。

現在でもEMDRは、PTSD(心的外傷後ストレス障害)や不安、うつ病、過食症など、様々な心理的疾患に対して有効な治療法として知られています。

★注意★
ただし、EMDRはトレーニングを受けた専門家、または専門機関に相談することが必要です。
バタフライハグは一人で実践してOKです!

バタフライハグの方法

1、人目があっても気にしない。

もちろん、自分自身が安心しリラックスできる環境で行うのも癒し効果が感じられますが、たとえ外出中であっても、授業中であっても、どんな時でも何か不安な気持ちを感じたり、ネガティブな感情を感じた時、喪失感から身体が震えるなどの現象を感じる時はいつでもどこでも実践することができます。

その際、もし人の目があったとしても気にしないでください。

このバタフライハグのワークは誰にも迷惑をかけません。

あなたの心を守ること以外に気にするべきことはなにもありません。

2、自分自身の前で手を交差させハグ。

右手は左肩へ、左手は右肩へ。

手を胸の前で交差させて自分自身をハグしてあげます。

交差させることがポイントです。

優しく、誰かを癒したいという気持ちでハグしてあげてください。

3、肩を交互に優しくさする。

左右交互に肩を優しくさすってあげましょう。

両肩などバリエーションをつけてさすってあげます。

左右交互にゆっくりとタッピングしたりしてみましょう。

効果

バタフライハグは、1998年、メキシコのハリケーンポーリンの生存者のために実践され多くの人がその効果を実感し、広まっていきました。

個人的にも非常に即効性があり、効果が高いと感じます。

それもそのはず、ハグをするという行為自体に癒し効果があったんです。

ここから先はハグに関する癒し効果で有名な論文をまとめていきたいと思います。

ハグに関する研究を調べてみた

ハグはストレス緩和に効果がある?

出典:Does hugging provide stress-buffering social support? A study of susceptibility to upper respiratory infection and illness

この実験ではハグが(バタフライハグではない)ストレス緩和効果があるかどうかを調査。

研究に参加した被験者は、毎日10日間、日々のストレスに対して意図的に避けないように指示が与えられました。
その後、一部の被験者には、毎日10秒間のハグが提供されます。

研究の結果、ハグを受けた被験者は、ハグを受けていない被験者よりも、ストレスによる疾患のリスクが低かったことが示されました。

加えてハグを受けた被験者では、ストレスによる感染症の症状が軽減されていたという報告もありました。

この研究では、ハグが一定のストレス緩和効果があることを示唆しています。

恋人同士のスキンシップで満足度が高いのは?

出典:Romantic Physical Affection Types and Relationship Satisfaction

この研究では、恋人同士による肉体的な愛情表現の種類が、お互いの満足度にどのような影響を与えるかについて調査されました。

研究に参加したカップルは、身体的接触としてキス、ハグ、ハンドホールディングなど、さまざまな肉体的な愛情表現について評価してもらいました。

その結果、ハグとハンドホールディングは、お互いの満足度に正の影響を与えることが示されました。

一方で、キスやその他身体的接触などのよりエロティックな愛情表現については、恋人関係の満足度という視点では直接的な影響を与えなかったことが分かりました。

研究者らは、ハグやハンドホールディングなどの愛情表現が、恋人関係の満足度に重要な役割を果たすことを示唆しているとコメントしています。

ハグは乳幼児の心拍数にどのように影響するのか?

乳幼児に関する関連研究:The Power of a Hug: Caressing Touch and Heart Rate in Infants

この研究では、11人の生後2〜3ヶ月の赤ちゃんを対象とし、3種類の状況での心拍数の変化を測定しました。

1つ目は、親が自分の赤ちゃんを抱っこする「カレッシングタッチ」の状況。

2つ目は、赤ちゃんが親に抱っこされた状態で静かに寝ている状況。

そして最後は、赤ちゃんが自分自身で座っている状況。

これらの状況で心拍数の変化を測定した結果、カレッシングタッチが赤ちゃんの心拍数を低下させ、赤ちゃんが親に抱かれている状態でも同様の効果が見られました。

一方で赤ちゃんが自分で座っている場合は、心拍数が高いままでした。

この研究ではハグや身体的な接触が乳幼児の心拍数を下げることができることを示しています。
これは赤ちゃんのストレスを軽減するために効果的な方法であることを示唆しています。

その他の乳幼児への影響

東ヨーロッパの孤児院では、幼児が触れられたりハグを受けることはめったにありません。
多くの場合、1 日のほとんどをベビーベッドの中で過ごします。
ケアは最小限の対人関係で効率的に構築されているのが日常となっています。
これらの子供たちは、認知発達障害や、運動能力発達の遅れなど様々な問題に直面することがわかっています。

Genetic Psychology Monographsにも掲載された研究では、1日20分間の対人接触を10週間受けた孤児院に収容された乳児は、受けなかった乳児よりも発達評価のスコアが高いことがわかっています。

俗にいいう愛情ホルモンと呼ばれるオキシトシンの影響が強いと言われています。

【まとめ】ハグの重要性について

孤児院での発達評価の研究では、すべてのハグや接触が影響を与えるわけではないとされています。

愛情と優しさを持って接するハグに大きな効果があることがわかっています。

在宅介護でも手に触れる、そしてハグをするということを心がけてみてはいかがでしょうか。

手当という治療

手当というのは非常に治療効果の高い民間療法であると個人的には思っています。

筆者の在宅介護での経験では訪問看護師の中には、ずっとゴム手袋をしている方と、わざわざ付け替えてまで手袋を外して患部に手を当てている看護師と2通りあるということを観測しました。

わざわざゴム手袋を外すというこの行為は立派な民間療法『手当』という治療をしてくれているわけです。

要介護5の状態でも寝返りや背中の換気時にしっかり手を入れて、ハグしてあげてください。

肌と肌が触れ合うというのは人間にとってとても大切な行為であるということを在宅介護の現場で学びました。

ストレスホルモン

人は日常でストレスを感じると、CRF(Cortictropin Releasing Factor)というストレスホルモンを分泌します。
このCRFの過剰分泌は、うつ病や不安障害の発症にも関連することが報告されています。

これらのストレスホルモンと因果関係があるとされているのが先述した愛情ホルモンと呼ばれるオキシトシン。

私が行った実験では、オキシトシンを注入したマウスと、オキシトシンを分泌させないようにしたマウスを狭い部屋に入れて比較したところ、後者は、暴れまわったり下痢をしたりと、体に異変が生じました。
ストレス過多になった時、人間に見られる症状と同じ症状がマウスにも見られたのです。
一方、オキシトシンを注入したマウスにはそれらの症状が出ない。
実験を行う中で、オキシトシンがストレスともなんらかの因果関係があることが見えてきました。

引用:EMIRA〜高橋徳医師

高橋先生のコメントによると、誰かへの感謝や思いやりを頭に浮かべるだけでオキシトシンが分泌されることもわかっているそうです。

釈迦をはじめ、多くの哲学者が感謝、思いやり、そして愛を大切にしていることと繋がってくるのではないでしょうか。

現代では身近な人にありがとうと伝えることは、簡単そうに見えてとても難しいことかもしれません。

ありがとうと伝えることもまた、オキシトシンを分泌することに繋がり、結果的に自分自身のグリーフケアに繋がるのではないでしょうか。

大切な人と癒し合うため、そしてセルフヒーリングとしてのハグを日常の癒しに取り入れてみたはいかがでしょうか。

スージング・タッチ

セルフコンパッションというヒーリングのジャンルの世界ではスージングタッチという名前で紹介されていることもあります。

先述したバタフライハグに加えて自分で自分に触れてあげる行為を指します。

  • 片手を胸に当てる

  • 両手を胸に当てる

  • 優しく胸を撫でる

  • 胸の上で片手のこぶしをもう片方の手でつつみこむ

  • 片手を胸に、片手をおなかに置く

  • 両手で顔をやさしくさする

  • 膝を両手で包み込む

などなど、バタフライハグと同様の効果が期待できるスージングタッチも試してみてください。