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〈ネタにできる古典(11)〉たのしみは(橘曙覧の歌から)

 古典入門本で取り上げられることも多い橘曙覧。その「独楽吟」は原文のままで今なお僕らに刺さります。全52首のうちの最初の10首を示しましょう。

⚫︎たのしみは艸(くさ)のいほりの莚(むしろ)敷きひとりこころを静めをるとき
⚫︎たのしみはすびつのもとにうち倒れゆすり起こすも知らで寝し時
⚫︎たのしみは珍しき書(ふみ)人にかり始め一ひらひろげたる時
⚫︎たのしみは紙をひろげてとる筆の思ひの外に能くかけし時
⚫︎たのしみは百日(ももか)ひねれど成らぬ歌のふとおもしろく出できぬる時
⚫︎たのしみは妻子(めこ)むつまじくうちつどひ頭ならべて物をくふ時
⚫︎たのしみは物をかかせて善(よ)き価(あたひ)惜しみげもなく人のくれし時
⚫︎たのしみは空暖かにうち晴(は)れし春秋(はるあき)の日に出(い)でありく時
⚫︎たのしみは朝おきいでて昨日(きのふ)まで無(な)かりし花の咲ける見る時
⚫︎たのしみは心にうかぶはかなごと思ひつづけて煙艸(たばこ)すふとき

福井市橘曙覧記念文学館HPより

 自分でも作ってみたくなりますね。

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