僕悪2

『僕は悪者。』 12


   一二
俺の平穏な日々は終わった。学校では誰とも会話をせずに、誰からも無視され、時にはバイキンとして扱われ、グループを作る時には最後まで決まって残され、昼休みは顔を突っ伏して寝たふりをして、掃除がないときは真っ先に教室を飛び出して一目散に逃げるように下校し、頭の中では同級生のアバズレどもをレイプし、ヤリチンどものちんこを刈り取り、豚ゴミどもをミンチにして腐らせ、そして全員を機関銃で撃ち殺すという妄想を楽しむことだけを延々と繰り返し、孤独な心を慰め、心の平穏を保ち続ける日々は終わった。
今では俺は日々、片桐美梨との会話を楽しんだ。体育や実験などで離れてしまう時は寂しかったが昼休みには決まって席をつけて片桐美梨は弁当を俺はいつもの焼きそばパンを食べた。片桐美梨と食べる昼飯の焼きそばパンはいつもと同じはずなのにいつも以上に美味しかった。
二人で楽しそうにしていると、同級生が足を俺や片桐美梨のテーブルに引っ掛けて弁当を床に落としては気持ちの悪い笑みを浮かべることもあったが、俺たちはそんなこと気にしなかった。
そして授業が終わると、どちらも掃除当番がない時は一緒に学校を出た。そして途中まで一緒に帰って公園まで行くと片桐美梨は右に、俺は左にお互い手を振って帰って行った。
しばらくそんな日々が続いた。
俺は自分の部屋のベッドに横になって、毎日眺めているが全く愛着のわかない天井を眺めた。今までは土曜日が大好きだったというのに、今では片桐美梨に会えない我慢の日だった。
下の階では父親がくだらないワイドショーを見て貴重な休日の時間を無駄に過ごしているはずだ。
母親は今日もパートだ。土曜日の方がサービス業は混むから人手が必要なのだと言っていた。まあ嘘ではないのだろうが、父親と同じ空間にいるのも嫌なのだろう。
妹はどこかのヤリチンの家にやられに行っている。今頃喘ぎ声をあげているのだろう。うっかりコンドームに穴が空いていて妊娠でもすれば、つまらない中産階級の我が家にとって面白いイベントになるのだけれど。
俺はというと、人生で初めて土曜日だというのに学校に行きたくなった。
学校に行けばまた片桐美梨に会うことができる。教科書を見せて、休み時間には話をする。
そういえばいつも片桐美梨から話しかけていた。今度は俺から話しかけよう。月曜日には教科書を持っているかもしれない。だけれど、まあそれでも隣の席なのだから、休み時間には話しかけよう。お昼も一緒に食べよう。
ああ、楽しみだ。片桐美梨。片桐美梨。片桐美梨。片桐美梨。片桐美梨。片桐美梨。片桐美梨。片桐美梨。片桐美梨。片桐美梨。片桐美梨。片桐美梨。片桐美梨。片桐美梨。片桐美梨。片桐美梨。片桐美梨。片桐美梨。片桐美梨。片桐美梨。片桐美梨。片桐美梨。片桐美梨。片桐美梨。片桐美梨。片桐美梨。片桐美梨。片桐美梨。片桐美梨。片桐美梨。片桐美梨。片桐美梨。片桐美梨。
俺の頭の中は彼女のことでいっぱいだった。
だが、不思議と彼女のことを想像してオナニーをしようとは思えなかった。もちろん彼女とセックスはしたい。彼女の尻を揉み、胸に顔を埋めて、俺のちんぽをぶち込みたい。
だが、うまく彼女を想像してオナニーをすることはできなかった。
俺にとって彼女はオナニーのオカズにするには憚られる高貴な存在だった。
俺は一旦安藤夏美をオカズにして二回オナニーをした。
片桐美梨とは付き合いたいが、肉欲は安藤夏美に対しての方が強いのかもしれない。
ああ、全く俺ってやつはなんてやつなんだ。
オナニーをした後、猛烈な劣等感に襲われた。こんな風に上から目線だと片桐美梨に嫌われてしまう。
そうしたら、そうしたら、俺はまた「孤独」になってしまう。
俺は目を閉じた。眠りたかった。眠れば時間は早く過ぎていく。そうすれば月曜日になる。ハッピーマンデーが訪れる。
俺は目を閉じた。


(つづく)

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