ナカユビ

文学と音楽と

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  • さよなら、ライオン

    仕事にうんざりして、なんとなーく自殺しようとしたつぼみが目を覚ますと病院。横にはフェルトでできたライオンの面を被った女子高生。彼女に導かれるようにして隣の病室で寝ていた老人の最後の願いをかなえたり、男子高校生をいじめから救い出したりと、ドタバタな旅が始まる。そして最後にはつぼみはこの旅の意味を知ることになる。

  • inspired by music

    音楽を聴いて思い浮かんだ物語を短編小説にしています。音楽から受ける印象は人それぞれ、好きな曲で僕とあなたで思い浮かべる物語が違っていても許してね。

  • 『僕は悪者。』

    高校生の「俺」には友達がいない。クラスメイトからは無視され気持ち悪がられていた。「俺」は「俺」のことを無視するクラスメイトのことを頭の中でいたぶり殺すことで精神の均衡をなんとか保つ毎日。そんな惨めな人生を自殺により幕を引こうと考えるが最後にクラスの中心人物を一人殺してから死ぬことにする。しかしそこに一人の転校生が現れた。その女子生徒は「俺」がイジメられていることを悟り「俺」に手を差し伸べるが、「俺」を助けたことで転校生はイジメの標的になる。転校生は自殺未遂をするほど追い込まれる。彼女の自殺未遂により「俺」はクラスメイト殺しを行動に移すことを決める。しかし決行当日、思いも寄らないところから訃報が届く。それは「俺」とともにイジメられていた田口が自殺したというものだった。

最近の記事

超短編小説『平成 僕は生き残れそうです。』

inspired by 折坂悠太 『平成』 僕が平成の間に成し遂げたことは何もない。 平成が始まって5年がたった年に僕は生まれた。だから平成が終わるときには26歳でそれはつまり、ほどほど若者でほどほど大人だっていうことだ。 26歳の年齢っていうのは、ほどほどだと思う。26歳までに何かを成し遂げた人はたくさんいる。 メジャーデビューした歌手がいれば、オリンピックの金メダリストもいる。それも一つの競技じゃない。二連覇している人だっている。MLBの選手もいれば、NBAの選手

    • 小説『随分遠くまで来たね。』

      inspired by 鈴木真海子 『Contact』 「どうっていうわけでもないのよ。」と彼女が言った。彼女の目の前には海が広がっていた。僕と彼女はゴツゴツとした岩場に座っていた。足元でカサカサと何かが動く音がした。気味が悪いなと僕は思った。節がたくさんあって虫ともエビとも言えないような生き物が僕の足元で動いているのかと思うとそこから一刻も早く立ち去りたかった。でも彼女は座ったままだった。 「帰ろうか。」彼女がそう続けた。「ここまで来たけどさ、やっぱりだからどうってい

      • 『僕は悪者。』 かんたん梗概&リンク集

        梗概 高校生の「俺」には友達がいない。クラスメイトからは無視され気持ち悪がられていた。「俺」は「俺」のことを無視するクラスメイトのことを頭の中でいたぶり殺すことで精神の均衡をなんとか保つ毎日。そんな惨めな人生を自殺により幕を引こうと考えるが最後にクラスの中心人物を一人殺してから死ぬことにする。しかしそこに一人の転校生が現れた。その女子生徒は「俺」がイジメられていることを悟り「俺」に手を差し伸べるが、「俺」を助けたことで転校生はイジメの標的になる。転校生は自殺未遂をするほど追

        • 『僕は悪者。』 了

             一七 父親は仕事、母親はパート、妹はセックスをしに出かけていて、相変わらず誰もいない家に帰ると俺はテレビをつけた。四時少し前のテレビ番組はあまりにもクソだった。 どのチャンネルでもニュースはやっていない。やっているのは昔に放送されたクソつまらない。ゲボドラマの再放送ばかりだ。 どうせ主人公が女とイチャイチャしたりしょんぼりしたりを繰り返す、人間の表面だけをなぞった内容なのだ。  それは出演している俳優や女優のクソつまらない顔からもわかった。ただのイケメン。ただの美女だ。

        超短編小説『平成 僕は生き残れそうです。』

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        • さよなら、ライオン
          9本
        • inspired by music
          2本
        • 『僕は悪者。』
          18本

        記事

          『僕は悪者。』 16

              一六 翌日も俺は当たり前のように登校した。そうだと言うのに大山は休んでいた。 「おい、お前放課後東江公園に来いよ。逃げんなよ。」鈴木が朝一番で俺のところへ来てそう言ったきり、俺はいつもの安定した誰からも無視された存在になった。 俺は鈴木を三回頭の中で殺した。おそらく大山やその仲間たちに俺はリンチされようとしているのだろう。いいだろう。あんだけ怖い目に合わせておいてまだ俺がどれだけの悪者なのか知らないらしい。 ガソリンやらナイフやらをついに使う時がきた。 俺の気持ちは高

          『僕は悪者。』 16

          『僕は悪者。』 15

             一五 俺は複数の豚ゴミに囲まれて、生徒指導室にいた。ありとあらゆる教師が来ては俺を怒鳴りつけたり、睨んだりする。 だが、俺の心は校門から出て放課後の自由さにホッとした時のように落ち着いていた。 俺は確信していた。この俺を叱りつけている豚ゴミよりも俺の方が正しい。 俺の方が圧倒的に正しいことをしている。 俺は叱る豚ゴミの目を見つめ続けた。だが、豚ゴミは俺と目を合わせようとはしない。 言いたいことはたくさんあったが、俺は何も言わなかった。俺が正しいと言ったところで、豚ゴミは

          『僕は悪者。』 15

          『僕は悪者。』 14

            一四 翌週の月曜日。俺はいつもと同じように学校へ出かけた。相変わらず隣の席は開いたままだ。 だが、彼女は死んでいない。学校に来ることができなくても、死んでいるよりはずっとマシだ。 救急車が彼女を連れて行き、俺は後から来た警察の取り調べを受けた。なぜこんなところにいたのかしつこく聞かれた。俺はナイフを持っていることが見つかったら大変だから、内心はションベンがちびりそうなほどびびった。 だが、彼女と待ち合わせをしていたがその時間に来なかったので、連絡先も知らないから通り道の公

          『僕は悪者。』 14

          『僕は悪者。』 13

             一三 しかし、実際に月曜になり、学校に行き、一時間目が始まる頃には俺の心はいつも以上のブルーになった。 来ないのだ、片桐美梨が。来ない。学校に。不登校になってしまったのだろうか?転校してしまったのだろうか?いや、ただの風邪かもしれない。俺はソワソワした心を落ち着けようと深呼吸をした。 しかし、火曜日も水曜日も木曜日もそして金曜が来ても彼女は来なかった。 俺は先週の土曜と同じように自分のベッドに横になって、毎日見ているつまらない天井を眺めた。 オナニーをする気は全く起きな

          『僕は悪者。』 13

          『僕は悪者。』 12

             一二 俺の平穏な日々は終わった。学校では誰とも会話をせずに、誰からも無視され、時にはバイキンとして扱われ、グループを作る時には最後まで決まって残され、昼休みは顔を突っ伏して寝たふりをして、掃除がないときは真っ先に教室を飛び出して一目散に逃げるように下校し、頭の中では同級生のアバズレどもをレイプし、ヤリチンどものちんこを刈り取り、豚ゴミどもをミンチにして腐らせ、そして全員を機関銃で撃ち殺すという妄想を楽しむことだけを延々と繰り返し、孤独な心を慰め、心の平穏を保ち続ける日々

          『僕は悪者。』 12

          『僕は悪者。』 11

            https://note.mu/kotobatoto/n/n1d2eb9ea446c   一一 翌日はほとんどいつもと同じ金曜日だった。ただ少し違うのは俺には会話相手ができたことだ。そう、それは片桐美梨だった。 彼女は一〇分休みも、そして昼休みも俺の隣に座り続けた。今日は他の女子生徒から見限られたのか朝から誰も片桐美梨に話しかけに来なかった。 まるで、転校生など来なかったかのように淡々と日常が流れ始めた。 「ねえ、あなたは結構しっかりと無視されてるね。」 「しっかり?

          『僕は悪者。』 11

          『僕は悪者。』⑩

              一〇 俺は帰りのホームルームが終わると飛び出すように学校を出た。 彼女に話しかけられる前に立ち去りたかった。今日は特別教室の掃除当番だったが、そんなことはどうでもよかった。 俺の今までは匪賊でありながらも安定した生活を送ることが一つの目標だったし、そうして暮らして来た。何度踏まれて、引っこ抜かれて除草剤を蒔かれようが、黙々と根を張り続ける雑草のような日々を俺は送って来た。だが、片桐美梨の登場で全て変わってしまった。 俺の安定した日々がたったの一日でたったの一言でグラグ

          『僕は悪者。』⑩

          『僕は悪者。』⑨

           https://note.mu/kotobatoto/n/n951beeb04637 ↑前回    九 「ねえ、イジメられてるんでしょ。私そんなの気にしないから。」 俺は目をパチクリさせた。あまりにもそれは唐突な出来事だった。 青天の霹靂だった。藪から出た蛇だった。 俺は恐ろしくなった。突然に俺の心の一番奥底の柔らかい場所を生ぬるい手で撫でられたようだった。なんと答えればいいのか。俺にはわからなかった。 日頃でさえ著しく人間と会話することは少ない。 母親や父親と会話する

          『僕は悪者。』⑨

          『僕は悪者。』⑧

          ↑前回   八 だが計画というのはなかなか思うようには進まない。 計画の実行日のたった一日前。一人の転校生が来た。 名前を片桐美梨といったその女は控えめに言っても、たまらなく可愛かった。すらりと通った鼻に、ぱっちり二重の目。唇はぽっくりとしていて、ふんわりと柔らかな雰囲気を纏っていた。 高校での転校は滅多にあることではない。だが、その女は来た。父親の転勤だか何だか理由は知らないがやって来てしまった。 そいつは俺の隣の田口の席に座らされた(田口の席は空いていたとはいえ、また勇

          『僕は悪者。』⑧

          『僕は悪者。』⑦

             七 退屈になったな。俺は田口がいなくなりぽっかりと空いた席を眺めた。いつかは不登校になるとは思っていたがこんなにも早いとは。田口の親は理解がいい親なのかもしれない。 もし高校が合わなくても、親が理解のある親ならフリースクールにでもいくことはできる。不登校向けの塾やら家庭教師もあるのだから学業は学校に行かなくてもそれぞれの努力次第でそれほど落ち込むことはないだろう。それどころか、豚ゴミの授業を聞いている時間を効率的な勉学に使えれば向上することすらあるだろう。 だが、普通は

          『僕は悪者。』⑦

          『僕は悪者。』⑥

               六 翌日も田口は健気にも学校に来た。相談した担任の豚ゴミが何か対応してくれるとでも期待したのかもしれない。 だが、もちろん豚ゴミは何もしない。この学校には先生や教師と呼べるような人物は皆無で、全員骨ごとミンチにして豚の餌にして出て来た糞を畑の肥料にするぐらいでしか世の中に貢献することができないような豚ゴミだ。 だから田口は今日も一人で過ごすことになった。 俺が話しかけてやってもよかった。なんせ席は隣なのだから。だが、田口からしたら俺の存在だけが唯一冷静を保っていら

          『僕は悪者。』⑥

          『僕は悪者。』⑤

            五 翌日、哀れな田口は健気にも学校に来た。俺は相変わらず、誰にも認識されることもなくただ田口を観察した。幸い彼の席は俺の隣だった。 彼はいつも通りに学校に来ると、いつも通りのグループのところに行き会話に参加しようとした。だが、無視される。 それからも悲惨だ。何度か色々な人に話しかけてみることを試みるが全ての人に無視される。 ああ、哀れだ。哀れだ、田口。お前は何もわかっていない。いじめってのはそういうことだ。お前がどういう風に感じているのか俺には自分のことのようにわかる。

          『僕は悪者。』⑤