加納朋子「ななつのこ」

とても優しい雰囲気のミステリー
連作短編集だが 最後の話を読むとひとつのストーリーがふわっとできあがってくる

文中に出てくる若山牧水の短歌 

白鳥は哀しからずや空の青 海のあをにも染まずただよふ

真っ白な白鳥の凛とした姿が目に浮かぶ 静かな強さを感じる歌がいい

作中の少年はやてのセリフ 

海が青く見えるのは…空を映しているからなんだ!

科学的にはホントは違うけど こういう子どもの感性っていいなと思う

そして秀逸は「白いたんぽぽ」

たんぽぽの色を白く塗った少女は 人よりすこぉし脆くて感受性が鋭く 大勢でわいわいやっている外側で独りポツンと座っていたりする
周りのオトナは家庭環境のせいで健全な子どもに育っていないと決め付け 白いたんぽぽなんかないと否定する
主人公の駒子はそんな繊細な少女の心に寄り添い 白いたんぽぽを見てみたいという
花を通して少女と駒子は心を通わせていく 

明日咲く花の色は、きっと誰にもわからないのね

あなたは白いたんぽぽの花に似ていますね。ありふれているようで、本当は滅多に出会うことができない、つまらない既成概念や価値観や常識を、その存在だけで控えめに、あっさりと否定してしまう。

(2008.02.11)

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