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山田詠美「学問」

ひとりっきりの秘密は、役に立たない秘密なんだ。

学校の帰り ふたりで寄り道した蓮華畑 
蓮華を編んで作った紐のはしっこを お互いが握りしめて歩いた

ふたりの間をつなげていたのは蓮華の紐だけじゃない
裏山での出会い 社宅でのお祭り 生徒会室でのふたりきりの会話

秘密の共有という甘美な時間のひとつひとつは 
お互いを確かにつないでる
結びつきを証明するものは何もない きっと他人にはわかるまい
でも つなぐ何か
名前さえないそのつながりを ふたりは感じ とても大切にしているのがわかる

恋ってのは 堕ちるものだと思ってたけど
本当は 囚われるものかもしれない

見えない蓮華の紐をふたりで持ち合う そんな感じなのかもしれないと思う

学校で教えてくれないことはいっぱいある

自分の身体の感覚や感情を頼りに 自分で学ぶのが生きるってこと

囚われたり 放したり 結んだり 断ち切ったり 葬り去ったり
生きるってのは そのくりかえし
そうして 自分なりに まっとうして死ぬのが 生きるってことなんだろなと思う


(2012.08.19)

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