見出し画像

味マルジュウのこと

多くの山形県民が愛し続ける味マルジュウをご存知だろうか?
私は福島→宮城なので馴染みがないのだけど山形では誰もが知る存在らしい。
味マルジュウって結局なんなの?と直球を投げても『味マルジュウは味マルジュウだよ』と言われてしまう。
揺るがないポジションに鎮座してる味マルジュウ。知らない人間的には唯一無二の味マルジュウと言われてもちんぷんかんぷんである。

秋のビッグイベント『芋煮』にも味マルジュウは必須のようだ。
私の地元では『芋煮』はなかった。福島から宮城に移り住んだ初年度の秋に芋煮会のお知らせが来た時は(…芋を煮る…?)と、全く知らない風習で戸惑った。

芋煮とは秋に屋外でBBQなど楽しみながら芋の汁を作ることである。私の住んでる宮城は『豚肉』で『味噌仕立て』が支持されている。
芋煮は山形だと『牛肉』の『醤油仕立て』になり、宮城山形は毎年秋に『芋煮戦争』が勃発する。

醤油仕立ての山形芋煮に味マルジュウはかかせない。そう、味マルジュウは一言で説明するなら『だし醤油』
インターネットで味マルジュウの解説を読めるこの時代に生まれてよかった。
『味マルジュウは味マルジュウ』というひと言を伝言ゲームのように受け取り、しかも取扱店が限られていて私の普段買い物する店では売っていないので実物を手にすることもなかなかできずちょっとしたミステリーと思っていた。
山形だと比較的どこでも買えるようだ。

そして味マルジュウを去年やっとお迎えした。
とても嬉しい。味マルジュウを知った今ならわかる。めちゃくちゃ旨みと甘味が強くて一般的なだし醤油とは別物である。これを醤油と言うのは少し違う気持ちになる。
肉じゃがなどの煮物は味マルジュウだけで美味しいし、濃度を調節すると麺つゆとしても使える。
醤油風万能だし調味たれ、みたいな感覚なのだ。

どんなに情報を仕入れてもやはり体感しないとわからないことばかりだな、と思う。
芋煮も味マルジュウも。愛され続けている土地の文化を知ることは驚きや発見がある。

私は山形も宮城も敵に回したとしても、豚肉味噌仕立ての芋煮の隠し味に味マルジュウを入れたい。
力強いだしと甘さでコクが出て美味しいと思う。おうち簡単和食の頼もしいサポート役、味マルジュウを手に穏やかに繰り返される毎日のささやかな幸せを思う。

芋を始めとした根菜やネギ、お肉とこんにゃく。
具材たっぷりの芋煮とおにぎりお漬物。
そんな派手じゃないけど毎日でも飽きない食卓の風景が好きだ。
芋煮や豚汁はそれが主役なので他の主菜がなくても成立するのがうれしい。個人的には必ずごぼうを入れたいことと味付けの際にお砂糖を足してほっこりと味に深みを出すのが好き
仕上げにちょろっとごま油、お好みで七味や一味を振って、さぁどうぞ。

きっとこれから先も終わりのない芋煮戦争は続くのだろう。それぞれの正義を振りかざして芋煮を作り続けるとても気の抜ける戦争ではあるが、また来年の秋まで一旦の休戦。
長い東北の冬、私はおうち芋煮をひっそり楽しみながら春を待とうと思う。


貴重なサポートはnoteの記事をまとめたZINEなどの印刷代・画材代等に使わせていただきます!