4か月寝かせた十三角関係を読んだら超感動した

昨夜「十三角関係」を読み終えた

この本を購入した理由としてはひとえにカバーを私が敬愛する藤田和日郎先生が書いていると知ったからだ

カバーの絵が好きだ
中心にいるおそらく探偵役なのだろう大柄で身なりの汚い男と、逆さにつるされた女性の首
そして取り囲むように描かれた容疑者や被害者になるだろう老若男女…
これらがすべて藤田先生の絵で描かれているのだ

もうこの時点で文庫本代払ってしまっていいや!と思ったので、中身はどうでもよかった

いやほんと申し訳ないんだけど、表紙で満足しちゃってるし中身は相当昔の作品だしで正直期待はしてなかったんすよ…
山田風太郎って名前は聞くけど他の作品も読んだことがなかったんでどれだけすごいかわかってなかったんですよ

しかも1956年の作品でしょう?俺に面白さがわかるのかなぁ…まぁ面白くなかったら今でないか…読んでみよ

なんだよこれすげぇ面白いじゃないか

遊郭のマダムが、むごたらしいバラバラの死体で発見された。店の女たちにも慕われる評判のいいマダムが、なぜ殺されたのか。事件直前に訪れた客たちを調べても、いずれも犯人には辿り着けない。その謎を、風太郎現代ミステリー唯一のシリーズ探偵の「飲んだくれ産科医」荊木歓喜が解き明かす!
(あらすじから引用)

あらすじを置いてみたけどこれがまぁ読んでみると面白いこと
マダムは本当に店の全員から好かれてるし、家族からも幼馴染からも好かれている
誰から聞いてもいい評価しか聞かないし、誰もマダムを殺す動機が無い
そんなマダムが少し目を離した間にバラバラにされて店の看板に吊るされていた
しかしマダムは殺されるちょっと前まで客の対応をしていたし、客の滞在時間も短すぎて人をバラバラにする時間なんてない

・なぜマダムは殺されたのか?
・誰が犯人なのか?
・犯人が分かったとして、短時間でどうやって死体をバラバラにしたのか?

この辺を解き明かす話なんだけど
もう面白くない?

ホワイダニット、フーダニット、ハウダニットが絡み合って、しかし最後にはすっきりとわかりやすく
(ここが大事なんだけど)完全にフェアに犯人が明かされる

最後の犯人明かされるところとか読んでて鳥肌というか、足先からビリビリ感動が登ってくる感覚を味わったよ


読んでるときの気持ちの流れ



あーはいはいこういう系ね

思ったよりマダム慕われてんな…

あれ?これ無理くね?

あぁそうやれば…ん?まだ結構ページが…

おぉ!こういうかんじか…あれ?まだ…

……まじか?

まじかまじかまじかうわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!

この最後のうわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!が最高に素晴らしかった

しかもこれが全部作中に提示されてるフェアなものなのがいいんすよ…
最終章でじつはあいつは!みたいにならない
言われてみれば!!!!っていう感覚がこういうミステリで一番おいしいところで、そこの味付けがホント最高

しかもこれ1956年に書かれてんだぜ?!

2022の今でも楽しめるのは「倫理」っていう当時と共通するところがあるからなのかな
「人の弱さ」「正しさ」「魔が差す」みたいな、なんなら私たちにも覚えがあるようなことでキャラクターが構成されているから、
「こいつホント最悪だな!!…でもちょっと気持ちはわかっちゃう」
っていうバランスを成立させている
(まぁ俺がダメ人間だからダメな方に共感してるだけかもだけど)

十三角関係
良質なミステリとしても
正しく生きられない弱い人たちの話としても
藤田先生の超かっこいい表紙の文庫本としても
とてもいい本なのでぜひ読んでほしい

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