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老子

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『老子』に関する記事をまとめています。
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記事一覧

社会的な評価よりも、まずは自分の健康を大切にしよう(『老子』十三章)

今回取り上げるのは『老子』十三章からの言葉。 大きな心配ごとに悩むのは、我々に身体があるからこそである、という意味。 これは「悩むのは身体が原因だ」と言っているわけではありません。 むしろその逆で、「身体があるからこそ悩むことができる」と言っています。 つまり、すべての基礎は身体なのだから、何よりもまずは自分の健康を大事にしなさい、ということですね。 この章の表現は少し分かりにくいところがあるので、順番に見ていきましょう。 まず老子は、世の人々は寵愛や屈辱に関して

今こそ自分の素朴な気持ちを大事にしよう(『老子』十九章)

今回取り上げるのは『老子』十九章からの言葉。 飾らないありのままの自分を外に表現し、伐り出したばかりの材木のような純朴さを心に抱け、という意味。 「樸」は「朴」と同じ。 つまり、素朴さを大事にしなさい、ということですね。 文明が発達し、様々な知識が巷に溢れるようになると、どうしても要領の良し悪しが注目されるようになります。 要領が良ければ物事の要点やコツを短時間で押さえることができ、うまく立ち回って物事をスムーズに処理することができるからです。 そういった人は生産

自分を深く理解することが人間力を高める(『老子』三十三章)

今回取り上げるのは『老子』三十三章からの言葉。 他人を理解している人には知恵があり、自分を理解している人には聡明さがある、という意味。 ここでは、後半の「自ら知る者は明なり」の方がメインの主張になります。 つまり、自分自身を知ることが一番大事、ということですね。 『老子』に掲載されている言葉には、自分の在り方について論じたものが多くあります。 これは、老子が無為自然のあるがままの姿を理想とし、世界そのものと一つになることを目指していたところから来るものです。 仙人

問題の芽は小さいうちに摘んでおこう(『老子』六十三章)

今回取り上げるのは『老子』六十三章からの言葉。 難しい問題は易しいうちに考え、大きい問題は小さいうちに対応する、という意味。 つまり、問題が悪化する前に早めに対応しなさい、ということですね。 老子は、どんな問題も小さなことから始まると考えています。 最初は簡単な問題でも、そのまま放置しておくことで状況が悪化し、気づいた時には手遅れになっていたりするものです。 「面倒くさいから、後で対応しよう」 「不安だけど、きっと大丈夫でしょ」 みなさんも、そんなふうに考えていた

礼を守ることよりも、自身の行動に真心がこもっているかが一番大事(『老子』三十八章)

今回取り上げるのは『老子』三十八章からの言葉。 礼というのは、真心がこもっていない時に行われるものであって、むしろ喧嘩の原因である、という意味。 儒家の礼を批判した言葉ですね。 儒家の礼は真心からくる行動のことです。 礼儀やマナーも、形だけ行うのではなく、目の前の相手に対する敬意がこもっていなければ意味がありません。 始めに真心があって、それを表すために礼があるんですね。 それでは、どうして礼が喧嘩の原因になるのでしょうか? それは、人間が自分の行動に対して何か

成功したときこそ、身の引き際を見極めよう(『老子』九章)

今回取り上げるのは『老子』九章からの言葉。 功績を上げたら身を引く、これこそが自然の道理に則った方法である、という意味。 処世訓についてのアドバイスです。 つまり、仕事で功績を上げたらいつまでもしがみついたりせず、さっさと手放してしまうのが良い、ということですね。 せっかくの功績を手放してしまうのは少し勿体無い気もしてしまいますが、老子はなぜそのようなアドバイスをしているのでしょうか? 老子は次のように言っています。 富を得たり、高い地位を手に入れたりして驕り高ぶ

借り物の力を自分自身の力だと勘違いしてはいけない(『老子』五十六章)

今回取り上げるのは『老子』五十六章からの言葉。 権力を得たからといって偉ぶったり、卑屈になったりしてはならない、という意味。 つまり、立派な人物は初心を忘れず、外部から与えられる地位や権力に振り回されない、ということですね。 役職があがったり、部下が増えたりすると、以前よりもできることが増えてきます。 大きな金額を動かすようになるかもしれませんし、組織の一部を任されるようになるかもしれません。 人によっては優越感に浸ってしまうこともあるでしょう。 しかし、地位や権

小さな一歩を着実に積み重ねるということ(『老子』六十四章)

今回取り上げるのは『老子』六十四章からの言葉。 九層の高台も一杯の土を積み重ねることで起こり、千里の遠い道も足元の一歩から始まる、という意味。 一見すると「継続は力なり」ということを言っているだけのように見えますが、ここではそれ以上に「慎重に着実に前に進み続けること」の大切さを語っています。 つまり、優れた人物は何かを成し遂げるために大きなことや突拍子もないことをやるのではなく、目の前の小さな一歩を着実に積み重ねることで目標を達成しているのだ、ということですね。 私た

完成していないからこそ、人は無限の可能性に満ちている(『老子』四十一章)

今回取り上げるのは『老子』四十一章からの言葉。 偉大な器が完成するには途方も無い時間がかかる、という意味。 日本では「大器晩成」という四字熟語で知られています。 しかし、もともとの『老子』を読むと現代とは意味が異なっていることが分かります。 原文の文脈に合わせるのであれば、これは無限の可能性について述べた言葉。 つまり、偉大な器はいつまでも完成しないものだが、永遠に未完成だからこそ偉大であり、無限の可能性に満ちているのだ、という意味です。 この四十一章は「道」のあ

身の回りを整理して、新しい物を手にいれる喜びを目一杯感じよう(『老子』二十二章)

今回取り上げるのは『老子』二十二章からの言葉。 物が少ない人は、かえって物を手にいれる楽しみを味わうことができる、という意味。 あまりに所有物が多いと、新しい物を手に入れてもあまり嬉しくなりません。 物を得ることに慣れすぎてしまい、最初の頃の感動が薄れてしまうからです。 しかし、所有物が少なければ、新しい物を手に入れるごとに嬉しい気持ちになります。 つまり、持っている物が少ないからこそ、新しい物を手に入れた時の感動を味わうことができる、ということですね。 ミニマリ

小さな満足を積み重ねると毎日を生きやすくなる(『老子』三十二章)

今回取り上げるのは『老子』三十二章からの言葉。 止まることをわきまえていれば、それによって危険から逃れることができるのである、という意味。 つまり、自分の身を大事にしたいのであれば、欲望を抑えて満足することを心がけなさい、ということですね。 人間は何らかの欲望に従って行動しています。 欲望は大きなエネルギーとなりますが、一方で比較や嫉妬の原因にもなりがちです。 もっと成長したい! → あの人と比べて自分は全然ダメだな・・・ もっと有名になりたい! → あの人ばっか

無理をするのはここぞという時まで取っておいてほしい(『老子』二十三章)

今回取り上げるのは『老子』二十三章からの言葉。 音声の無い状態こそが自然なのである、という意味。 比喩表現なのでちょっと分かりにくいですが、端的に言うと「無理をするな」ということです。 物がぶつかる音や擦れる音、引っ掻く音などをイメージしてください。 いわゆるノイズです。 ノイズは何かと何かが触れ合い、摩擦が起きた時に生まれます。 つまり、無理をしている状態なわけです。 人間もこれと同じです。 無理をするということは、どこかで不自然な摩擦が生じているということ

結局は何事もコツコツ継続することが大事(『老子』六十四章)

今回取り上げるのは『老子』六十四章からの言葉。 千里の道も足元の一歩から始まる、という意味。 『老子』の中でも特に分かりやすい言葉だと思います。 大きな目標を達成するには、まずは身近なところから始めなさいということですね。 一足飛びに何かを成し遂げることはとても難しいです。 いきなり大成功するとか、有名になるとか。 そういったことはそれこそ特別な才能がなければ厳しいでしょう。 私も「自分には特別な才能があるに違いない」と夢を見ていた時期がありました。 でも、大

何事も、無理せず自分のペースで続けることが大事(『老子』二十四章)

今回取り上げるのは『老子』二十四章からの言葉。 大股で歩く人は遠くまで歩き続けることはできない、という意味。 大股で歩くということは、普段の歩き方よりも無理をしているわけです。 無理は長続きしません。 誰しも、自分に合った歩幅というものがあります。 他の人と比べて歩幅が小さかったとしても、無理さえしていなければ、歩き続けることさえできれば、他人よりも遠くへ行けるのです。 大事なのは自分のペースを守ること。 この二十四章では他にも以下のように言っています。 爪先