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自分を深く理解することが人間力を高める(『老子』三十三章)

今回取り上げるのは『老子』三十三章からの言葉。

人を知る者は智なり。自ら知る者は明なり。
(読み:ヒトをシるモノはチなり。ミズカらシるモノはメイなり)

『老子』三十三章

他人を理解している人には知恵があり、自分を理解している人には聡明さがある、という意味。

ここでは、後半の「自ら知る者は明なり」の方がメインの主張になります。

つまり、自分自身を知ることが一番大事、ということですね。


『老子』に掲載されている言葉には、自分の在り方について論じたものが多くあります。

これは、老子が無為自然のあるがままの姿を理想とし、世界そのものと一つになることを目指していたところから来るものです。

仙人を例にするとイメージしやすいと思うのですが、漫画や昔話で出てくるような仙人は俗世間のことには無関心ですよね。

むしろ、自身の心と向き合い、霞を食べながら世界と一つになって過ごしているようなイメージがあると思います。

これは、孔子が仁や礼など、他者との関係性を中心として論理を展開したのと大きく異なっている点です。

そんな老子ですから、他人を理解することそのものには重点を置きません。

それよりも、自分自身を深く理解することを大切にしています。

例えば、これらの言葉。

足ることを知る者は富めり
(読み:タることをシるモノはトめり)

『老子』三十三章

柔弱は剛強に勝つ
(読み:ジュウジャクはゴウキョウにカつ)

『老子』三十六章

1つ目は、欲望を抑えて満足することを理解している人は心が豊かになる、という意味。

2つ目は、自分の弱さを理解しているからこそ強いものに打ち勝つことができる、という意味です。

どちらも、自身を深く理解していることが前提となっていますよね。

このように、『老子』の思想の根底には「自分自身を深く理解することの大切さ」があるのです。


もちろん、老子もただ単に「自分自身を理解しなさい」と言っていたわけではありません。

自分を深く理解することには、数多くのメリットがあります。

『老子』から読み取れるものとしては、以下のようなものが挙げられるでしょうか。

  • 気持ちや感情をコントロールできる

  • 自身の状況を正確に把握して対策を練ることができる

  • 自分のやりたいことが見つかる

  • 余計な恥をかかない

  • 面倒な争いを避けることができる

  • 他人と比較する思考から逃れることができる

どれも社会で生きていく上で役に立つメリットばかりですよね。

自己理解の大切さがよく分かります。

気になった方は『老子』や私の過去記事などを見ていただきたいのですが、

私はこれらに加えて、「相手を理解することにつながる」こともメリットだと思っています。

例えば、皆様の周囲に、他人のことばかり見ていて、自分のことが全く見えていない人はいませんか?

そのような人は他人のやることには色々と口出ししてくるのに、肝心の自分のやることについては無頓着だったり、やったとしてもミスが多かったりするもの。

私も前職では振り回されることが多かったです……。

逆に、自分のことが理解できている人は行動もスマートですし、他人にも優しく対応してくれることが多いように感じます。

人間力といいますか、人としての賢さは、そういった部分に現れるのかもしれません。

おそらく、自分のことが理解できている人は、自然と「自分だったらどのようにして欲しいか?」を考えて行動できるのだと思います。

自分を深く理解しているからこそ、相手の立場に立って考えることができるのでしょう。

自分を深く理解することは、他人を理解することにもつながるのです。

私も自分のことを理解するように努め、人間力のある賢い社会人を目指したいなと思います。

人を知る者は智なり。自ら知る者は明なり。
(読み:ヒトをシるモノはチなり。ミズカらシるモノはメイなり)

『老子』三十三章

自分を理解することが一番大事、という言葉をご紹介しました。

自己理解には数多くのメリットがあります。

自分らしい生き方をするためにも、定期的に内省を行って、自分への理解を深めていきたいですね。


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