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歴史からの学びが未来の自分の助けとなる(『詩経』大雅・文王篇)

今回取り上げるのは『詩経』大雅・文王篇からの言葉。

宜しく殷に鑑みるべし、駿命易からず
(読み:ヨロしくインにカンガみるべし、シュンメイヤスからず)

『詩経』大雅・文王篇

殷王朝の歴史をしっかりと鑑みるべきだ、運命を知ることは容易ではないのだから、という意味。

駿命とは天命のこと。
現代的には運命と捉えて良いでしょう。

つまり、運命を予測するのは難しいので、過去の歴史から成功や失敗を学びなさい、ということですね。


『詩経』は中国最古の詩集で、おおよそ周王朝のはじめから戦国時代半ばくらいまでの詩が収録されています。

殷王朝を打倒して周王朝が始まるのは前1046年頃、そして戦国時代は前5世紀〜前221年までなので、ザッと見積もっても700〜800年くらいに渡る作品が収録されている超大作です。

この期間に存在した王朝は周だけなので、周王朝の治世で暮らしていた人々からすると、一つ前の殷王朝が「歴史」として意識されやすいわけですね。

実際、戦国時代より少し前の時代を生きた孔子も、たびたび殷王朝について言及しています。

その殷王朝は前17世紀頃から始まり、周に滅ぼされる前1046年頃までおよそ600年に渡り存続していたわけなのですが、そんな殷王朝でさえも新興の周に滅ぼされる日が来るのです。

盤石だと、当たり前だと思われていたものが、ある日突然に崩壊する。

それはとても恐ろしい体験だったことでしょう。

殷王朝を滅ぼした側である周王朝の人々も、未来は誰にも予測できないのだと実感したのだと思います。

「勝って兜の緒を締めよ」ではないですが、決して油断してはいけないということで詠われたのが、今回の詩なのかもしれません。

未来は予測できませんが、過去の過ちから学びを得ることはできます。

孔子も温故知新を唱えていますが、歴史を知ることは、今の私たちの未来を知ることでもあるのです。

歴史は医学や科学などの実学とは異なり、日常生活に直接的に役立つ場面は一見少ないように感じるかもしれませんが、私たちが人生で迷ったり、悩んだりしたときに道標となってくれる重要な存在だと思います。

もしも皆さんが何かに迷い悩んでいるときには、歴史から過去を知ることで新たな気づきを得て、これからの自分の選択に役立てることができるでしょう。

また、自分の心が苦しんでいるときには、過去の人物の行動や考え方を知ることで、心の支えとなるかもしれません。

歴史とは、そういう目に見えない形で私たちを支えてくれる存在なのです。


最後に余談ですが、実はこの『詩経』は、日本の歴史にも大きな影響を与えています。

例えば「維新」という言葉は『詩経』が由来です。

もしも後世に『詩経』が伝わっていなかったら、

もしも明治の英傑たちが『詩経』を読んでいなかったら、

もしかしたら明治維新も別の形に変わっていたのかもしれませんね。

宜しく殷に鑑みるべし、駿命易からず
(読み:ヨロしくインにカンガみるべし、シュンメイヤスからず)

『詩経』大雅・文王篇

運命を予測するのは難しいので、過去の歴史から成功や失敗を学びなさい、という言葉をご紹介しました。

歴史を学ぶ意味が話題になることがありますが、個人的には歴史はとても重要な科目だと思っています。

中国古典を通じて、皆様に歴史にも興味を持っていただけるように、これからも様々な記事をお届けしてまいりますね。


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