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君がいつか忘れてしまっても。

キミちゃんは未熟児だった。ミルクの食いつきも悪く、年子のお姉ちゃんと比べてもずいぶん小さくて、お母さんはいつも心配していた。

食が細くて好き嫌いの激しいキミちゃんのために、手間暇かけて食事を拵える。けれどキミちゃんは体を仰け反らせて盛大にちゃぶ台返し。お母さんは笑おうと努めるも目には涙が滲んでいた。

"どうして食べてくれないの。上の子はよく食べるのに"


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振袖を着るキミちゃんが、ふっくらとした顔でカメラに笑顔を向ける。お母さん泣かないでよ、ってキミちゃんが言う。そりゃ泣くよ。お母さんはね、必死の思いでここまで育ててきたんだよ。私だって泣きそうだよ。


春になったらキミちゃんは地元を離れ、東京の大学にいく。覚えていないかもしれないけれど、私は覚えているよ。キミちゃんがお腹いっぱい食べて元気に育つように、お母さんが奮闘してきた20年を。そこには、たくさんの苦労とその何倍もの幸せがあったんだよ。



サポートとても嬉しいです。凹んだ時や、人の幸せを素直に喜べない”ひねくれ期”に、心を丸くしてくれるようなものにあてさせていただきます。先日、ティラミスと珈琲を頂きました。なんだか少し、心が優しくなれた気がします。