金曜ビター倶楽部

赤いタンバリンを鳴らす君。

"あ〜好きなんだろうな、あいつのこと"

わかりやすいほど目をハートにして、彼女はあの日、赤いタンバリンを叩いていた。あいつが歌う曲に合わせて、チャカチャカと楽しそうに撃っていた。

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この春入社した彼女は、僕らより7年後輩にあたる眩し過ぎる新入社員の一人だった。いつもニコニコしていて、周りをよく見てる。誰よりも努力してるくせに、そんなそぶりは一切見せない。謙虚で芯のある子だなと感心してい

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あの日の続きが本当に終わる

東京の裏通り、個人経営のバーのカウンター席で、おでんをつつきながらワイングラスを揺らす。
隣に座っているのははたちやそこらの頃好きだった人で、なんなら当時の私が物凄く羨ましがるようなシチュエーションだ。
だけど二人で笑いながらふざけて話す時間とは裏腹に、私は彼のことを好きだったことすら、単なる自己愛の曲がった結果なように感じていた。
きっと彼とはもう会わないし、会えないし、会いたいと思わない。

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私だけが知る、約束の行末。

「35歳になってもお互い独身だったら、その時は結婚しようか」 

未練を残しながら別れたカップルの、別れ際のありふれた口約束。本気になんてしていないけれど、心の片隅にずっしりと居座っている、あの日の約束。

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彼と出会ったのは、23歳の春だった。女ばかりの職場で出会いもなく、職場と家の往復ばかりの日々だと嘆く私に、みかねた友達が引き合わせてくれた。友達が職場の同期や大学時代の友達を集

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夏になるとビールが美味しそうに見えます!呑めませんが!
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初恋ジンジャエール【短編小説】【あの夏に乾杯】

黄緑色の瓶の、曲線が好きだった。
栓を開けてそのまま、瓶に口をつけて飲むのが好きだった。
飲んだ後の辛さと痺れを我慢するのが、ちょっとかっこいいと思ってた。

「飲んでみ」

恭輔にそう言われて、栞は瓶に顔を近づける。
鼻の奥を突く強い香りにコンマ何秒か怯んだ気もするけれど、好奇心が勝ってすぐに口をつけた。するりと入ってきた液体は、口の中でシュワッと勢いよく膨らんだかと思うとすぐにパチパチと細かに

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オオゼキnoteの奇跡と軌跡〜明日、今日よりももっとオオゼキが好きになる〜

夏休みも後半戦に差し掛かる8月中旬となりました。みなさま、いかがお過ごしですか。こんにちは、まつしまです。

以前、noteを通じて告知させていただきました【オオゼキイベント〜オオゼキからの贈り物8.25〜】も間近に迫って参りました。そこで、これまでにオオゼキに関するnoteを多数の方が投稿してくださっていたので(ありがとうございます)(立場)、本noteで改めてまとめさせて頂きたいと思っておりま

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ちっとも謎めいてなくたっていいから、ずっと私だけのヒーローでいて。

私にとって、彼はヒーローだった。
つまんない日々を極彩色に染めてくれた、優しくて、謎めいたヒーロー。

「謎が多いほうが面白くない?知っていくのはゆっくりでいいんだよ」

そう言った彼は、本当に謎の多い人だった。
仕事もなかなか教えてくれなかったし、名前を聞いてもはぐらかされた。いつも飄々としていて、広い空を漂う雲みたいに掴みどころがなかった。

知りたくて、知りたくて、もっと知りたくて。

のめ

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飛ぶ虫が大の苦手なので、アースジェットはお守りです。
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生命線の88分の3

手のひらをじっと見てみる。

長い生命線。
心なしか前より長くなったような気がする。
そういえば私、88歳まで生きると決めたんだった。

ああ、まだ半分。
会えない、話せないこれからが、こんなにある。

血の繋がった家族ができてから、誰かと離れる寂しさから己をリカバリーする方法を忘れてしまった。

だから嫌だったんだ。
必要以上に家族以外の誰かと親しくなること。
いつかこんな日がきて、寂しい気持ち

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ありがとうございます! 幸せになる5秒前!4、3、2、1!
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いつか、一緒に。

今年の花火大会夏は圧巻だった。新調した撫子柄の浴衣を彼は大袈裟に褒めてくれた。もっと二人で余韻に浸ればよかった。

でも、この時期のわたしは大人げなく拗ねている。あれこれ理由をつけて、デートをそそくさと切り上げた。

浴衣を脱いで、ひとつにまとめた髪をほどく。窓から入ってくる風は、昼間の熱気を帯びたままだ。開けたばかりの缶ビールはたっぷりの汗をかいて、早くもぬるくなってしまっている。

来週のこと

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さよなら涙、また会う日まで。

うわぁぁぁぁぁぁん!

転んでひざ小僧を擦りむいたこどものように、部屋でひとり、声を出して泣いた。蒸した部屋に、冷たい炭酸の泡がシュワシュワと音を立て、じわじわと部屋の温度と混ざっていく。缶の底には水滴が溜まっていった。まるで一緒に泣いているみたいだ。

泣かずにはいられなかった、というわけではない。一度泣いたほうがいいのではないかと思ったから泣くことにしたのだ。何が、ということもない。
ひとりで

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好き、のその先

楽屋の廊下は人の往来でごった返し、むっと汗くさい熱気と嬌声に包まれている。人の頭と頭の向こうに、彼の笑顔が見え隠れする。久しぶりに見る顔、会いたかった笑顔。

ひとめで、これまでの何もかもがやすやすとほどかれていく。

異なったジャンルがコラボするダンスイベントで、私の所属するグループは、彼がリーダーを務めるグループと組むことになった。
彼とは、気まずいやりとりがあって以来疎遠になり、そこからはや

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