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【どんな物語にも「テンプレ」がある】すべての物語に通じる「単純構造」とは(2012年10月号特集)


基本の型を押さえよう

 物語には様々なパターンがありますが、話の内容ではなく、設定や展開、構造で分類したものが次ページです。
 本誌4月号の特集「ストーリーメイクの鉄則」のインタビューで柏田道夫先生が挙げてくれたように、ストーリーには、

  • 「サクセスストーリー」

  • 「巻き込まれ型」

  • 「空間限定型」

  • 「相棒もの」

  • 「旅もの」

があります。
また、次ページでは、物語がどんな構造をしているかによって、

  • 「入れ子構造」

  • 「二つの視点」

  • 「群像劇」

の3つに分けてみました。

 次ページの分類では挙げていませんが、これ以前に、人物がいて、出来事が起きて、それが解決して終わりという普通の起承転結、序破急の構成があるます。これは言うなれば「単純構造」。
 すべての物語は「単純構造」の変形で、推理小説では冒頭に「発端の事件」があり、本編が起承転結になっていたりします。また、「起承転結+意外な結末」なら「どんでん返し」になります。

 「入れ子構造」は、サンドイッチにたとえると、本編の部分が具で、序章と終章というパンで本編を挟んだ構成。
 ただし、この序章と終章の時制は、本編とは違っています。たとえば、冒頭で主人公が半生を語り出したところですぐに本編になり、本編では過去に遡り、そこを現在として半生が語られます。そして、最後に冒頭の場面に戻ります。こうすると本編は普通の起承転結でも話が重層的になる利点があります。

 「二つの視点」と「群像劇」は、誰を語り手にしているかという分類。「二つの視点」の場合はそれぞれの人物のストーリーにそれぞれ起承転結がありますが「群像劇」の場合は語り手がどんどん交代していくだけで、ストーリーそのものは単純構造だったりします。

すべては「行きて帰りし物語」

 すべての型にあてはまってしまうので今回は敢えて分類していませんが、すべての物語に共通する構造を言えば、それは「行きて帰りし物語」です。
 「グランドホテル形式」にしろ「ロードムービー」にしろ、主人公がどこかに行き、最終的には帰ってきます。帰ってこなければ話は終われません

 「桃太郎」が鬼ヶ島に行ったきりだったらどうでしょう? 「浦島太郎」が竜宮城に居座ったら? 文字通り、話になりません。
 ただし、この「行く・帰る」は物理的な「行く・帰る」に限りませんから、別の「行く・帰る」があればOKです。

 たとえば、「桃太郎は誰とでも友好的」という前振りがあり、その後、鬼退治に行きます(好戦的になります)が、しかし、鬼と仲良くなって鬼と暮らしましたとさ、というストーリーの場合、「図らずも好戦的になってしまった桃太郎が、最後に本当の自分を取り戻した(本当の自分に帰った)」と考えれば、ストーリーは「行きて帰りし物語」としてちゃんと話が成り立っています

 このように考えると、「出来事が起きて、本当の自分に気づいた」という展開の話は、すべて「行きて帰りし物語」のバリエーションと言えます。
 また、「入れ子構造」の話、たとえば、絵本を読んでいた子がいつのまにか絵本の世界という異次元に迷い込んでしまい、なんだかんだあって元の現実に戻ってくるというのも、ひとつの「行きて帰りし物語」です。

 つまり、話というのは「行ったきり」ではだめということですね。だめと言うか、それでは落ちつかない(オチつかない)ですね。
 考えてみればあたりまえで、日常生活でも「いいこと教えてあげよう。いや、やっぱりやめた」と言われたらすっきりしませんね。

 物語構造もキャッチボールのようなもので、「行ったら、帰ってくる」、「なぜという問いがあったら、こうだという答えがある」のように呼応しています。

 逆に言うと、読後に「なんだか話が終わっていない、すっきりしない」と思ってしまう理由は、最初に打ち上げた問いに最後できちんと答えていないか、答えていても問いと答えのバランスが悪いのが原因でしょう。
 そうしたバランス(話の配分)を見るためには絶対的に要約力が必要で、要約力はある程度は読書量に比例します。

物語の型

サクセスストーリー

最初に「○○になる」という夢や希望があり、困難に打ち勝って大願を成就させるまでを描く。
夢や希望が簡単に叶うとおもしろくならない。ライバルが現れて夢の実現が邪魔されたり、なんらかの事情があって夢にチャレンジすることすらできないような状態に陥ったりする。最初から大きなハンディキャップを負わされている場合も。
「起」で主人公はマイナスの状態になり、「転」でプラスに転じるが、いったん落ちかけて再逆転というのが定番のパターン。「シンデレラ」がその典型。立身出世物語。

巻き込まれ型

主人公そのものは偉人でもスーパーマンでもなく、どちらかといえば普通の人で、ごく普通の平和な暮らしをしているが、ある日、なんらかの事件に巻き込まれ、元の日常を回復するために奮闘しなければならなくなるようなストーリー。
サクセスストーリーの主人公には、物語の出来事に参加する強い意志と動機があるが、巻き込まれ型にはなく、突然の日常の変化から逃げようとする、抜け出ようとするところにおもしろさがある。映画『逃亡者』がその典型だが、世の大半の物語が巻き込まれ型とも言える。

空間限定型

場所を一つに限定し、主人公がそこに入って出てくるまでを描く。映画『グランドホテル』にちなみ、グランドホテル形式とも言う……

他にもたくさんの「型」を紹介!
特集「物語の型(カタ)ログ」
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※本記事は「公募ガイド2012年10月号」の記事を再掲載したものです。