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毎日の食卓を香りで彩る。

今まで色々な食材を調理法と五味のバランスと香りを使って新しい料理を作ってきました。

ウニと人参とコンソメジュレにカカオと柿と薫香を合わせたり

かますに菊芋とベーコンとい草を合わせたり。

日常的ではないけれどどこかで嗅いだことがあり、余韻が長く記憶に残る香りの魔法。それを一皿に落とし込み、今までにはない新しい味わいと価値を表現する。

(牡蠣と春菊とほうれん草、ピーナッツオイル)

いわゆるガストロノミーと言われる料理で培ってきた表現ですが、もっと日常の中にも落とし込めないかなと最近考えています。ちょっとした食材の組み合わせや調味料の変化だけで日常の中の非日常が生まれ、食卓に新しい風が吹きます。特に毎日料理をする人は料理のレパートリーがマンネリ化しやすい、かといって全く新しいメニューを作るのも大変なので、今まで作ってきたメニューに少しの変化をつけるだけで印象を変えられるととてもいいのではないでしょうか?


最近僕がよく作っている料理がブロッコリーとタコの料理。割とどこでもある料理ですが、これにワカメと春菊を加えるだけで雰囲気は全く変わります。これは相性の良いものを組み合わせただけで、特別な調理法も難しいテクニックもいりません。

今回はこの料理について解説をしてみます。ちょっとマニアックな言葉も出てくるかもしれませんが是非読んでくださ。

この料理はブロッコリーとタコをペペロンチーノ(ニンニクと唐辛子)で炒めたものです。イタリアンなんかだとそれにパセリのみじん切りなどをかけたりします。よくある定番の料理です。アヒージョっぽさもありますね。

これだけでも十分美味しいのですが、これをもっと美味しくできないかなと考えたときに思いついたのが春菊とワカメを加え、アサリの出汁で煮る作り方です。サフランと白胡椒も少し加えました。

あさりとブロッコリーのペペロンチーノパスタのイメージですね。

ここにワカメを加えたのはタコとアサリの磯の香りをより引き立ててくれるからなのですが、ワカメ(海藻)にはもっと浮く雑な香り成分が含まれています。

キュベノール(いわゆる海藻らしい香り)が多いのですが、それ以外にもαピネン(森林浴の香り)やリモネン(柑橘っぽさ)やベンズアルデヒド(アーモンドっぽさ)なども含まれています。

ブロッコリーには柑橘が合うと思っていて、グレープフルーツと合わせた料理も作っていました。

ワカメをワカメとしてだけ先入観で捉えていると中々浮かばないですが、ワカメの香りに意識を向けてみると様々な組み合わせと可能性が広がります。タコと柑橘もあさりと柑橘も相性がいいので、そうゆう意味でもワカメは魚介類との相性がかなりいいと言えます。

では春菊はどうか?春菊と言えば鍋!みたいなイメージあると思いますが、春菊はもっと大きな可能性のある食材です!

春菊には、ワカメとかなり近い香り成分があり、αピネン、リモネン、ベンズアルデヒドが含まれている。食材でいうと、ゆずや茴香、せり、大葉、ディル、アーモンドなどに近い香り。これらの食材を組み合わせた料理も作りました。

香り成分だけでも十分に相性がいいことが感じられる。近しい成分があるということは食べた時に馴染みやすい。噛むごとに香りが寄り添って行くイメージで、食べる前の立ち上る香りにも大きな影響を与えている。

ここに加えてサフランが入る。サフランと言えば南仏をイメージさせるスパイスで、ブイヤベースなどにも使われる。サフランにはバニラなどの甘い香りとオレンジと相性のいい柑橘っぽさもある。そしてアーモンドとも相性が抜群で、デザートにも使われたりする。僕が働いていた南仏のお店でもサフランとオレンジとアーモンドの組み合わせのスペシャリテがあった。

ここまでくればもう説明はいらないかもしれないが、ワカメ、春菊、サフランはめちゃくちゃ相性がいい。これは初めから香り成分を知っていたわけではなく、感覚的に合いそうだなと思い、合わせたところ凄く美味しくなったので改めて成分を調べてみたといった感じ。

そしてそれぞれがブロッコリーともタコとも相性の良さがある。今までの定番料理が少しの組み合わせの変化でより美味しくなる。しかもスーパーで手に入る食材でできるので、すぐに挑戦もできる。


作り方としては、ブロッコリーを2%の塩水で3分茹で、フライパンにオリーブオイルとニンニク、唐辛子、アンチョビを入れ香りを出したらタコとブロッコリーとワカメを加えてなじませます。

別鍋に水とアサリを加えて煮立たせ出汁をとり、サフランを加えておきます。アサリは砂が噛んでいることもあるので出汁にだけ使いました(もちろん身も食べれます)

二つを馴染ませて、仕上げに春菊を加えたら完成です。春菊は加熱し過ぎない方が美味しいので最後に入れてください。

と今回はこんな感じですが、ほかにも色々美味しい組み合わせがあるので書きたいと思います。次回はキャロットラペのオレンジマンゴーカシューナッツの組み合わせ!

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曜日や時間、場所に捕らわれずに料理を自由に表現するためにレストランを辞めた料理人の働き方を変えていく奮闘記。 これから増えていくだろう料理…

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